親の家が「ゴミ屋敷ぎみ」になってきたときに|責めずに片付けを進める5つのステップ

遺品整理

親の家が「ゴミ屋敷ぎみ」でも、あなたが「全部きれいにしなきゃ」と背負い込む必要はありません。

目指したいのは、

  • 親を傷つけず
  • あなた自身もつぶれず
  • 「命と健康に関わる危険だけは減らす」

この、現実的なラインです。

家じゅうを一気に片付けようとすると、

  • 親との関係がこじれてしまう
  • あなたの心と体が先に限界を迎えてしまう

ということも珍しくありません。

この記事では、

  • なぜ親の家がゴミ屋敷ぎみになってしまうのか
  • 親を責めない声かけのコツ
  • 少しずつ片付けを進めるステップ
  • 家族だけで抱え込まないための相談先

まで、「完璧ではないけれど、現実的にできること」を一緒に整理していきます。

なぜ親の家が「ゴミ屋敷ぎみ」になってしまうのか

認知症やセルフネグレクトのサインかもしれない

まず知っておきたいのは、

「だらしない性格だから」だけが原因とは限らないということです。

たとえば…

  • 物をどこに置いたか忘れて、出しっぱなしになる
  • 片付けや掃除の段取りがうまく組めなくなる
  • 「もうどうでもいい」と生活全体への意欲が落ちている

といった状態は、認知症の初期や「セルフネグレクト」と呼ばれる状態のサインのこともあります。

ここで、

「なんでこんなに散らかすの!」

と性格の問題にしてしまうと、
本人は「責められた」「否定された」と感じてしまいがちです。

「心や体の変化かもしれない」という視点を持つだけで、 対応の仕方や声のかけ方が、少しやわらかくなります。

体力・視力の低下で「できない」状態になっている

年齢とともに、片付けそのものが負担になることも増えてきます。

  • 腰や膝が痛くて、しゃがんだり持ち上げたりがつらい
  • ゴミ出し場が遠く、一度に運びきれない
  • 視力が落ちて、ホコリや汚れがあまり見えない

親の感覚としては、

「前と同じようにできているつもり」

でも、実際には

「片付けたいけれど、体力的に追いつかない」

ということもよくあります。

「やらない」のではなく「できない」のかもしれない。
そう思ってみるだけでも、イライラが少し和らぐことがあります。

ものが「思い出」や「安心材料」になっている

散らかった部屋のなかには、
親の人生の「思い出」や「さみしさを埋めるためのもの」も混ざっています。

  • 亡くなった配偶者との思い出の品
  • 若いころにがんばって買った物
  • 一人暮らしの不安を埋めるための物

そんな中で、

「なんでこんなガラクタ取ってあるの!」

と言われると、
「自分の人生を否定された」と感じてしまう人もいます。

“思い出そのもの”まで否定しない姿勢が、
このあと片付けの話を切り出すときの土台になります。

「そもそも実家の片付けって、どこからどう始めればいいの?」という段階なら、
もう少し“ふつうの状態”の実家を前提にした準備編の記事も参考になると思います。

👉 親と片付けを始める前の心構えや段取りをまとめた
『親の家の片付けを始める前に知っておきたい3つの準備』
も、よかったら合わせて読んでみてください。

ステップ1:まず「安全ライン」を確認する(命と健康の視点)

ここからは、具体的な片付けステップに入っていきます。

とはいえ、いきなり「見た目のきれいさ」を目指さなくて大丈夫です。

最初にチェックしたいのは、「命と健康に関わる危険がないか」というポイント。

  • 火事のリスクはないか
  • 転倒しそうな場所がないか
  • 衛生面で大きな問題になっていないか

まずはここだけを確認していきます。

安全ラインチェックリスト(まずここだけ押さえる)

✅「全部きれい」は目指さなくてOK。
✅「ケガ・病気・火事につながるところだけは守る」がゴールです。

【1. 火のまわり(コンロ・ストーブ)】

  • □ コンロの近くに、紙や布が積まれていない
    (チラシ・新聞・段ボール・ふきん・服など)
  • □ ストーブの前後左右1m以内に、洗濯物・布団・服・紙袋などが置かれていない

【2. 動線(玄関〜廊下〜トイレ・お風呂)】

  • □ よく歩く通り道に「またぐしかない物」がない
  • □ 段差・階段の近くに物が積まれていない
  • □ 手すりや壁を、しっかりつかめるスペースがある

【3. 水回り(トイレ・お風呂・洗面所)】

  • □ トイレまで、物をまたがずに歩いて行ける
  • □ 浴室の床に物が散乱しておらず、滑りそうな物がない
  • □ 洗面所の足元に物が積まれていない

【4. 食品・ゴミまわり】

  • □ 台所に、明らかに腐っていそうな物が放置されていない
  • □ 生ゴミの袋が、むき出しでいくつも放置されていない
  • □ 冷蔵庫に、「いつのか分からないタッパー」が大量にない

【5. その他】

  • □ 寝室やリビングの壁一面に、カビが広がっていない
  • □ 窓や換気扇が、まったく開かない状態ではない
  • □ タコ足配線やコンセント周りに、ホコリが厚くたまっていない

