遠距離介護の始め方|月1回しか帰れなくても「できること」と「やらなくていいこと」

介護・医療

「親が心配だけど、実家は遠い」「月1回帰るのが限界」
そんな状況で、ニュースやSNSで“介護の大変さ”を見るたびに、胸がざわざわしていませんか。

遠距離介護は、同居や近距離の介護とはちがう難しさがあります。
でも、

  • 親の「今」を見える化する
  • 親の地域に「現地の味方」をつくる
  • 自分の「できる/できない」に線を引く

この3つさえ意識できれば、月1回しか帰れなくても、ちゃんとやっていけます。

なぜ遠距離介護はこんなに不安になるのか

遠距離介護の不安には、いくつか共通点があります。

  • 何かあっても、すぐに駆けつけられない
  • 親の本当の体調や生活ぶりが、目で見えない
  • 交通費・時間・仕事の調整など、自分の生活への負担が大きい
  • 「もっとできたはず」と、自分を責めやすい

一方で、今は

  • 地域包括支援センターやケアマネジャーなどの公的な相談窓口
  • 見守り機器・オンライン面談などのサービス

が充実してきていて、「離れていても支えられる仕組み」を作りやすくなっています。

「全部自分でやる遠距離介護」ではなく、
「現地の味方と一緒にやる遠距離介護」を目指す。

この記事では、そのための具体的なステップをまとめます。

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遠距離介護の全体像|3つのステップ

遠距離介護を始めるときは、次の3ステップで考えると整理しやすくなります。

  1. 親の暮らし・お金・健康の「現状」を見える化する
  2. 親の地域に“現地の味方”をつくる
  3. 自分ができること・できないことの線を決める

それぞれ、具体的に見ていきます。

ステップ1:親の「今」を見える化する

1-1. まずは生活の全体像をざっくり確認する

いきなり「介護が心配だから、あれこれ教えて」と言うと、親は構えてしまいます。
最初は、いつもの電話や帰省の中で、少しずつ様子を聞いていきましょう。

チェックしたいのは、ざっくりこの3つです。

暮らしのこと

  • 食事:自炊か、総菜・コンビニが増えているか
  • 掃除・洗濯:部屋の散らかり具合、洗濯物の溜まり具合
  • 買い物:車・自転車・徒歩など、移動手段や頻度

お金のこと

  • 収入:年金・パート・その他
  • 貯金:ざっくりどのくらいか(数字でなくても「余裕あり/ギリギリ」程度)
  • 毎月かかるお金:家賃・固定資産税・光熱費・通信費など

健康のこと

  • 持病・通院先・飲んでいる薬
  • 最近の入院歴・転倒・物忘れの増え方
  • 運転免許・車の利用状況

すべてを一度に聞く必要はありません。
1回の電話や帰省で1〜2項目ずつ、数週間かけて情報を集めるイメージで大丈夫です。

1-2. 自分用の「遠距離介護メモ」を1枚つくる

集めた情報は、そのまま頭の中に置いておくと、いざという時に混乱しがちです。
おすすめは、自分用にA4一枚の「親情報メモ」を作ることです。

書いておくと安心なのは、例えばこんな項目です。

  • 親の基本情報(氏名・生年月日・住所・電話)
  • 主治医・かかりつけ病院・よく利用する薬局
  • 近所で頼れそうな人(親戚・ご近所・友人)
  • 利用しているサービス(デイサービス・訪問看護など)
  • 年金・保険・口座のざっくり情報(銀行名や保険会社名くらいでOK)

この1枚があるだけで、入院や急な連絡が来たときに動けるスピードがまったく変わります。

1-3. お金の整理は「元気なうち」の会話から

遠距離介護では、交通費や仕送りなど、子ども側の負担も増えやすくなります。
その前に、親が元気なうちから「お金と手続き」の全体像をざっくり共有しておくと、あとがラクです。

  • 年金がいくらくらいあるのか
  • どこの銀行・証券会社と取引があるのか
  • 公共料金やサブスクの支払い方法(口座振替/カードなど)

