もしかして今、
- 「病院なんて行かなくていい」
- 「ほっといてくれ」
- 「大げさだなあ、放っておいても治るよ」
そんなふうに言う親に、どうしたらいいのか分からず、胸がざわついていませんか。
体の不調が心配なのに、親が通院や受診を嫌がると、子どもとしては本当に困りますよね。
心配だからこそ強く言ってしまい、ケンカになってしまうこともあると思います。
このページは、
- 親の体調が心配だけど、病院の話を出すと空気が悪くなる
- 何度「病院に行って」と言っても、聞き流されてしまう
- ちゃんと説得できない自分が、だんだん嫌になってきた
そんなあなたに向けて書いています。
ここでお伝えしたいのは、
親を「なんとか説得する」
のではなく、
親と「一緒に決める」
というスタンスで向き合う、ということです。
通院や受診の話は、どうしてもぶつかりやすいテーマですが、
少し視点を変えるだけで、親との会話がやわらぐことがあります。
よかったら、深呼吸をひとつしてから、読み進めてみてくださいね。
結論:親を「説得」するのではなく、「一緒に決める」
通院を嫌がる親に対しては、
- 正論で押し切って「連れていく」
- 怖がらせて「動かす」
よりも、
- 親の「イヤな理由」をていねいに聞き取りながら
- 危なくならないための「最低限のライン」を一緒に決めていく
という「合意づくり」のほうが、結果的にうまくいきやすくなります。
ここで言う「合意」とは、
- 親の気持ちも大事にしながら
- でも、大きなトラブルを防ぐために
- これだけは一緒に守ろうね、というラインを決めること
です。
そのために、まずは「なぜ親は通院を嫌がるのか」を知るところから始めてみましょう。
なぜ親は通院・受診を嫌がるのか

病院は「弱い自分を認める場所」だから怖い
高齢の親にとって、病院は
- 「歳を取った自分」を突きつけられる場所
- 「昔のようには戻れない」と痛感する場所
でもあります。
だから、
- 「病院行きなさい!」
- 「ほら、また数値が悪くなるよ!」
と正論で押されると、心のどこかで「負けた気」がして、余計に身構えてしまいやすいのです。
「めんどくさい」「疲れる」が本音のことも多い
- 朝早くから並ぶ
- 長時間待たされる
- 何度も同じ検査をされる
こうした負担を、「しんどい」「めんどくさい」と感じていても、親はうまく言葉にできないことがあります。
その結果、
「大丈夫、大したことない」
「ほっといてくれ」
といった “ごまかしの言葉” で、なんとか話を終わらせようとしてしまうのです。
子どもとの力関係も影響している
親から見れば、子どもはいつまでも「子ども」です。
- 我が子に命令されるのは、プライドが傷つく
- 「言うことを聞かされている」と感じると、意地でも拒否したくなる
そんな気持ちが働くこともあります。
だからこそ、
「正しいことを言っているはずなのに、なぜか通じない」
という状況が生まれやすいのです。
NG対応:ついやってしまいがちだけど逆効果な言動

ここからは、つい言ってしまいがちだけれど、親の心をかたくしてしまいやすい言動を整理してみます。
いきなり結論から責める
「もういい加減、病院行ってよ!」
「行かないなら、何かあっても知らないからね!」
こうした言葉は、親からすると「責められた」「否定された」と感じやすく、
その瞬間に防衛モードへと切り替わってしまいます。
そのあとの話は、ほとんど耳に入っていない…ということも少なくありません。
「怖がらせて」動かそうとする
「このままだと倒れるよ」
「がんだったらどうするの?」
恐怖で行動できる人もいますが、高齢になってくると、
- 「もう歳だし、どうなってもいい」
- 「今さら言われても…」
と、あきらめモードに入ってしまうこともよくあります。
医療者を“脅し役”として使う
「お医者さんに怒られるよ!」
「先生が、ちゃんと来ないとダメって言ってたよ!」
親からすると、
「子ども + 医者」 VS 「自分」
という構図になり、「自分の味方が誰もいない」と感じてしまいます。
医療者は、「怒る人」ではなく、「一緒に考えてくれる第三者」として関わってもらえると理想的です。
「説得」ではなく「合意」を目指す5ステップ

