実家と相続の話になると、しんどくなるのは普通です
親が年齢を重ねてきて、
- 「この家、この先どうするんだろう」
- 「相続で兄弟とケンカしたくない」
- 「でも、お金の話を切り出すのは気まずい…」
こんなモヤモヤを抱えていませんか?
介護や通院の話は何とかできても、
「実家」「相続」「お金」 の話になると、
「欲張りだと思われたくない」
「でも、このままだと不公平になりそう…」
と、胸の中でぐるぐるしてしまう人は、とても多いです。
結論:「完璧な公平」ではなく、「納得度7割」を一緒に目指す
最初に結論からお伝えすると、
兄弟姉妹で揉めないためには、
完璧な“公平”を目指すのではなく、「納得度7割」を目指すこと
そして、そのための“ルール”を事前に決めておくこと
が大切です。
この記事では、兄弟姉妹で実家と相続の話をするときに、
ケンカを減らすための 5つのルール をご紹介します。
事前に決めておきたい5つのルール
- ルール1:いちばん上に来るのは「親の意向」
- ルール2:「実家」と「お金」を分けて考える
- ルール3:「貢献度=取り分」にしない代わりに、気持ちは言葉にする
- ルール4:話し合いの場と“決定の場”を分ける
- ルール5:決まったことは「書いて残す」+「見直し前提」にする
「誰が悪いか」を探すのではなく、
「どうすれば、全員が“まあ、これなら”と思えるか」 に目を向けていく。
そのための具体的な進め方を、これから一緒に整理していきましょう。
なぜ実家と相続は、兄弟姉妹が揉めやすいのか?
「もの・お金・思い出」が全部からむテーマだから
実家と相続の話は、
ただの数字や手続きの問題ではありません。
- 実家に残っている 思い出の品
- 親ががんばって築いてきた お金や財産
- それぞれの胸の中にある 親との記憶
ここに、子ども世代の
- 「これまでどれだけお世話をしてきたか」
- 「どれだけお金や時間を出してきたか」
- 「昔からのわだかまり」
まで加わってきます。
そのため、ほんの一言がきっかけで、
感情がぶつかりやすいテーマ になりがちです。
立場が違えば、“見えている景色”も違う

たとえば、こんな構図になっていませんか。
- 実家の近くに住んでいるきょうだい
→ 日々の通院や見守り、片付けの負担が大きい - 遠方に住んでいるきょうだい
→ 帰省のたびに、交通費や宿泊費など、まとまったお金と時間を使っている - 同居しているきょうだい
→ 親との距離が近い分、ストレスも溜まりやすい
それぞれが、
「私はこんなにやっているのに…」
「やりたくてもできない自分が情けない…」
と、自分を守りたい気持ちや、後ろめたさを抱えています。
ここで大事なのは、
「誰かがワガママだから揉めている」のではなく、
“立場と背景が違うからズレやすい” という前提を、まず共有すること。
そのうえで、これから紹介する5つのルールを使って、
「実家と相続の話」を少しずつ整えていきましょう。
ルール1:いちばん上に来るのは「親の意向」
「誰が得か」ではなく、「親はどうしたいか」を基準にする
実家や相続の話をしていると、どうしても
- 「誰がどれだけもらうか」
- 「誰が損をして、誰が得をするか」
という視点になりがちです。
でも、本来の主役は 親本人 です。
- 実家は残しておきたいのか
- 売ってもいいと思っているのか
- 誰かに住み続けてほしいと思っているのか
まずは、
「親はどうしたいと思っているかを、みんなで共有する」
ところから始めるのがおすすめです。
親の意向を聞くときの言い出し方

