もしものとき、自分のことを誰が守ってくれるんだろう?
結婚していない。子どももいない。
「もし自分に何かあったら、誰が動いてくれるんだろう?」
ふと、こんな不安が頭をよぎったことはないでしょうか。
- 倒れたとき、病院とのやり取りをする人はいるのか
- 認知症になったら、お金や通帳の管理はどうなるのか
- 亡くなったあと、葬儀やお墓、家の片づけは誰がするのか
独身・子どもなしの終活は、「親やきょうだいがいるし、まあなんとかなるでしょ」とあと回しにしていると、
- 手続きやお金のことが誰にもわからない
- 葬儀やお墓の方針が決まらず、残された人が途方に暮れる
そんな状況を招きやすい、ちょっとデリケートなテーマです。
この記事では、
- 結局、誰が相続人になるのか
- 認知症や病気になったとき、誰に何を任せられるようにしておくか
- 亡くなった後の手続き・葬儀・お墓をどう決めておくか
を、「独身・子どもなし」の人にしぼって、できるだけ心に寄り添いながら整理していきます。
なお、自分の終活を全体像からつかんでおきたい方は、あとで
自分の終活|今から備える10の準備【チェックリスト付き】 もあわせて読んでみてください。この記事とつながりが分かりやすくなります。
「独身・子どもなし」の終活でいちばん大事なこと
独身・子どもなしの終活で、いちばん大事なのはとてもシンプルです。
自分が動けなくなった時・亡くなった時に、「誰に」「何を」「どこまで」託すかを決めて、紙にしておくこと。
- 親やきょうだい、甥・姪がいても、みんながすぐに動けるとは限らない
- 親族が少ない、または付き合いが薄いと、「そもそも状況を誰も知らない」まま時間だけが過ぎてしまうこともある
だからこそ、
- 自分が本当に頼りたい相手は誰なのか
- その人に何をお願いしたいのか
を、少しずつ言葉にしていくことが、自分の安心のためにも、周りの人を守るためにも大切になってきます。
なぜ「今」から考えると、むしろ心がラクになるのか
少しだけ、法律の話もまじえながらイメージをそろえておきます。
日本の法律では、誰かが亡くなったとき、自動的に相続人になる人の順番が決まっています。
- 第1順位:子ども・孫など
- 第2順位:父母・祖父母など
- 第3順位:兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥・姪)
独身で、配偶者も子どももいない場合は、
- 親が生きていれば → 親が相続人
- 親が亡くなっていれば → 兄弟姉妹と甥・姪が相続人
という形になります。
ここで、こんなモヤモヤが出てきやすいです。
- 「正直、親とはほとんど連絡を取っていない」
- 「きょうだいとは仲が悪い」
- 「むしろ、友だちやパートナーのほうがずっと支えてくれた」
でも何も書き残していなければ、法律上は血縁のある人だけが相続人になり、友人やパートナー、応援したい団体には1円も残らないのが現実です。
このギャップを埋めるために必要なのが、
- 遺言書(誰に何を残すかを決めておくもの)
- 任意後見や家族信託(判断能力が落ちたとき・亡くなった後の財産管理を任せる仕組み)
といった、「自分の気持ちを正式な形にしておく作業」です。
ちゃんと向き合おうとすると、少し重いテーマに感じるかもしれません。
でも、一度方向性が決まると、
「ここまで決めておいたから、あとは日々をちゃんと楽しんで生きよう」
と、むしろ心がラクになっていく人も少なくありません。
独身・子どもなしの終活7ステップ
ここからは、「実際に何をすればいいか」を、できるだけ負担を小さくしながら進められるように、7つのステップに分けて紹介します。
ステップ1:いまの自分の状況を、そっと棚卸ししてみる

まずは、ノートやメモアプリに「いまの自分」を書き出してみましょう。
完璧じゃなくて大丈夫です。思いつく順で、ざっくりとでOK。
人とのつながり
- 仲の良い親族(親、きょうだい、甥・姪など)
- 信頼している友人やパートナー
- いざという時に相談できそうな人(職場の人、専門家 など)
お金とモノ
- 銀行口座・証券口座(ざっくりの数や残高でOK)
- 加入している保険(生命保険・医療保険など)
- 持っている不動産(自宅、実家の持分など)
- 車、貴金属などの高価なもの
デジタルまわり
- よく使うID・パスワードの保管場所
- 利用しているサブスク(動画配信、音楽、クラウドサービスなど)
- スマホやパソコンのロック解除方法の「メモの置き場所」
「終活って、そもそも何から?」という段階であれば、
全体のとっかかりとして 終活は何から始める?今日からできる最初の3ステップ も、あとでゆっくり読んでみてください。今日からできる“超小さな一歩”だけに絞って紹介しています。
ステップ2:財産・契約の「一覧表」をつくる
ステップ1のメモをもとに、少しずつ「一覧表」にしていきます。
いきなり完璧を目指す必要はありません。書けたところからで大丈夫です。
- 金融機関名・支店名
- 口座の種類(普通預金/定期預金/証券 など)
- 保険会社名と契約の種類
- クレジットカードの枚数と主な用途
- 利用中のサブスク名
- ログイン情報の保管場所(パスワードそのものは別管理でもOK)
この一覧表は、将来、
- 遺言書や家族信託をつくるとき
- 亡くなった後に手続きをしてくれる人が、最初に状況をつかむとき
の、「地図」と「カンニングペーパー」になります。
ステップ3:亡くなった後のことを、少しだけ具体的に思い描いてみる