ここからは、「親と一緒に決める」ための具体的なステップを見ていきます。
ステップ1:まずは“理由”を聞き切る
いきなり「行こう」ではなく、先に「なぜ行きたくないのか」を聞きます。
「病院、あんまり行きたくなさそうだけど、
何が一番イヤ?」
と、こちらから選択肢を出さずに問いかけてみましょう。
よく出てくる理由の例:
- 待ち時間が長くて疲れる
- 痛い検査がイヤ
- 医者が怖い・相性が悪い
- お金が心配
- 「歳だから仕方ない」と思っている
この段階では、反論はグッと飲み込んで、とにかく聞くことに集中します。
ステップ2:気持ちを「言葉で」受け止める
理由を聞いたあとは、すぐに「でもね」と言いたくなりますが、いったんストップします。
- 「長く待たされるの、本当にしんどいよね」
- 「あの先生、ちょっと怖いよね。私もそう思った」
- 「お金のこと、心配だよね。私も一緒に考えるよ」
など、相手の言葉をそのまま繰り返しながら、短く一言添えてみてください。
「分かってもらえた」と感じてもらうことが、次のステップの土台になります。
ステップ3:リスクと「もしも」を静かに共有する
気持ちを受け止めたうえで、「行かない場合のリスク」を淡々と伝えます。
「病院イヤなの、分かるよ。
ただ、このまま様子見してて、もし倒れたときに
救急車で運ばれて、知らない病院でバタバタするのは、私は心配なんだ」
ここで大事なのは、
- 親を「責める言い方」ではなく
- 自分の「心配」を正直に伝えること
です。
ステップ4:こちらの「希望ライン」を伝える
ここで初めて、自分の希望を具体的に伝えます。
「私としては、せめて○ヶ月に1回だけでも診てもらえたら安心なんだけど、どうかな?」
「全部しっかり検査してほしい、とは言わないから、
今日は“血圧と薬の確認だけ”でも診てもらえないかな?」
100点満点の通院を求めるのではなく、最低限のラインを一緒に探るイメージです。
ステップ5:親に「選択できる余地」を残す
親にとって、「自分で決められている感覚」はとても大切です。
- 病院を2つ提案して、どちらに行くかを選んでもらう
- 日にちを2〜3案出して選んでもらう
- 「今日は話だけ聞きに行く日」にして、ハードルを下げる
など、「決める権利」を親に残す工夫をしてみましょう。
「AとBの病院があるんだけど、お母さんはどっちが良さそう?」
「今週だと木曜と土曜なら一緒に行けるけど、どっちがマシ?」
といった聞き方も使えます。
状況別・声かけの具体例
ここからは、よくある状況ごとの「声かけの例」を紹介します。
「自分の家族なら、どのケースが近いかな」と想像しながら読んでみてくださいね。
ケース1:慢性病の定期受診をサボりがちな親
「この前、薬が切れそうになってたよね。
病院イヤなのは分かるんだけど、
お父さんが倒れちゃうと、私も仕事休んでバタバタになっちゃうから、
せめて“薬をもらうだけの日”ってことで、一緒に行かない?」
- 「倒れたら困るから」だけでなく、
- 「あなたを大事に思っている」という気持ちもセットで伝える
のがポイントです。
ケース2:明らかに様子がおかしいのに「大丈夫」と言い張る親
「この頃、前よりしんどそうに見えるから、私は心配なんだ。
本当に大丈夫ならそれでいいんだけど、
一回だけ先生に“今の状態を確かめてもらう日”をつくれたら、
お互い少し安心できないかな?」
「病名をつけてもらう」のではなく、
「安心のために確かめる」という言い方にすると、ハードルが下がります。
ケース3:認知症が疑われるが、受診を強く拒否する
認知症の受診は、とくに抵抗が強くなりがちです。
この場合は、
- まずはかかりつけ医に相談し
- そこから専門医につないでもらう
というルートの方が、受け入れられやすいことが多いです。
「最近、ちょっと物忘れが増えた気がして、私は心配してる。
でも、〇〇さん(いつもの先生)が
『歳を取るとこういうこともある』って言ってくれるだけでも、
少し安心できると思うんだ。
いつもの先生に、“最近の様子”を一回見てもらえないかな?」
介護保険や相談先の全体像については、
初めての介護保険・要介護認定の取り方入門
で整理していますので、あわせて参考にしてみてください。
ケース4:一人暮らしで、生活も心配な親
- 食事が偏っている
- 転倒しそうな様子がある
- 服薬管理も怪しい
といった場合、病院だけにこだわらず、地域の支援につなぐことも大切です。
「お母さんのこと、私一人だといろいろ心配で…。
近くに“相談できるところ”があるみたいだから、一緒に話だけ聞きに行かない?」
ここでいう「相談できるところ」が、地域包括支援センターやケアマネジャーです。
遠距離でなかなか帰れないときは、
遠距離介護の始め方|月1回しか帰れなくても「できること」と「やらなくていいこと」
も一緒に読んでおくと、少し見通しが持ちやすくなります。
それでも動いてくれないときの考え方と相談先

どれだけていねいに向き合っても、すぐには動いてくれないことも多いです。
そのときに一番危ないのは、
「私がちゃんと説得できないからだ」
と、自分を責めすぎてしまうことです。
「できること」と「できないこと」を分ける
- 親の人生の最後まで、すべてをコントロールすることはできない
- 子どもにできるのは、「情報を伝え」「選択肢を示し」「一緒に考える」ところまで
という線引きをしておくと、少し肩の力が抜けます。
第三者をうまく使う
- かかりつけ医
- 看護師さん
- ケアマネジャー
- 地域包括支援センター
といった第三者からの一言は、家族よりもスッと届くことがあります。
「私が言っても聞いてくれないので、
こういうことを先生からも一言伝えてもらえませんか?」
と、「伝えてほしいポイント」を具体的にお願いしてみましょう。
こちらが潰れてしまわないようにする
親の受診問題は、どうしても長期戦になりがちです。
- すべてを完璧にしようとしない
- 無理なときは「今日はこれ以上は話さない」と一旦引く
- 自分の休息・仕事・趣味を守る
など、「自分を守るライン」を決めておくことも、とても大切です。
介護そのものがしんどくなってきたと感じたら、
介護で心が折れそうなあなたへ|“介護うつ”になる前にできる7つのこと
も、あとで落ち着いたときにそっと開いてみてください。
まとめ:小さな“合意”を積み重ねていけばいい
最後に、この記事のポイントをあらためてまとめます。
- 親の通院・受診拒否は、「説得すればなんとかなる」テーマではない
- 親の気持ち・怖さ・しんどさを聞き取り、「安全ライン」を一緒に探すことが大事
- 100点満点ではなく、「これだけは守ろう」という最低限のラインで合意を目指す
- うまくいかないときは、医療者や地域の支援、第三者の力も遠慮なく借りる
- それでも動いてくれないとき、「自分がダメだから」と責めすぎない
親の体を守ることと、
自分の心と生活を守ること。
どちらも大切にしながら、
「説得」ではなく「合意づくり」を意識して、
できる一歩から始めていければ大丈夫です。


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