「親のお墓が遠くてなかなか行けない」「子どもたちに負担をかけたくない」――。
こんな思いから、お墓を片づける「墓じまい」や、お墓を引っ越しする「改葬」を考える人が増えています。
「お墓そのものの種類や費用感もざっくり知っておきたい」というときは、先に
『お墓の基本|種類・費用・選び方・墓じまいの進め方』
を読んでおくと、全体のイメージがつかみやすくなります。
でも、いざ動こうとすると……
- 何から手をつければいいのか分からない
- お寺や親戚とトラブルにならないか心配
- 役所の手続きが難しそうで不安
といったモヤモヤで、手が止まってしまいがちです。
結論:順番さえ間違えなければ、大きな失敗はかなり防げる
最初に結論だけお伝えすると、
「①家族で話す → ②今のお墓の管理者に相談 → ③新しい納骨先・役所に相談」という順番を守れば、墓じまい・改葬の大きなトラブルはかなり防げます。
必要なステップと、気をつけたいポイントを前もって知っておけば、
- 「知らなかったせいで損をした」
- 「親戚と大げんかになった」
といった事態を避けやすくなります。
この記事では、
- 墓じまいと改葬の違い
- 全体の流れ(7ステップ)
- よくあるトラブルと予防策
- 状況別の相談先
を、できるだけ専門用語少なめでまとめました。
「いますぐ決めるわけじゃないけれど、知っておきたい」という方にも役立つ内容です。
1. 「墓じまい」と「改葬」の違いをざっくり知っておく

墓じまいとは?
墓じまいは、今あるお墓を片づけて、墓石を撤去し、更地に戻すことです。
たとえば、こんな理由で選ばれることが多いです。
- お墓が遠方で、通うのがむずかしい
- お墓を継ぐ人がいない・子どもに負担をかけたくない
- 経済的に、今のお墓を維持し続けるのが難しい
「お墓をやめる」というよりも、
「別の形で供養を続けるための整理」と考えた方がイメージに近いかもしれません。
「そもそも、お墓の種類や供養の選択肢がよく分からない」という場合は、
『お墓の全体像|5分でわかる「場所・形式・費用・決め方」入門』も合わせて読んでみてください。
改葬とは?
改葬(かいそう)は、簡単にいうと「遺骨のお引っ越し」です。
たとえば、
- 今のお墓 → 自宅近くの霊園のお墓
- 今のお墓 → 納骨堂や永代供養墓
- 今のお墓 → 樹木葬や合祀墓
のように、遺骨を別の場所に移すことを指します。
この「遺骨のお引っ越し」には、市区町村の役所での手続き(改葬許可)が必要になります。
墓じまいと改葬はセットになることが多い
実際には、
- 今のお墓を片づける → 墓じまい
- 遺骨を新しい場所へ移す → 改葬
という形で、セットで行われることがほとんどです。
「今のお墓をたたんで(墓じまい)、別のところへお引っ越しする(改葬)」
というイメージで押さえておけばOKです。
2. 墓じまい・改葬の全体の流れ(7ステップ)
細かい手続きの前に、まずは「全体像」を先に見ておきましょう。
一般的な流れは、次の7ステップです。
- 家族・親族と話し合う
- 現在のお墓の管理者(寺院・霊園)に相談する
- 新しい納骨先(候補)を探す
- 役所で「改葬許可」の手続きをする
- 閉眼供養(魂抜き)をして、お墓から遺骨を取り出す
- 墓石の撤去・整地工事をする
- 新しい納骨先で納骨し、必要に応じて開眼供養をする
このあと、それぞれのステップごとに、
「何をするのか」「どこに気をつけるのか」を見ていきます。
3. ステップ別の流れとチェックポイント
STEP1:家族・親族と話し合う
一番最初にやっておきたいのは、家族・親族との話し合いです。
- どうして墓じまい/改葬を考えているのか
- 誰がどのくらい費用を負担するつもりなのか
- 遺骨をどんな形で残したいのか(一般墓・納骨堂・永代供養など)
この辺りを、ざっくりでいいので共有しておくと、あとあと楽になります。
LINE・メールで切り出すときの文例
「お墓のことでちょっと相談したいことがあります。
この先も、みんなが無理なくお参りできるように、
墓じまい(またはお墓の引っ越し)も選択肢に入れて考えています。
一度、みんなの気持ちを聞かせてもらえないかな?」
「こう決めました」ではなく、「相談させてほしい」スタンスで伝えると、
相手も話に乗ってきやすくなります。
親やきょうだいに終活やお墓の話を切り出すのが不安なときは、
『親に終活の話を切り出すタイミングと伝え方のコツ』も参考になります。
STEP2:現在のお墓の管理者(寺院・霊園)に相談する
家族の中で大きな方向性が見えてきたら、
次は今のお墓の管理者に相談します。
- 寺院墓地:菩提寺のご住職・寺務所
- 霊園:霊園事務所・管理事務所
などが相談窓口になります。
ここで確認しておきたいのは、たとえばこんなことです。
- 墓じまい・改葬の手続きの流れ
- 必要な書類(埋蔵証明書など)
- 工事を任せる石材店の指定があるかどうか
- 永代供養や合祀墓への変更が可能かどうか
お寺や霊園によってルールがかなり違うので、
ネット情報だけで判断せず、「うちの場合」を直接聞くのが一番確実です。
離檀料(りだんりょう)について
寺院のお墓を離れる場合、「離檀料(檀家をやめるときのお礼)」の話が出ることがあります。
- 金額の決まりは法律で決まっているわけではない
- 地域やお寺によって考え方も金額もさまざま
という前提を知っておくと、冷静に話しやすくなります。
あまりにも高額に感じる場合は、
- まずはその場で即決せず、「一度家族と相談します」と持ち帰る
- 金額の理由を丁寧に聞いてみる
- どうしても納得できないときは、同じ宗派の別の寺院・本山や、専門家・公的な相談窓口に相談
といった手順を踏むと安心です。
「お寺や葬儀社とのやりとり、そのものが不安」という場合は、
『喪主がやることまとめ|初めてでも慌てない挨拶・服装・香典の基本』を読んでおくと、
葬儀全体のイメージもつかみやすくなります。
STEP3:新しい納骨先(候補)を探す
次に、遺骨をどこへ落ち着かせるかを考えます。
代表的な選択肢は、たとえばこんな感じです。
- 自宅や実家の近くの一般墓(個別のお墓)
- 室内型・屋外型の納骨堂
- 永代供養墓・合祀墓
- 樹木葬
- 一時的に預けられる施設(改葬までの間だけ)
各タイプのメリット・デメリットをざっくり比較したいときは、
『お墓の種類と違い|公営・民営・寺院/墓石・納骨堂・樹木葬をやさしく比較』も参考になります。
それぞれメリット・デメリットが違いますが、
いちばん大事なのは、
「今だけでなく、10年後・20年後も家族にとって無理がないか?」
という視点です。
- 通いやすさ(アクセス)
- 費用(最初にかかるお金と、毎年かかるお金)
- お参りしやすさ(屋外/屋内・天候・高齢になっても行けるか)
あたりを、夫婦やきょうだいで一緒に考えてみてください。
「候補はなんとなく絞れたので、実際に見学して決めたい」という方は、
『お墓の見学ガイド|担当者に聞く15の質問と当日の持ち物』を見ながら進めると、
見学で聞くべきポイントをもれなく確認できます。