いきなり
「相続どうする?」と聞くと、構えてしまいます。
もう少し日常会話に近い形で、こんなふうに切り出してみてください。
「この家、この先どうしていきたいって思ってる?」
「もし自分に何かあったら、家のことどうしてほしい?」
「売るとか貸すとか、選択肢を一緒に考えてみない?」
親の意向を丁寧に聞いておくと、
あとから兄弟同士で話し合うときの “ぶれない軸” になります。
あわせて、親が元気なうちに話しておきたいお金のことは、
「親が元気なうちにしておくべきお金と手続きのこと」
も参考になります。
ルール2:「実家」と「お金」を分けて考える
「実家=財産」だけの話ではない
相続の場面で、特に揉めやすいのが 「実家(不動産)」 です。
- 「長男が住み続けるんだから、多めに相続したい」
- 「遠方に住んでいるから家はいらないけど、現金は公平にしてほしい」
- 「誰も住まないなら、売って分けたほうがいいんじゃないか」
ここで混乱しやすいのが、
「家に住む権利」
と
「財産としての価値」
をごちゃまぜにしてしまうことです。
3つに分けて整理してみる
話し合うときは、次の3つに分けて考えてみてください。
- 実家に「住むか・住まないか」の話(暮らし・生活の話)
- 実家を「どう扱うか」の話(売る/貸す/持ち続ける)
- 実家とその他の財産を合わせた「全体のバランス」の話(相続の取り分)
たとえば、こんな整理の仕方があります。
- 実家には長男家族が住み続ける
- その代わり、預貯金や保険の受取は、次男・長女を少し厚めにする
- 固定資産税や維持費は、原則住んでいる人が負担する
「家そのもの」「そこに住む人」「お金としての価値」を
一度バラしてから、組み立て直すイメージ です。
実家そのものをどうするか考える前に、
片付けやスケジュールの整え方を知っておきたい場合は、
も目を通しておくと、話し合いが少ししやすくなります。
ルール3:「貢献度=取り分」にしない代わりに、気持ちは言葉にする
「どれだけやってきたか」を数字にするのは、現実的ではない
介護や通院、実家の片付けなどで負担が大きかったきょうだいは、どうしても
「これだけやってきたんだから、もう少し多くもらってもいいのでは」
という気持ちが出てきます。
一方で、遠方にいてあまり関われなかったきょうだいは、
「何もしてこなかった自分が、同じだけもらっていいのだろうか」
という後ろめたさを抱えがちです。
ただ実際には、
- 介護に費やした時間
- 仕事や家族への影響
- メンタルの負担
などをきれいに数字にして、
「だから◯◯万円分ね」
と割り切るのは、ほとんど現実的ではありません。
「貢献度調整」ではなく、「気持ちを言葉にする時間」を取る
そこでおすすめしたいのは、
取り分で“貢献度の精算”をしようとしない代わりに、
「どんな気持ちでやってきたか」を言葉にする時間を持つこと。
たとえば、話し合いの場で、こんなふうに伝えてみます。
- 「正直なところ、これまで通院や手続きはほとんど私がやってきて、しんどいなと思うこともあった」
- 「でも、それを“お金で精算したい”わけじゃなくて、
ただ、その大変さを少しわかってもらえたらうれしい」
聞いている側も、
- 「本当に頼りきってしまっていたと思う。ありがとう」
- 「仕事や子育てで動けなかったけど、これからできることがあれば教えてほしい」
と、感謝や、これからの協力の仕方 を言葉にできます。
すべてがすっきり解決するわけではなくても、
「分かってもらえた」という感覚があるかどうかで、
その後の関係性は大きく変わってきます。
なお、親のお金を家族が管理し始めたときのルールや注意点は、
で、別記事としてくわしく整理しています。
ルール4:話し合いの場と“決定の場”を分ける
1回の話し合いで「結論まで出そうとしない」
実家と相続の話は、
1回集まって全部決め切る必要はありません。
むしろ、1回で結論まで出そうとすると、
- 感情が追いつかない
- その場の空気に流されて決めてしまう
- あとから「やっぱり違った」と誰かが不満を抱く
というリスクが高くなります。
おすすめは、話し合いを 2段階に分ける ことです。
- 第1フェーズ:「現状をそろえる会」
- 親の意向
- 財産のおおまかな全体像
- それぞれの事情や気持ち
→ ここでは「決めなくてOK」。まずは“見える化”がゴール。
- 第2フェーズ:「どう分けるかを考える会」
- 必要に応じて専門家(税理士・司法書士など)の意見も踏まえながら、具体的な案を検討する
LINEで声をかけるときの文例