こういった話を切り出すときは、
「心配だから」ではなく、

「いざというときに、○○(親)が困らないように、
ちょっとだけ状況を教えてほしいんだ」

というスタンスで話すと、受け入れてもらいやすくなります。

ステップ2:親の地域に「現地の味方」をつくる

遠距離介護でいちばん大事なのは、自分以外の「現地の味方」を増やすことです。

2-1. 地域包括支援センターに一度相談しておく

親が住んでいる市区町村には、地域包括支援センターがあります。
65歳以上の高齢者と家族のための、総合相談窓口です。

  • 親の健康や生活の心配ごと
  • 介護保険の相談
  • 地域の見守りサービスの紹介
  • 認知症や虐待などの相談

などを、無料で相談できます。

電話で相談するときに伝えたいこと

  • 自分の名前と続柄(例:長男、東京在住)
  • 親の年齢・大まかな健康状態
  • 親の生活状況(ひとり暮らし/夫婦暮らし、持病の有無)
  • 「自分は遠方で、頻繁には帰れない」こと
  • 今いちばん心配していること(物忘れ・転倒・孤立など)

「今すぐ介護保険を使うかは未定ですが、
将来のために相談先を知っておきたくて…」

と伝えると、話しやすくなります。

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2-2. ケアマネジャーという「現地司令塔」を味方につける

介護保険の申請をして、要介護認定が出ると、ケアマネジャー(介護支援専門員)が付きます。

ケアマネは、

  • 訪問介護・デイサービスなど、サービスの組み立て
  • 親の様子の共有(電話・メールで状況を教えてもらう)
  • 今後の見通しについての相談

などをしてくれる、現地の“司令塔”のような存在です。

遠距離介護では、ケアマネとの相性がとても大切です。
初回の面談や、その後のやりとりの中で、

  • 親の話をきちんと聞いてくれるか
  • 子どもの不安にも耳を傾けてくれるか
  • 無理のないプランを一緒に考えてくれるか

を、少しずつ見ていきましょう。

2-3. 「ご近所・親戚・民間サービス」も、“少しずつ”頼る

公的な窓口以外にも、遠距離介護で頼れる人・サービスがあります。

  • 昔からのご近所さん・親友
  • 親戚(おじ・おば・いとこ など)
  • 民間の見守りサービス・駆けつけサービス

などです。

いきなり「全部お任せ」はハードルが高いので、

「何かあったら、まずは私(子ども)に連絡をもらえますか?」

という形で、“連絡のハブ”をお願いするところから始めるのも一つの方法です。

2-4. 在宅介護か施設か迷うときの「考え方の軸」を知っておく

遠距離介護だと、ゆくゆくは

  • このまま在宅介護を続けるのか
  • 施設入居も視野に入れるのか

で悩むタイミングがほぼ必ずやってきます。

そのとき、「なんとなくのイメージ」だけで決めようとすると、
あとから後悔しやすくなります。

あらかじめ、

  • 親の希望
  • 自宅での安全性
  • 家族の時間・体力・お金
  • 利用できるサービス

など、考える軸を知っておくと、選びやすくなります。

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ステップ3:自分ができること・できないことの線を決める

遠距離介護がつらくなる最大の理由は、
「本当はもっとできたはず」と、自分を責めてしまうことです。

その前に、自分なりの「ルール」を決めておくのがおすすめです。

3-1. 「頻度」「お金」「心」のルールを先に決める

例えば、次のようなイメージです。

頻度のルール

  • 帰省:原則 月1回(難しいときは2ヶ月に1回にする)
  • 電話:週1〜2回
  • オンライン面談:月1回、ケアマネ同席で状況共有

お金のルール

  • 帰省の交通費:毎月○万円まで
  • 親への仕送り:毎月○万円まで
  • それ以上が必要なときは、きょうだい・親と相談して決める

心のルール

  • 「できないこと」は、できないと認める
  • 自分の体調が悪いときは、無理をしない
  • 一人で決められないことは、専門家に相談する

こうしてルールを言語化しておくと、

「ルールの範囲で、ちゃんとベストを尽くしている」

と、自分を責めすぎずに済むようになります。

3-2. 仕事・家族とのバランスを整える

遠距離介護では、

  • 自分の仕事
  • 配偶者や子どもとの生活
  • 自分自身の健康

も並行して守っていく必要があります。

そのためには、職場にも早めに事情を共有しておくことが大切です。

  • いきなり「フルリモートにしてほしい」と頼むのではなく、
  • まずは「親の体調が安定するまで、○ヶ月だけ△曜日の早退を増やしたい」など、
  • 期間と内容を区切って相談する

