きょうだいで介護とお金を話し合うときの進め方|ケンカを減らす3ステップ

介護・医療

親の介護やお金の話を、きょうだいで本気で話し合おうとすると……
ほぼ確実に「モヤモヤ」「イラッ」が顔を出します。

  • 「なんで私ばっかり実家に行ってるの?」
  • 「遠方だからって全部お金で済ませる気?」
  • 「親はあんたばっかり頼ってるじゃない」

感情が先に立ってしまうと、
本題の「これからどうするか」はなかなか進みません。

でも、きょうだい同士の関係がこじれてしまうと、
一番しんどい思いをするのは親本人でもあります。

この記事では、きょうだいで介護とお金を話し合うときに、ケンカを減らす3ステップを、
具体的な進め方・例文つきでまとめました。

結論:きょうだい会議は「情報共有 → 案出し → 決め方を決める」の3ステップ

最初に結論からお伝えすると、
きょうだいで話し合うときは、次の3ステップで進めるのがおすすめです。

  1. ステップ1:まずは「情報共有」だけをゴールにする
    親の状態・お金・今の負担状況を、事実ベースでそろえる
  2. ステップ2:「時間」「お金」「その他スキル」で役割分担を考える
    “全部同じ負担”ではなく、「得意・できること」を持ち寄る
  3. ステップ3:合意の“ルール”を先に決める
    どうやって決めるか(多数決・話し合い)、いつ見直すか、感情的になったときどうするか

「何をするか」より前に、
どうやって話し合うか・決めていくかを整えておくことで、
ケンカをぐっと減らすことができます。

なぜきょうだいは揉めやすいのか?よくある3パターン

まず、「なぜこんなにモメやすいのか」を整理しておきましょう。
多くの場合、次の3つが絡み合っています。

1. 物理的な負担の差

  • 実家から近い人:
    「呼ばれたらすぐ行ける」という安心感を与える一方、通院付き添い・買い物・掃除など“細かい雑用”が集中しがち。
  • 遠方の人:
    日常的なお手伝いは難しいが、一時帰省するときにまとまった時間を取ることが多い。

→ 近い人は「いつも私だけ」と感じやすく、
  遠い人は「やりたくてもできない」と後ろめたさを抱えがちです。

2. お金の感じ方の違い

  • 「お金で解決してもいい」と考える人
  • 「お金よりも“手間と時間”がきつい」と感じる人

価値観の違いから、

「お金だけ出して、楽してると思われたくない」
「時間は出せないけど、お金なら出せるのに、それも受け取ってもらえない」

と、すれ違ってしまうこともあります。

3. 親との距離・思い出の差

  • 一緒に暮らした期間
  • 親との関係性(仲が良かった・反発していた)
  • 実家に残っている思い出やモノへの執着

こうした“感情の背景”が違うので、
同じ出来事でも受け取り方が変わってきます。

ここで大事なのは、
「誰かがワガママだから揉める」のではなく、
“立場と背景が違うからズレやすい”という前提を共有することです。

この前提を押さえたうえで、
次のステップに進みます。

ステップ1:まずは「情報共有」だけをゴールにする

最初の話し合いでいきなり

  • 「じゃあ誰がどれくらい通う? お金は誰がいくら?」

まで決めてしまおうとすると、
高い確率で空気がピリつきます。

1回目のきょうだい会議のゴールは、「情報をそろえるだけ」にするのがおすすめです。

1-1. 共有したい情報はこの4つ

事前に、誰か一人がざっくりまとめておくとスムーズです。

  1. 親の今の状態
    病名や診断があるか、日常生活で困っていること(移動・トイレ・食事・認知の状態など)。
    親の物忘れや変化が気になり始めた段階での具体的な対処は、
    親が認知症かも?と思ったら|今日からできる3つの対処法
    にまとめているので、あわせて読んでおくと安心です。
  2. お金の全体像
    親自身の年金・預貯金・保険、今かかっている費用(家賃・医療費・介護サービスなど)。
    「どこに、どんなお金があるか」を整理したいときは、
    親が元気なうちにしておくべきお金と手続きのこと
    をきょうだいで共有しておくと、「知らなかった」が減らせます。
  3. 今、誰が何をどのくらいしているか
    通院付き添いの頻度、買い物・掃除・見守りの回数、電話・オンラインでの様子見など。
  4. 親本人の希望(わかる範囲で)
    できるだけ自宅にいたいのか、施設も視野に入れているのか、誰に一番頼りたいと思っていそうか。

