「親に貯金がほとんどない。
介護や葬儀は、全部自分がかぶるしかないのかな…」
そんな不安を抱えて、このページにたどり着いた方も多いと思います。
結論から言うと、
「全部を子どもが自腹で背負わなくていいようにする」ための制度や考え方は、ちゃんと用意されています。
ここでは、
- 親にお金がほとんどないと分かったときの「最初の整理」
- 介護・医療で使える公的制度
- 生活保護を視野に入れるタイミング
- お金がない親の葬儀で検討できる支援
- 子どもが背負い込みすぎないための考え方
- 今日からできる小さな準備
を、「親と自分、両方を守る」という視点でまとめていきます。
※ここで紹介する制度や金額は、日本国内を前提にした一般的な内容です。
お住まいの市区町村や時期によって細かな条件が異なるので、最終的には必ず役所や窓口で最新情報を確認してください。
親にお金がほとんどないと分かったとき、最初にやること
「貯金がほとんどない」「年金もギリギリ」と聞くと、
真っ先に介護や葬儀の心配が頭に浮かびますが、
いちばん最初にやりたいのは 現状の整理と、自分の家計の“防衛ライン”を決めること です。
1. 親のお金の「ざっくり全体像」を把握する

完璧な一覧表を作る必要はありません。
まずは、次のようなポイントを、会話の中で少しずつ確認していきましょう。
- 毎月の収入
- 公的年金(老齢・厚生・遺族など)
- パート・アルバイトなどの収入
- 貯金・資産
- 銀行・ゆうちょの口座
- タンス預金
- 持ち家・土地の有無(ローン残高)
- 解約するとお金が戻る生命保険があるか
- 借金・ローン
- カードローンやリボ払い
- 消費者金融からの借り入れ
- 毎月の固定費
- 家賃・管理費
- 電気・ガス・水道・通信費(スマホ・ネットなど)
- 各種保険料(医療・生命・共済など)
いきなり「全部見せて」と迫ると、親も身構えてしまいます。
「もし倒れたときに、代わりに手続きしないといけないから、
保険証とか通帳の“場所”だけでも教えてもらえる?」
こんなふうに、「いざというときのため」の話として切り出すと、
受け入れてもらいやすくなります。
▽ 親が元気なうちに、お金まわりを整理しておきたいときは
親が元気なうちにしておくべきお金と手続きのこと
もあわせて読んでおくと、具体的な確認ポイントがイメージしやすくなります。
2. 子どもの「ここまでは出せるライン」を決めておく
親のお金が足りないからといって、
あなた自身や、あなたの家族の生活まで壊してしまう必要はありません。
- 自分の家賃・住宅ローン
- 生活費
- 子どもの教育費
- 自分の老後資金(iDeCo・NISA など)
これらは、基本的に「手をつけない前提のお金」です。
そのうえで、
- 毎月いくらまでなら援助できるのか
- 一時金として、どのくらいまでなら出せるのか
を、自分の中でざっくり決めておきます。
「このラインを超える分は、公的制度や兄弟姉妹との分担で考える」
というルールを自分の中につくっておくと、
後から感情に流されて大きなお金を出してしまう…という事態を防ぎやすくなります。
介護・医療で使える公的な支援
親にお金がほとんどなくても、日本には
- 介護保険
- 高額療養費制度 などの医療費サポート
- 自治体独自の減免・助成
といった仕組みがあります。
1. 介護保険サービスをフル活用する