LINEやメールで声をかけるときは、
最初から「決める場」にしないことを伝えておくと、参加しやすくなります。
「そろそろ、実家と相続のことも
一度みんなで“現状整理”だけしておきたいと思ってます。この日は
・親がどうしたいと思っているか
・家やお金がどんな状態か
・今それぞれがどんな状況か
を共有する会にして、
“誰が何をどれだけもらうか”までは決めなくてOK、
というスタンスにしたいです。決める話は、必要ならその次の回で、
専門家にも相談しながら進められればと思っています。」
「今日は決めなくていい」と書いてあるだけで、
参加の心理的ハードルはぐっと下がります。
ルール5:決まったことは「書いて残す」+「見直し前提」にする
口頭だけの合意は、あとから誤解のもとに
その場では
「じゃあ、それでいいか」
と合意したつもりでも、
数ヶ月たつと、それぞれの記憶が少しずつズレていきます。
- 「あのとき、こう言ってたよね?」
- 「そんなつもりでOKしたわけじゃない」
と、新たなモヤモヤの種になることも。
だからこそ、
決まったことは「メモ」として残し、全員で共有する
ことがとても大切です。
メモに残しておきたいポイント
たとえば、こんな項目を箇条書きでまとめておきます。
- 親の意向(実家・お金・お墓など)
- 実家をどうする方針か(住む/貸す/売る/いったん保留)
- 当面の役割分担(片付け・手続き・専門家への相談窓口など)
- 次の話し合いのタイミング(◯ヶ月後 など)
- 「また見直す」前提にしていること
形式は、LINEのノートでも、共有メモアプリでも、紙でもOKです。
大事なのは 「全員が見られる場所にある」 ことです。
「一度決めたら終わり」ではなく、「見直してOK」にしておく
親の体調や暮らし、きょうだいそれぞれの状況は、
時間とともに少しずつ変わっていきます。
「一度決めたら、もう二度と変えてはいけない」
という前提だと、決めるのが怖くなってしまいます。
そこで、
- 「まずはこの方針で1年くらいやってみて、また見直そう」
- 「親の状態や、自分たちの暮らしが変わったら、そのときにもう一度話す」
と、“見直し前提”にしておくと、
- 今の自分たちにできる範囲で決めやすい
- 「一生これを背負えと言われている」感じが薄くなる
というメリットがあります。
ケース例:3人きょうだいで実家と相続を話し合うとき
ここまでのルールを、具体的なケースに当てはめてイメージしてみましょう。
例)
- 長男:実家の近くに住んでいる。通院や買い物を主に担当。
- 次女:遠方でフルタイム勤務。金銭面のサポートはできそう。
- 三女:同じ県内。子どもが小さいが、書類や手続きは得意。
- 親:今は一人暮らし。実家にできるだけ長く住みたい気持ちが強い。
この場合の流れの一例です。
- ルール1:親の意向を共有する
- 「できればこの家に、できるところまで住み続けたい」
- 「いずれ誰も住まなくなるなら、売ることも選択肢に入れている」
- ルール2:「実家」と「お金」を分ける
- 当面は、親が今の家に住み続ける前提。
- 将来、長男家族が住む可能性も含めて検討。
- その場合、預貯金の分け方でバランスをとる案も候補に。
- ルール3:貢献度の気持ちを言葉にする
- 長男:「正直、通院や見守りがしんどい時もあった。でも、親の希望を尊重したいと思っている」
- 次女:「なかなか帰れなくて申し訳ない。お金や、帰省したときの片付けで力になりたい」
- ルール4:まずは“整理の会”、次に“決定の会”
- 1回目:現状整理と、親の意向の共有だけ。
- 2回目:必要なら専門家にも相談しつつ、実家+預貯金の分け方を検討。
- ルール5:メモを残し、1年後の見直しをセットにする
- 「今日の合意点」「保留している点」「次回までの宿題」をメモにまとめて共有。
- 「まずは1年、この体制でやってみて、また見直そう」と全員で確認しておく。
もちろん、家族ごとに事情は違います。
ただ、“ルール”を一枚はさむことで、感情のぶつかり合いをかなり減らせる というイメージを持ってもらえたらうれしいです。
さいごに:兄弟の関係を守ることも、立派な「親孝行」

実家と相続の話は、どうしても重くなりがちなテーマです。
「お金の話なんてしたくない」
「兄弟とギスギスしたくない」
そう感じるのは、とても自然なことです。
でも、だからこそ、
- 親の意向を丁寧に聞いておくこと
- 兄弟それぞれの立場や事情を、あらためて共有すること
- 完璧な公平ではなく、「納得度7割」を一緒に目指すこと
は、親の人生と、兄弟の関係を守るための大切な一歩 になります。
もし、すでに「手続きが大変で頭がいっぱい…」という状況であれば、
を先にざっと眺めて、「今はここまででいい」と線を引いてあげるのもおすすめです。
「今日は、この5つのルールのうち、どれを取り入れてみようかな?」
そんなふうに、できそうなところから少しずつ試してみてください。
今日できる“小さな一歩”チェックリスト
- 親が元気なうちに、「この家、この先どうしたい?」と一言聞いてみる
- 兄弟LINEに「一度、実家と相続の“現状整理の会”をしない?」と送ってみる
- 実家・預貯金・保険など、「何がどこにあるか」をざっくり紙に書き出してみる
- 「完璧な公平」ではなく、「納得度7割でいい」と自分に言い聞かせてみる
- 自分自身のこれからが気になってきたら、
「自分の終活|今から備える10の準備【チェックリスト付き】」
も、時間のあるときにゆっくり読んでみる


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