STEP4:役所で「改葬許可」の手続きをする
遺骨を別の場所へ移すには、「改葬許可」という役所の手続きが必要です。
基本の流れは、
- お墓がある市区町村の役所で、改葬許可申請書をもらう(またはダウンロード)
- 今のお墓の管理者に「埋蔵(埋葬)証明書」を書いてもらう
- 新しい納骨先の管理者に「受入証明書」を書いてもらう
- 必要書類をそろえて、役所に提出 → 「改葬許可証」が出る
といったイメージです。
自治体によって、
- どの課が窓口か
- 手数料がかかるかどうか
- 郵送でも手続きできるか
などが違うので、ホームページや電話で確認しておくとスムーズです。
STEP5:閉眼供養(魂抜き)をして、お墓から遺骨を取り出す
改葬許可証が出たら、今のお墓で閉眼供養(へいがんくよう/魂抜き)を行います。
一般的には、
- ご住職にお経をあげてもらう
- お墓の前で手を合わせ、これまでの供養に感謝を伝える
- 石材店が墓石を開けて、遺骨を取り出す
という流れです。
宗教的な意味がピンと来ないという方もいるかもしれませんが、
遺骨を動かす前の「けじめの儀式」として、
お寺や家族にとって大切にされている場面でもあります。
葬儀〜四十九日までの全体の流れや、納骨のタイミングを整理したいときは、
『訃報から四十九日までの流れ|いま不安でも大丈夫。やることを一緒に整えましょう』もあわせて読むと、
全体の段取りがイメージしやすくなります。
STEP6:墓石の撤去・整地工事をする
遺骨を取り出したあとは、お墓を撤去して更地に戻す工事を行います。
- 管理者に「指定の石材店」がいるかどうかを確認
- 見積もりに含まれている工事内容(墓石だけ/土台まで/周囲のブロックはどうするか 等)をチェック
- 可能なら、複数の石材店から説明を聞いて比較する
といった点を意識しておくと安心です。
「どこまで壊すか」「基礎のコンクリートまで撤去するか」などの条件は、
霊園や寺院ごとにルールが違うことも多いので、事前確認がとても大事です。
STEP7:新しい納骨先で納骨し、必要に応じて開眼供養をする
最後に、新しい納骨先で納骨をします。
- 改葬許可証を提出
- 納骨の立ち会い・お参り
- 一般墓の場合は、開眼供養(魂入れ)をお願いすることも
ここまで終われば、墓じまい・改葬の大きな流れは一段落です。
「ようやく、これから先のことを前向きに考えられるようになった」と
ほっとする方も多いタイミングです。
4. 墓じまい・改葬でよくあるトラブルと、その防ぎ方