次は、少し勇気がいるかもしれませんが、「自分が亡くなった後」をイメージしてみます。
1)相続人がどうなるかを確認する
- 親が生きている → 親が相続人
- 親が亡くなっている → 兄弟姉妹と甥・姪が相続人
- 親族がほとんどいない → 相続人も限られ、その分、手続きを担う人も限られる
「そうか、何もしないとこういう人たちが相続人になるんだな」と、
“現状のルール”を一度受け止めるところから始めてみましょう。
2)心の中の「本音リスト」をつくる
ふだんは口に出さない気持ちも、ノートの上なら自由に書いてOKです。
- 親・きょうだい・甥姪に残してあげたいもの
- 友人やパートナーに「ありがとう」と一緒に渡したいもの
- 応援したい団体・NPOに寄付したいお金
「モノやお金」でなくても、
- 写真
- 手紙
- 一言メッセージ
など、いろんな形があっていいと思います。
3)遺言書づくりを視野に入れてみる
法律どおりではなく、自分の気持ちを優先したい場合は、遺言書がとても大きな意味を持ちます。
とくに、
- 相続人同士が揉めてほしくない
- 親族以外の人や団体にも、感謝を込めて何かを渡したい
という気持ちがある人には、公正証書遺言を検討する価値が高いです。
- 公証役場で、公証人と相談しながら内容をつくれる
- 原本は公証役場に保管されるので、紛失しにくい
ステップ4:判断力が落ちたときに備える(任意後見・家族信託)
終活というと「亡くなった後」のイメージが強いですが、
実はとても大事なのが「亡くなる前の、判断力が落ちてきた時期」です。
任意後見制度
- まだ元気なうちに、「将来、自分の代わりに手続きやお金の管理をお願いしたい人」と契約を結んでおく仕組み
- 実際に判断能力が落ちてきたタイミングで、家庭裁判所の手続きを経てスタートする
家族信託
- 自分の財産(預貯金・不動産など)を、信頼できる人に託して管理してもらう仕組み
- 認知症などで判断が難しくなっても、生活費の支払い、不動産の売却・管理などを続けていきやすくなる
「誰に任せたいか」がすぐには思い浮かばない人も多いと思います。
それでも、
- 「任せたい人がいない」という現状を自覚する
- その上で、どういう専門家やサービスに頼るかを考えておく
というだけでも、一歩前に進んでいると言えます。
ステップ5:医療と介護についての希望を書き残す

もし、突然倒れてしまったら。
もし、自分の意思をうまく伝えられなくなったら。
そのときに周りの人が迷わないように、「医療と介護」についての希望も、少しずつ言葉にしておけると安心です。
たとえば、こんなことです。
- 延命治療をどこまで望むか
- 苦しさを減らすことと、命の長さのどちらを優先したいか
- 自宅・施設・病院など、どこで過ごしたいと思っているか
これらは、
- エンディングノート
- 人生会議(ACP)のメモ
などに書いておくことで、将来、自分の代わりに判断してくれる人の心の負担を、ぐっと軽くするメッセージになります。
ステップ6:身元保証サービス・死後事務委任も選択肢に入れてみる
独身・子どもなしで、近くに頼れる家族がいない人にとっては、
- 入院や施設入所のときの「身元保証人」
- 亡くなったあとの手続き・火葬・納骨・遺品整理をしてくれる人
の問題は、かなり現実的で重いテーマです。
最近は、
- 身元保証サービス
- 死後事務委任契約
を提供する法人・団体も増えていますが、その分、サービスや料金が分かりにくく、トラブル事例も出てきているのが正直なところです。
検討するときは、
- 1社だけで決めず、必ず複数の事業者を比較する
- 月額費用だけでなく、「解約条件」「途中でやめたくなったときどうなるか」まで確認する
- 不安を感じたら、消費生活センターなど公的な窓口にも相談する
といった「自分を守るための視点」も、ぜひ持っていてください。
ステップ7:準備した情報を「どこに」「誰に」託すか決める

ここまでくると、ノートやファイルが少しずつ形になっているはずです。
最後の仕上げは、それをちゃんと“誰か”に届く状態にしておくことです。
- エンディングノートや一覧表の保管場所を決める
- 信頼できる友人や親族、専門家などに、
「何かあったら、このノート(ファイル)を見てほしい」とひとこと伝えておく - デジタル情報(スマホ・PC・クラウド)の“入口”が分かるようにしておく
(ロック解除方法の伝え方、パスワード管理ツールの利用など)
全部を見せる必要はありません。
「ここを見れば分かるよ」という入口だけを共有しておくだけでも、将来の自分と周りの人の負担が大きく変わってきます。
おわりに:完璧じゃなくていい。“少し先の自分”を助けるつもりで
ここまで読んでくださって、きっと少しお疲れだと思います。
重たいテーマに向き合ってくれた自分を、まずは労ってあげてくださいね。
独身・子どもなしの終活は、
- 自分のことは自分で決めたい
- でも、何も準備しないまま誰かに丸投げもしたくない
という、ちょっと繊細なバランスの上に成り立っています。
だからこそ、
- いまの自分の状況を棚卸しして
- 財産・契約の一覧表をつくり
- 亡くなった後や医療・介護の希望を少しずつ書き残していく
そんな小さな一歩の積み重ねが、とても大きな安心につながっていきます。
終活は、「人生の終わりの準備」というよりも、
“少し先の自分”と、“自分を大切に思ってくれる人たち”を助けてあげるための優しさ
だと思ってもらえたらうれしいです。
どこから手を付ければいいか迷うときは、このページとあわせて次の2つの記事を読んでみてください。
きっと、「あ、ここから始めればいいんだ」と感じられる“最初の一歩”が見つかるはずです。


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