このチェックで「明らかに危ないところ」から手をつけていくだけでも、 かなりリスクを減らすことができます。

ステップ2:親の気持ちを傷つけない声かけ・伝え方

次に大事なのが「言い方」です。

同じことを伝えるにしても、

  • 「責められた」と感じる言い方
  • 「心配してくれている」と感じる言い方

では、その後の反応が大きく変わります。

ここでは、すぐに使える言い換えの例文をまとめます。

親への声かけ・伝え方の例文集(NGとOKの言い換え)

1. 家の状態を指摘したいとき

  • NG:
    「なんでこんなゴミだらけにしたの?」
    「こんなの、ゴミ屋敷だよ!」
  • OK:
    「歩くところがちょっと狭くなってきてて、
    お母さんがつまずかないか心配なんだ。」
    「全部じゃなくていいから、
    転びそうなところだけ一緒に片付けてもいい?

2. 台所・コンロ周りを片付けたいとき

  • NG:
    「台所、汚すぎ。よくこんなところで料理できるね。」
    「危ないから全部捨てるからね。」
  • OK:
    「ここでお料理してるときに、
    紙とか布が火に近くて、ちょっとドキッとしちゃって…。」
    コンロの近くの分だけ、一緒に片付けさせてもらってもいい?」
    「お母さんが安心して料理できるようにしたいんだ。」

3. 動線(廊下・玄関)を片付けたいとき

  • NG:
    「こんな置き方してるから転ぶんだよ。」
    「邪魔だからどかしてよ。」
  • OK:
    「夜トイレ行くときに、ここでつまずいたら大ケガになるから、
    ここだけ一緒に場所を変えない?
    「全部片付けようって話じゃなくて、
    お母さんの通り道だけ広げたいなって思ってるんだ。」

4. 思い出の物・捨てづらい物に触れるとき

  • NG:
    「こんな昔の雑誌、誰も見ないよ。」
    「ガラクタばっかり。さっさと捨てよう。」
  • OK:
    「これは大事にしてきた物なんだよね。」
    「全部は難しくても、
    特に残したい物と、写真だけ残して手放せそうな物に分けてみない?
    「残す物はちゃんときれいに置いておこうよ。」

5. 行政や専門家への相談を切り出すとき

  • NG:
    「もう手に負えないから、役所に通報するからね。」
    「業者呼んで、全部片付けさせるから。」
  • OK:
    「私だけだと、正直ちょっと手が回らなくて…。
    お母さんの負担が減るように、一緒に相談できる窓口があるみたいなんだ。
    「頼りないかもしれないけど、
    私だけじゃ不安だから、専門の人にも手伝ってもらえたら安心だなって。」

6. 親が断固拒否するときの“引き際のひと言”

  • 「今日はここまでにしようか。
    また別の日に、お母さんの元気なときに相談させて。
  • 「無理にやらせたいわけじゃなくて、
    心配だから話してるだけってことだけ分かってもらえたら嬉しい。

言い方を少し変えるだけでも、
親の受け取り方は大きく変わってきます。

ステップ3:一気にやらない、小さく始める片付けの進め方

ゴミ屋敷ぎみの家を前にすると、
全体を見て気が遠くなってしまうこともありますよね。

ここでのポイントは、

「家全体をきれいにする」ではなく、 「優先度の高い場所を、小さく区切って片付ける」こと。

優先度の高い場所から手をつける

安全ラインとも重なりますが、優先順位の目安はこんな流れです。

  1. 玄関〜廊下〜トイレ・お風呂までの動線
  2. 台所・コンロ周り
  3. 寝室周り(ベッドの周り・夜間の動線)
  4. 親が長く過ごす場所(リビングなど)

「今回は玄関だけ」
「今日はシンクの中だけ」と決めて、
1回につき“1エリア”に絞るのがおすすめです。

「1エリアずつ」と「保留ボックス」で親の抵抗を減らす

  • その場で決めきれない物は、
    → 「保留ボックス」に入れておく
  • すぐに捨てられない物は、
    → 「〇月まではこの箱に置いておいて、それでも使わなかったら手放そうか」と“猶予期間”を決める

こうすることで、

  • 親は「勝手に捨てられた」と感じにくい
  • あなたも「今日はここまでできた」と区切りをつけやすい

というメリットがあります。

“完了させること”よりも、“前に進んでいる感覚”を大事にする。
長期戦になりやすい片付けでは、とても重要な視点です。

ステップ4:家族だけで抱え込まない|行政・専門職への相談

ここまで読んで、

「正直、家族だけではとても手に負えない…」

と感じた方もいるかもしれません。

そんなときに覚えておいてほしいのは、

深刻なゴミ屋敷化に、一人で立ち向かう必要はないということです。

まず相談したい公的窓口(地域包括支援センターなど)