ことで、職場との信頼関係を保ちやすくなります。

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3-3. 「やらなくていいこと」を決める

遠距離介護を続けるためには、
「がんばらないこと」を意識的に決めることも、とても大切です。

例えば、

  • 毎回の帰省で「家中を完璧に掃除する」はあきらめる
  • 親との電話を、毎日ではなく「週2回まで」と決める
  • 「将来の全て」を決めようとせず、「今から半年」のことだけ考える

などです。

「全部やろうとしない」
ことは、手抜きではなく、介護を続けるための戦略です。

遠距離介護でやりがちなNGと、その代わりにできること

NG1:何も決めないまま、突発的なトラブルで動き続ける

  • 親が倒れるたびに、慌てて飛行機・新幹線で帰省
  • 交通費も有給も限界に近づいていく
  • でも、全体の方針は何も決まらないまま…

この状態が一番、心身ともに削られます。

→ 代わりにやりたいこと

  • 「遠距離介護メモ」を作る
  • 地域包括支援センターに相談する
  • 帰省頻度・お金・心のルールをざっくり決める

細かいことが決まっていなくても、
「ここまでは決めた」という線があるだけで、かなりラクになります。

NG2:「自分が全部やらなきゃ」と抱え込む

  • きょうだいに頼りづらい
  • 配偶者や子どもに迷惑をかけたくない
  • 仕事も手を抜きたくない

全部を一人で抱え込むと、
一番先に限界が来るのは、あなた自身の心と体です。

→ 代わりにやりたいこと

  • 現地対応は「ケアマネ・地域包括・サービス事業者」にも分担してもらう
  • 判断やお金は、きょうだいと「会議」として一緒に考える
  • つらくなったら、介護者向けの相談窓口やカウンセリングも選択肢に入れる

「誰かに話す」だけでも、心の負担がかなり軽くなります。

NG3:親に全部隠して進めようとする

  • 心配をかけたくないからと、親に何も言わずに手続きを進める
  • サービスを勝手に決めてしまう
  • 結果、親が「自分のことなのに勝手に決められた」と感じてしまう

→ 代わりにやりたいこと

  • 「不安だから」ではなく、「自分らしく暮らしてほしいから、一緒に考えたい」と伝える
  • 親のペースに合わせて、できるところから少しずつ話す
  • 嫌がることは無理強いせず、「また今度話そう」と一旦引く余裕を持つ

遠距離介護で頼れる主な相談先

「まずどこに電話すればいい?」という方のために、
遠距離介護で頼れる主な相談先をまとめておきます。

  • 親の住んでいる市区町村の地域包括支援センター
  • 市区町村の介護保険課・高齢福祉課
  • 介護認定後のケアマネジャー
  • 社会福祉協議会や自治体の介護相談窓口
  • 民間の介護相談サービス・顧問介護士など

電話の際は、

「親が○○に住んでいて、私は△△に住んでいます。
遠くからできることや、利用できるサービスについて
相談したくてお電話しました。」

と伝えると、スムーズに話が始まりやすくなります。

さいごに|「全部はできなくていい」遠距離介護のスタンス

遠距離介護は、近距離の介護以上に、
「もっとできたんじゃないか」という後悔や罪悪感を抱えやすい状況です。

でも、

  • 親の「今」を見える化して
  • 親の地域に“現地の味方”をつくって
  • 自分の「できる/できない」に線を引いておけば、

「何かあっても、完全に一人ではない」

という感覚を少しずつ持てるようになります。

完璧を目指す必要はありません。
月1回しか帰れなくても、その中でできることを積み重ねていけば、それは立派な遠距離介護です。

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