次に、よくあるトラブルのパターンを先に知っておきましょう。
「こんなことが起こりやすいんだな」と知っておくだけでも、防ぎやすくなります。
① お寺とのトラブル(離檀料・連絡不足 など)
よくあるのは、こんなパターンです。
- 離檀料が思っていたより高額だった
- 事後報告になって、お寺との関係が悪くなってしまった
防ぎ方のポイント
- 早めに、丁寧に相談する(いきなり「やめます」ではなく、「相談させてください」のスタンスで)
- 金額に不安があれば、その場で即決しない
- 感情的になりそうなときは、日を改める/家族と一緒に話を聞きに行く
「葬儀やお寺とのやりとり全般が不安…」という場合は、
『喪主がやることまとめ|初めてでも慌てない挨拶・服装・香典の基本』を先に読んでおくと、
全体の流れがつかみやすくなります。
② 親族間のトラブル(合意形成が足りない)
- 「そんな大事なことを勝手に決めたのか」と怒られた
- 「先祖を大事にしていない」と責められてしまった
といった具合に、気持ちのすれ違いが火種になることもあります。
防ぎ方のポイント
- できるだけ早い段階で、「こういうことを考えている」と共有しておく
- 反対意見が出たときは、「なぜそう感じるのか」を聞き、
「じゃあどうすればみんな納得できそうか」を一緒に考える - 感情的になりやすい場合は、お寺のご住職や第三者(専門家)に同席してもらうのも一案
親に終活の話を切り出すのが難しいと感じるときは、
『親に終活の話を切り出すタイミングと伝え方のコツ』の会話例も、あわせて参考にしてみてください。
③ 石材店・業者とのトラブル(説明不足・費用)
- 工事内容がよく分からないまま契約してしまった
- 「それは見積もりに入っていません」と、後から追加費用を請求された
といった相談もあります。
防ぎ方のポイント
- 見積書の「内訳」をきちんと確認する
- 専門用語が出てきたら、その場で「これはどういう意味ですか?」と聞く
- できれば1社だけでなく、複数の業者から話を聞いて比較する
5. どこに相談すればいい?状況別の相談先まとめ
「困ったとき、どこに聞けばいいのか」を、ざっくり整理しておきます。
1)今のお墓の管理者(寺院・霊園)
一番最初に相談したい相手です。
- 墓じまい・改葬に関するルール
- 指定の石材店の有無
- 永代供養や合祀墓の有無
など、「そのお寺・霊園ならでは」の決まりごとは、ここが一番よく知っています。
2)市区町村の窓口(役所・保健所など)
改葬許可の手続きについての窓口です。
- 必要な書類
- 申請方法(本人/代理人/郵送可否)
- 手数料の有無
などを教えてもらえます。
ホームページを見ても分からないときは、
「改葬許可の手続きについて教えてください」と電話で聞けばOKです。
お墓や改葬のことだけでなく、役所・年金・保険・相続など
「亡くなったあとの手続き全体」を整理したいときは、
『親が亡くなったらする手続き一覧と期限|死亡後1年間のチェックリスト』もあわせてどうぞ。
3)石材店・霊園・永代供養墓の運営者
- 墓石の撤去工事の具体的な内容や費用
- 永代供養墓や納骨堂の詳細(費用・期間・ルール)
- 遺骨の一時預かりができるかどうか
といった、現場の具体的な話は、石材店や霊園の担当者が詳しいです。
「いきなり契約」ではなく、まずは見学や相談だけでも大丈夫です。
4)トラブル・法律まわり:弁護士・行政書士・公的な相談窓口
- 離檀料の金額にどうしても納得できない
- 親族間のトラブルが深刻化している
- すでに契約した内容に不安がある
といった場合には、弁護士・行政書士・消費生活センターなど、
法律やトラブルに詳しい第三者へ相談する選択肢もあります。
6. 今日できる「小さな一歩」
墓じまい・改葬は、一度動き出すと、
時間もお金もエネルギーも使う大きなテーマです。
だからこそ、いきなり全部を決めようとしなくて大丈夫です。
まずは、次のうち「どれか1つだけ」やってみてください。
- 親やきょうだいに、「今度、お墓のことで相談したい」とメッセージを送る
- 「改葬許可 +(お墓がある市区町村名)」で検索し、
役所の窓口と必要書類をメモしておく - 自宅から通いやすい霊園や納骨堂、永代供養墓を1つだけピックアップして、候補として控えておく
お墓だけでなく、終活全体をどこから始めればいいか迷うときは、
『終活は何から始める?今日からできる最初の3ステップ』で、
連絡先カード・薬メモ・お金の「所在だけ」メモという“超・最初の一歩”も確認してみてください。

将来のお墓や葬儀の希望を、家族と共有しておきたいときは、
『エンディングノートとは?親と始めるやさしい終活入門』を使って、
エンディングノートに「お墓・供養の希望」をメモしておくのもおすすめです。
お墓をどうするかを考えることは、
これから先も、家族みんなが無理なく続けられる供養の形を選ぶこと。
「どうしよう……」と一人で抱え込む時間を、
少しずつ「知る」「相談する」の時間に変えていけると、
気持ちも少し軽くなっていきます。


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