65歳以上(または特定の病気がある40〜64歳)の人は、
介護保険を使って、次のようなサービスを利用できます。
- デイサービス(通所介護)
- 訪問介護(ヘルパー)
- ショートステイ
- 福祉用具レンタル・住宅改修 など
自己負担は原則 1〜3割 で、
所得が低い高齢者は1割負担が基本です。
利用の流れは、
- 市区町村の窓口 or 地域包括支援センターに相談
- 要介護(または要支援)認定を申請
- ケアマネジャーとケアプランを作成
- プランに沿ってサービス利用開始
という順番になります。
「お金がないから介護サービスはムリ」と諦める前に、
使えるサービスがないか、一度ケアマネさんや窓口で相談してみてください。
2. 介護保険料・自己負担の軽減制度
収入が少なく、介護保険料や自己負担が重い場合、自治体によっては
- 介護保険料の減免・猶予
- 介護サービス利用料の減免
といった制度が用意されています。
窓口では、
「介護保険料や介護サービスの自己負担を、軽くしてもらえる制度はありますか?」
と、率直に聞いてみるのが早道です。
3. 医療費が高くなったときは「高額療養費制度」
入院や手術で医療費が高額になった場合、
健康保険の 高額療養費制度 が使えます。
- 1か月(同じ医療機関など)の自己負担額が、
年齢や所得ごとに決められた「上限額」を超えた場合に、超えた分が後から戻る仕組み - 住民税非課税世帯など、所得が低いと上限額も低く抑えられます
あらかじめ健康保険に
- 「限度額適用認定証」
- 住民税非課税世帯なら「限度額適用・標準負担額減額認定証」
を申請しておくと、病院の窓口で支払う金額自体が抑えられます。
生活保護を視野に入れるタイミング
どう工夫しても、親自身の収入と資産では生活が成り立たない。
子どもの援助にもはっきりと限界がある──。
そんなときは、生活保護 を検討することも、現実的な選択肢です。
1. こんな状況なら、一度相談してみる

- 年金だけでは家賃や生活費を払えず、毎月赤字になっている
- 預貯金がほとんどない
- 病気や高齢で、これ以上働くのがむずかしい
- 親族に頼ることができない、または頼っても十分な援助が望めない
こうした状況であれば、
市区町村の福祉事務所(生活福祉課など)に相談すると、
- 生活保護を含めた支援制度全体
- 利用できるサービス、手続きの流れ
を説明してもらえます。
2. 「かわいそう」ではなく「権利」として考える
「生活保護なんてかわいそう」「そこまで落ちたみたいで…」と、
本人も家族も抵抗を感じることがあるかもしれません。
でも、本来生活保護は、
- 最低限の生活を守るための
- 国が定めた“最後のセーフティネット”
として用意されている制度です。
「これ以上、あなたにお金を出させたくないから、
一度役所に制度の話を聞きに行ってみない?」
というように、
子どもの負担を減らすための“親の選択”として話を持ちかけると、
比較的受け入れてもらいやすいこともあります。
3. 生活保護と介護・医療・葬儀
生活保護を受けると、条件に応じて
- 医療費が生活保護の中から支払われる(原則自己負担なし)
- 介護保険サービスの自己負担も保護の範囲で対応
- 亡くなったとき、条件を満たせば葬祭扶助で葬儀費用の一部を支給
など、介護・医療・葬儀にもつながるサポートが増えます。
お金がない親の葬儀で検討したいことと「葬祭扶助」
1. 葬儀にお金をかけられない…という現実
- 親の貯金はほとんどない
- 自分の貯金も心もとない
- それでも、きちんと見送りたい
この二つの気持ちの間で揺れる方は、とても多いです。
そんなときに知っておきたいのが、
生活保護制度の一環である 葬祭扶助 です。
2. 葬祭扶助とは
生活保護を受けている人、またはそれに準じる生活困窮状態と認められた人が亡くなったとき、
必要最小限の葬儀費用を自治体が負担してくれる制度が「葬祭扶助」です。
- 多くは「直葬(通夜・告別式なしの火葬のみ)」が中心
- 火葬料、棺、骨壺、遺体搬送など、最低限に必要な項目が対象
- 支給される上限額は自治体ごとに異なる
「豪華な葬儀」は難しくても、
- 火葬を行うこと
- お骨をどうするか家族で決めること
- ささやかでもお別れの時間を持つこと
ができるだけでも、「ちゃんと送り出せた」と感じられるご家族は少なくありません。
3. 利用するときの注意点
- 葬儀を行う前に、福祉事務所に相談・申請する必要がある
- 親族の経済状況によっては、「まず子どもの扶養能力」を確認されることがある
- 葬儀社に相談すると、葬祭扶助を前提にした低額プランを提案してくれる場合もある
「一度役所に聞いてみる」「葬儀社に正直に予算を伝える」
この二つを押さえておくだけでも、選べる選択肢は増えます。
子どもが「自腹で背負いすぎない」ための考え方
真面目な人ほど、
「自分さえ頑張れば、どうにかなるはず」
「兄弟に頼るのは悪い気がする」
と、全部を抱え込みがちです。
でも、守るべきなのは
- あなた自身の生活
- あなたの家族(配偶者・子ども)の生活
- あなたの老後
でもあります。
1. 「気持ち」と「お金」を一度切り分ける
- 親孝行したい気持ち
- 実際に出せるお金
この二つをごちゃまぜにせず、
- 親への援助は「毎月○円まで」「一時金○万円まで」と上限を決める
- それ以上は、公的制度や兄弟姉妹との分担、葬祭扶助などで対応する
という線引きを、あらかじめ自分の中で決めておくことが大切です。
「冷たい子ども」だと感じるかもしれませんが、
あなたが家計ごと行き詰まってしまうと、
結果的に親を支えることもできなくなってしまいます。
2. 兄弟姉妹・親族と話し合うときのポイント
- 感情だけで話さず、「数字」と「現状」を共有する
- 親の収入・支出
- 足りない金額
- 想定される介護・葬儀の費用感
- 各自が「無理なく出せる金額」「できる役割」を整理する
- 話し合いの内容をメモにして、あとでLINEやメールで共有しておく
▽ きょうだいとの話し合いに不安があるときは
きょうだいで親の介護をどう分担する?不公平感を減らす5つのヒント
のような記事も、整理の仕方や言い出し方を考えるヒントになります。
今日からできる「小さな準備」
「うちは本当にお金がないから、できることなんてない」と感じるかもしれません。
それでも、お金をほとんど使わずにできる準備はたくさんあります。
1. 大事な情報を一か所に集める