たとえば、こんな窓口があります。

  • 地域包括支援センター
  • 市区町村の高齢福祉課・介護保険課
  • 場合によっては、保健所・生活支援窓口 など

「親が散らかった家で一人暮らしをしていて心配」
「認知症かもしれない、生活が回っていない気がする」

こうした相談は、本人が嫌がっていても、家族だけでまず相談することができます。

ゴミ屋敷ぎみの生活の裏には、
介護保険のサービスや医療的な支援が必要なケースも少なくありません。

介護保険の全体像や、要介護認定の流れをもう少ししっかり知っておきたいときは、

👉 『初めての介護保険・要介護認定の取り方入門』

で、基本から整理しています。
「どこに相談して、何から始めればいいか」のイメージをつかむのに役立つと思います。

ゴミ屋敷レベルが深刻なときの行政対応・条例について

自治体によっては「ごみ屋敷条例」のような仕組みがあり、
近隣に悪影響が出ているケースでは、指導や支援が入ることもあります。

多くのご家族が望んでいるのは、

「親を罰してほしい」のではなく、
「親の生活が少しでも安全になるように手を貸してほしい」

ということだと思います。

その気持ちを担当者に伝えながら、
行政を「敵」ではなく「一緒に考えてくれる味方」として使っていくイメージでいると、相談しやすくなります。

専門の片付け業者を使うときのポイント

業者への依頼は「最後の手段」ではなく、

「家族だけでは難しい部分を手伝ってもらうサービス」として考えても大丈夫です。

  • メリット
  • 短期間で一気に片付けが進む
  • 害虫・悪臭など、家族だけでは対応しづらい部分も任せられる
  • デメリット
  • 費用がかかる
  • 親が「知らない人が家に入ること」に抵抗を感じることがある

親に提案するときは、こんな言い方もおすすめです。

「全部勝手に捨てさせるんじゃなくて、
重たい物を運んでもらったり、汚れているところをきれいにしてもらう感じだよ。
私も一緒にいるから、嫌な物まで捨てさせないからね。」

「自分の知らないところで全部決められてしまうわけではない」と伝えてあげると、
少し受け入れてもらいやすくなります。

ステップ5:再びゴミを溜め込まないための「仕組み」を作る

一度片付けても、
仕組みがないと、また同じ状態に戻ってしまうことも少なくありません。

ここでは、「完璧な収納」ではなく、
「親が無理なく続けられる仕組み」を作ることを目指します。

ゴミ出し・買い物・通販を見直す

  • ゴミ出しが大変なら
    → ヘルパーの家事援助・地域の生活支援サービスを検討する
  • 通販の段ボールが溜まりやすいなら
    → 段ボール置き場を1カ所に決めて、「ここからあふれたら処分」のルールを決める
  • 定期購入・チラシ・無料配布物を見直す
    → 「家に入ってくる物を減らす」だけでも、散らかり方はかなり変わります。

「親が続けられる」シンプルな収納と動線づくり

  • 複雑な収納グッズは増やしすぎない
  • 「使う物だけを、使う場所に」置く配置を意識する
  • ラベルを貼るなら、大きく・分かりやすく

“美しい収納”よりも、“ラクに片付けられる動線”のほうがずっと大事です。

それでもつらいあなたへ|「全部は救えなくてもいい」と思ってほしいこと

ここまで読んでくださったということは、
それだけ、親のことを真剣に考えてこられたのだと思います。

  • 片付けても片付けても、また散らかってしまう
  • 何度言っても親が動いてくれない
  • 兄弟姉妹もあまり協力してくれない

そんな状況が続くと、

「自分の努力が報われない」
「なんで私だけが…」

と感じてしまうのも、当然のことです。

ここで、ひとつだけ覚えておいてほしいことがあります。

  • あなた一人の力で、親の家も人生も「完璧」にする必要はない
  • 「命と健康のライン」を少し上げられただけでも、 それは十分すぎるほどの貢献

ということです。

実家の片付けや介護のことを考えていると、
つい「自分のこと」は後回しになりがちです。

もし今、

「もう限界かもしれない」
「ちょっとしんどくなってきたな」

と感じているなら、
まずはあなた自身の心と体を守ることを優先してほしいです。

そんなときに、少し深呼吸をしながら読んでほしい記事として、

👉 『介護で心が折れそうなあなたへ|“介護うつ”になる前にできる7つのこと』

も用意しています。
「がんばり方」ではなく、「少し力を抜くための視点」を一緒に考える内容です。

まとめ:責めずに、一人で抱え込まずに、できる範囲で

最後に、このページの内容をまとめます。

  • 親の家がゴミ屋敷ぎみでも、
    「性格の問題」と決めつけず、心や体の変化の可能性も考える
  • まずは「命と健康の安全ライン」を確認し、
    危険な箇所から優先して整える
  • 言い方は
    「責める」のではなく「心配している」「一緒にやりたい」
  • 家全体を一気にきれいにしようとせず、
    1エリアずつ、小さく区切って進める
  • 行政や専門業者も、
    「敵」ではなく「一緒に考えてくれる味方」として頼る
  • 片付けたあとは、
    再び溜め込まないための“仕組み”づくりを意識する
  • そして何より、
    あなた自身の生活と心の健康も守っていい

この記事が、

「全部は無理でも、この一歩だけやってみようかな」

と思えるきっかけになれば、とてもうれしいです。

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