完璧でなくて大丈夫です。
「現時点でわかること」をテーブルに出すことが第一歩です。

1-2. 連絡の切り出し方・招集の声かけ例

対面でもオンラインでも良いので、
まずは「きょうだい会議」を提案します。

「そろそろ、親のこれからのことを
一回ちゃんと情報をそろえて話し合わない?
この場では“決める”というより、
まずは今の状況を共有するだけにしようと思ってる」

と最初から「情報共有だけ」と伝えておくと、
相手も構えすぎずに参加しやすくなります。

LINE・メールの例文

「最近、◯◯(親)の物忘れや体力が少し心配になってきたので、
一度きょうだいで状況を共有する時間を取りたいです。
この場では、いきなり“誰が何をするか”まで決めなくてOKで、
まずは
・親の今の状態
・お金の全体像
・今それぞれがどんなサポートをしているか
を共有する会にできればと思っています。
オンライン(Zoom / LINE通話など)でもいいので、
来週〜再来週で30〜60分くらい、時間を相談させてください。」

ステップ2:「時間」「お金」「その他スキル」で役割分担を考える

情報がそろってきたら、
次に「誰が何をどれくらい担えそうか」を話し合います。

このとき大事なのは、
“全部同じ負担”を目指さないことです。

2-1. 「時間」「お金」「その他スキル」で分けてみる

役割はざっくり次の3つに分けられます。

  1. 時間担当(手足を動かす役)
    • 通院付き添い
    • 買い物・掃除
    • お薬カレンダーの管理
  2. お金担当(費用を多めに負担する役)
    • 介護保険サービスの自己負担分の一部サポート
    • 訪問介護・デイサービスなどの利用料
    • 帰省交通費の一部補助 など
  3. その他スキル担当
    • 役所や銀行、保険会社などの手続き
    • 情報収集(介護サービス・施設・制度について調べる)
    • 親やきょうだいの“話を聞く役”

介護保険や要介護認定の流れそのものは、
初めての介護保険・要介護認定の取り方入門
で「相談 → 申請 → 認定調査 → ケアプラン」のステップを整理しています。
誰がどの部分を担当するかを決めるときの材料にしてみてください。

「近くに住んでいて時間を出しやすい人」
「遠方だけど収入に余裕がある人」
「手続きが得意な人」

それぞれの事情や得意を活かして、
“形の違う負担”を組み合わせるイメージです。

2-2. 役割分担のイメージ表

たとえば、3人きょうだいの場合の一例です。

役割長女(実家の近く・パート勤務)長男(遠方・フルタイム勤務)次女(同県内・子ども小さい)
時間担当通院付き添い・買い物・見守り帰省時にまとめて大掃除休日に月1回訪問・買い物サポート
お金担当少額(交通費程度)介護サービス利用料の一部を多めに負担可能な範囲で積立
その他スキル担当ケアマネとの連絡窓口手続き・書類の作成、情報収集家族LINEグループの管理・記録係

