親の介護が始まると、ほとんどのご家庭で出てくるのが、
「なんか私だけ損してない?」
「あのきょうだい、何もしてくれないんだけど…」
という “不公平感” です。
結論からお伝えすると、
きょうだいでの介護をうまく回していくために大事なのは、
「なんとなく」ではなく、「ルールを決めて見える化すること」
です。
この記事では、きょうだいで介護を分担するときに役立つ
5つのルール と、話し合いの具体的なコツ、
LINEで使える文例も交えながらお伝えします。
結論:きょうだい全員で「ルール」と「役割」を共有すれば、不満はグッと減る
まず押さえておきたいのは、
完全な“平等”は難しくても、「それぞれが納得できる分担」は作れる
ということです。
- 収入・仕事・家族構成・住んでいる場所
- 親との関係性(仲が良い/微妙/疎遠など)
- 自分の体力や持病 など
きょうだいといっても、置かれている状況はそれぞれ違います。
だからこそ、
- 「誰がどんな形で関わるのか」
- 「何をすれば“やっている”と言えるのか」
を 言葉にして共有しておくこと がとても大切です。
そのための具体的なルールが、次の5つです。
ルール1:いきなり責めず、「現状共有」から始める

いちばん最初にやっておきたいのは、
「今、何が起きているのか」をきょうだい全員で共有すること です。
よくあるNGパターン
- 実家の近くにいるきょうだいだけが、病院付き添い・役所手続き・買い物など全部を担当している
- 遠方のきょうだいは、たまに電話で「そんなに大変なの?」と他人事になりがち
- イライラが限界まで溜まったタイミングで
「なんであなたいつも何もしてくれないの!」と爆発してしまう
これでは、
「やっている側」も「やれていない側」も、つらくなってしまいます。
最初にやること
- きょうだい全員のグループLINEを作る
- 親の状態・医師の説明・介護保険の状況などを、
まずは事実ベースで共有する
送信文のイメージ
「今の状況を一回ちゃんと共有したくて、グループ作りました。
最近のお母さんの様子と、病院・ケアマネさんから聞いた話をまとめるね。」
「お母さんの今の状況
・要介護2(歩けるけど転倒が心配)
・最近、夜のトイレでふらつきが増えている
・ケアマネさんからは、週3回デイサービス+ヘルパーさん週2回を提案されています。」
感情をぶつけるのではなく、
「事実を共有するところから始める」
というのが、最初のルールです。
ルール2:「お金」「時間」「スキル」の3つで分担を考える
介護の関わり方は、人によって向き・不向きがあります。
- 実際に体を動かして支える人(通院付き添い、買い物、掃除など)
- お金を多めに出せる人
- 手続きや情報整理が得意な人
など、いろいろな形で支えることができます。
3つの軸で考えてみる

- 時間で支える役割
- 通院付き添い
- デイサービスの送り迎え
- 見守り・日々の様子をチェックしに行く など
- お金で支える役割
- 交通費・タクシー代
- 細々した日用品・差し入れ
- 介護保険外のサービス費用 など
- スキルで支える役割
- 役所手続き
- 介護保険や制度の情報収集
- 書類管理・家計の見える化 など
分担の決め方のイメージ
- 実家の近くに住んでいるAさん
→ 「時間」を多めに担当(通院付き添い・見守りなど) - 遠方で年収が比較的高いBさん
→ 「お金」を多めに担当(毎月◯円を介護用の口座に入れる) - ITや書類管理が得意なCさん
→ 「スキル」を担当(家計&予定表の管理、制度調べ)
話し合いの言い方例
「それぞれ事情も違うから、
『時間』を多めに出せる人と、
『お金』を多めに出せる人と、
『手続き』を担当する人で分けるのはどうかな?」
「同じことを同じ量やる」より、
「得意な形で支え合う」ほうが、長く続けやすくなります。
ルール3:「できること」と「できないこと」を、はっきり言葉にする
介護の話になると、つい
- 「忙しいから無理」
- 「何とかするよ」
と、曖昧な言い方になりがちです。
でも、不公平感を減らすためには、
「自分は何がどこまでできるのか」を、はっきり言葉にすること
がとても重要です。
言いにくくても、最初に「線」を引いておく
- 「小学生の子どもがいるので、泊まりの付き添いは難しい」
- 「仕事がシフト制なので、平日◯曜の夜なら動ける」
- 「お金はあまり出せないけれど、手続き系は全部引き受ける」
など、具体的であるほど、あとから揉めにくくなります。
自分の事情を伝える文例
「正直なところ、仕事がかなりきつくて、
日中の付き添いは月◯回くらいが限界です。
その代わり、◯◯(役所手続き/お金の管理)は全部引き受けます。」
「うちは家計に余裕がなくて、毎月◯万円以上は出せません。
その代わり、帰省したときは集中的に掃除や片付けをやるね。」
「できないこと」を伝えるのはワガママではなく、
“現実的なラインを共有すること” だと考えてみてください。
ルール4:感謝と小まめな報告をセットにして続ける