- 健康保険証・介護保険証
- 年金関係の書類
- 通帳・キャッシュカード(銀行名・支店名だけでも)
- かかりつけ医・よく行く病院
- 加入している保険(生命・医療・共済など)
これらを「いざというときファイル」のような形でまとめておくと、
- 急な入院
- 介護サービスの申請
- 亡くなった後の手続き
の負担が大きく減ります。
2. 「困ったときの相談先」をメモしておく
- 市区町村の福祉事務所・高齢福祉課
- 地域包括支援センター
- 社会福祉協議会
スマホのメモ帳や手帳に「困ったらまずここに電話」と書いておくだけでも、
いざというときの心細さが少しやわらぎます。
3. 簡単なエンディングノート・資産メモを作る
親のお金が少なくても、
- どこに何があるか
- どんな医療・介護・葬儀を望んでいるか
- 誰に連絡してほしいか
が分かっているだけで、トラブルと不安は大幅に減ります。
ノート1冊を決めて書き始めるだけでも十分ですし、
▽ 自分のことも含めて「これから」を整理したくなったら
自分の終活|今から備える10の準備【チェックリスト付き】
を見ながら、親と自分、それぞれの「これから」を少しずつ言葉にしてみても良いと思います。
おわりに:お金がなくても、「一緒にできること」はある
- 親にお金がほとんどなくても、
介護保険・高額療養費制度・生活保護・葬祭扶助など、使える制度を組み合わせれば、
「親も子も、なんとか暮らしていけるライン」をつくることはできます。 - 子どもが、自分の生活や老後資金を削ってまで背負い込む必要はありません。
「ここまでは出せる/ここから先は制度や周りも頼る」という線引きをしてよいのです。 - そして今日からできるのは、
情報をまとめる・相談先をメモする・ノートを書き始める、といった小さな一歩です。
完璧な準備や、立派な答えを目指さなくて大丈夫です。
「今の自分たちでできること」を一つずつ積み重ねていくことが、
結果的にはいちばんの「親孝行」になっていきます。


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