これが正解というわけではなく、
「時間組」「お金組」「手続き・調整組」に分けて考えるといいよ
というイメージの例です。

2-3. 「できないこと」より「できること」から出してもらう

話し合いの場では、

  • 「私は週◯回なら実家に行ける」
  • 「私は平日は無理だけど、お金なら毎月◯円までなら出せる」
  • 「私は書類や調べものなら任せてほしい」

と、“できること”を先に言ってもらうのがポイントです。

NGになりがちな言い方は、たとえばこんな感じです。

  • NG:「あなただってもっとできるでしょ?」
  • NG:「普通は長男がやるものじゃないの?」

代わりに、こんな風に置き換えてみてください。

  • OK:「私はこういう形なら負担できそうなんだけど、どうかな?」
  • OK:「できないこともあると思うから、“できることベース”で分けられないかな?」

ステップ3:合意の「ルール」を先に決める

話し合いが進んでくると、
「じゃあ、とりあえずこう分担しようか」という案が出てきます。

ここで忘れがちなのが、
“決め方のルール”と“見直しのタイミング”です。

3-1. 「どう決めるか」を最初にすり合わせる

  • 原則は全員の合意を目指すのか
  • どうしても意見が割れたら「多数決」にするのか
  • 親の意思を最優先するのか

など、「決定の基準」を先に言葉にしておくと、
あとから「勝手に決められた」と感じにくくなります。

ルール決めの例

「できれば全員が“まあいいか”と思える案を目指したいけれど、
どうしてもまとまらないときは、
親の意思を最優先して、それをサポートする形で決めよう」

「今の案は“3ヶ月限定”で試してみて、
そのあとまた見直すようにしない?」

こうした合意があると、
完璧な案でなくても動き出しやすくなります。

3-2. 「見直し時期」を決めておく

親の状態は、時間とともに変わっていきます。
一度決めた役割分担を、ずっと続けなければいけないわけではありません。

  • 「まず3ヶ月やってみて、改めてきょうだい会議をする」
  • 「親の状態が変わったら、その時点でもう一度話す」

といった“見直し前提”にしておくと、

  • 今は無理のない範囲で引き受けやすい
  • 「一生これを続けろと言われている」と感じにくい

というメリットがあります。

3-3. 感情が高ぶったときの「クールダウンルール」

どんなに準備をしても、
話しているうちにイライラしてしまうことはあります。

そんなときのために、

  • 「空気が悪くなったら、一旦10分休憩する」
  • 「“この話は一度ここまでにしよう”と言われたら、そこで中断する」
  • 「批判ではなく、“私は〜と感じた”で話す」

など、“喧嘩になりそうなときのセーフワード”を決めておくと安心です。

話し合いの場をつくるコツ(オンライン活用もOK)

4-1. 集まり方は柔軟でOK

  • 全員で実家に集まる
  • 実家+オンライン参加を組み合わせる
  • すべてオンライン(ビデオ通話・音声通話)のみで行う

など、集まりやすい形を選んで大丈夫です。

大事なのは「全員が同じ情報を聞ける機会があること」です。

4-2. 司会役・メモ係を決める

  • 話を整理してくれる司会役
  • 決まったこと・宿題をメモする記録係

を決めておくと、話し合いがダラダラしにくくなります。

記録は、あとで

  • 家族LINEグループ
  • 共通のノートアプリ
  • メール

などで共有しておきましょう。

4-3. 事前に「議題」を送っておく

当日いきなり本題に入るよりも、
あらかじめ「今回話したいこと」を共有しておくと、
それぞれ心の準備ができます。

例:

【今回のきょうだい会議の議題】
・親の今の状態の共有
・今かかっているお金の全体像の共有
・今後3ヶ月間の、おおまかな役割分担のたたき台づくり
・次回の話し合いのタイミング決め

うまくいかないときの「次の一手」

頑張って話し合っても、
すぐにはうまくいかないこともあります。

そんなときは、「家族だけでなんとかしなきゃ」と抱え込まずに、
第三者の力を借りることを検討してみてください。

5-1. 親の意向を一緒に聞く時間をつくる

きょうだいだけで話していると、
「親が本当はどうしたいか」が置き去りになってしまうことがあります。

可能であれば、

  • 親にも参加してもらう場
  • あるいは、後日あらためて親から聞き取る時間

をつくり、

「お父さん/お母さんは、これからどんな暮らし方をしたい?」

と、少しずつ本音を聞いていきます。

親本人に「これからのこと」や終活の話を切り出すときは、
親に終活の話を切り出すタイミングと伝え方のコツ
のフレーズ例も参考になります。

5-2. ケアマネージャーや専門職に同席してもらう

すでに介護保険のサービスを利用している場合は、
担当のケアマネージャーさんに

「きょうだいで介護の分担を話し合いたいので、
相談にも入ってもらえませんか?」

とお願いするのも一つの方法です。

第三者が入ることで、

  • 専門的な視点でのアドバイス
  • 感情的になりそうなときのクッション役

になってもらえます。

5-3. 「不公平感ゼロ」は目指さない

最後に、とても大切なことです。

きょうだいの状況や収入や性格が違う以上、
完全に公平な分担を実現することは、ほとんど不可能です。

目指したいのは、

「100%納得ではないけれど、
7割くらいは『まあ、しょうがないか』と思える状態」

くらいかもしれません。

そのためにも、

  • できること・できないことを正直に話す
  • お互いの事情を“事実として”理解する
  • 定期的に見直す前提で決める

という3つを大事にしてみてください。

まとめ:完璧な公平より、「納得度7割」を目指して

改めて、この記事のポイントを整理します。

  • きょうだいで介護・お金の話をするときは、
    「情報共有 → 役割の案出し → 決め方のルール作り」の3ステップで進める
  • 役割は「時間」「お金」「その他スキル」に分けて、
    “同じ負担”ではなく“それぞれのできる形”を組み合わせる
  • 一度決めた分担も、
    3ヶ月などの区切りで、親の状態やきょうだいの状況に合わせて見直してOK
  • ケンカになりそうなときは、
    クールダウンルールや、第三者(ケアマネなど)をうまく使う

親を支えることは、
同時に「きょうだいそれぞれの人生とも向き合うこと」でもあります。

完璧な答えを見つけようとしすぎず、
「今のベスト」を、すこしずつ更新していけますように。

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