介護が長期戦になってくると、
- 「あの人は何もしていない」
- 「やって当たり前なのに感謝もされない」
というモヤモヤが溜まりやすくなります。
そこで意識しておきたいのが、
「感謝」と「報告」をセットにすること です。
具体的にやってみたいこと
- 誰かが動いてくれたら、必ず一言感謝を伝える
- 自分がやったことも、簡単でいいので共有しておく
LINEでの一言例
「今日は通院付き添いありがとう。
一人だと本当に大変だから、来てくれて助かった。」
「今日、ケアマネさんと面談してきました。
デイサービスの回数を週2→週3に増やす方向で話しています。
また内容まとめて共有するね。」
こうした 小さな「ありがとう」と報告の積み重ね が、
「自分だけが頑張っている」という感覚を
少しずつ軽くしてくれます。
ルール5:モメそうなテーマは「第三者」を間に入れる
きょうだいだけで話していると、どうしても
- 昔からの上下関係(長男・長女問題)
- 親からの扱いの差
- 子どもの頃からのわだかまり
といった 感情の地雷 を踏みやすくなります。
特に、
- お金(誰がどれだけ出すのか)
- 実家・家・相続
- 施設に入るかどうか
などは、感情と利害の両方が絡むテーマ です。
そんなときは、あえて「専門家」や「公的機関」を挟む
たとえば…
- 地域包括支援センター
- 介護サービスの調整
- 家族全員での話し合いに同席してもらえる場合も
- ケアマネジャー
- 介護の方針を第三者の視点で整理してくれる
- 社会福祉協議会・民生委員
- お金や制度の相談先として頼れる
- 弁護士・司法書士・FPなど
- 相続や実家、お金の話を整理するときの味方
言い出し方の例
「このまま家族だけで話していると、どうしても感情的になっちゃうから、
一回、地域包括支援センターの人に入ってもらわない?」
「お金の話は、専門家に入ってもらって“一般的なライン”を聞いたうえで決めない?」
実家や相続が話題に上がってきたときは、
きょうだい同士の話し合いをスムーズにするための準備として
もあわせて読んでおくと、全体像がつかみやすくなります。
第三者を入れるのは、「誰かを責めるため」ではなく、
「誰も責めなくていいようにするため」
と考えてみると、少し話を切り出しやすくなるかもしれません。
よくある失敗パターンと、その回避方法
パターン1:長男・長女が「背負い込みすぎる」
- 「長男だから」「一番近くにいるから」と、何もかも抱え込む
- その結果、体も心もすり減って限界まで頑張ってしまう
→ 早い段階で、「できないこと」はNOと言っておくことが大切 です。
「自分の生活を完全に犠牲にしない」というラインを、あらかじめ決めておきましょう。
パターン2:遠方組が「口だけ参加」になってしまう
- 実際の介護にはほとんど関われていないのに、
「それ無駄じゃない?」「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」と口だけ出してしまう
→ 「意見を言うなら、何か一つ役割を引き受ける」をルールにする と、
近くで動いている人のモヤモヤが少し軽くなります。
パターン3:「親の前で」揉めてしまう
- 親の前で
「あんたは全然帰ってこない」
「そっちこそ親にお金使わせすぎ」
とやり合ってしまう
→ 親に強い罪悪感を与えてしまい、本人の心が折れてしまうこともあります。
介護の相談やきょうだいの不満は、
「親のいないところで、落ち着いて話す」
と決めておくだけでも、だいぶ雰囲気が変わります。
それでも「不公平だ」と感じてしまうときの心の守り方

どれだけルールを決めても、
「やっぱり自分だけしんどい…」 と感じる瞬間は、どうしても出てきます。
そんなときは、
- 「全部を完璧にやろうとしていないか?」
- 「本当は、どこまでなら自分はやってもいいと思っているか?」
を、改めて自分に問い直してみてください。
自分の“限界ライン”を、自分で決めていい
- 月に◯回以上の通院付き添いはしない
- 仕事を辞めてまで介護はしない
- 親の借金までは背負わない など
「ここまでならやる」「ここから先は難しい」 という
“自分なりのルール”を持つこと は、わがままではありません。
通帳管理や立て替え精算、成年後見など、
「親のお金」をどう扱うかが心配なときは、
も参考になると思います。
きょうだい間の不信感を減らすヒントを得やすくなります。
まとめ:完璧な「平等」を目指さなくていい。大事なのは「納得できる分担」
最後に、この記事のポイントをもう一度まとめます。
- きょうだい介護でいちばんの敵は、「不公平感」
- 完全な平等ではなく、「それぞれが納得できる分担」を目指す のが現実的
- そのための 5つのルール は…
- いきなり責めず、「現状共有」から始める
- 「お金」「時間」「スキル」の3つで分担を考える
- 「できること/できないこと」をはっきり言葉にする
- 感謝と小まめな報告をセットにして続ける
- モメそうなテーマは、早めに第三者を間に入れる
きょうだいそれぞれの事情は違って当たり前です。
その中で、
「自分の生活と心を守りながら、できる範囲で力を合わせる」
という、“ちょうどいい距離感” を一緒に探していけると、
親にとっても、きょうだいにとっても、
少し息がしやすい介護の形になっていくはずです。


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