エンディングノートは、家族の迷いを減らすための“連絡帳”。遺言のような法的効力はない代わりに、今の気持ちや希望、連絡先や手がかりを自由に残せます。まずは 基本情報/医療の希望/連絡先/財産の大枠/保管場所 の5つからでOK。空欄があっても大丈夫、更新しながら育てていきましょう。
エンディングノートは「家族の迷いを減らす連絡帳」
急な入院、意思確認、重要書類の在りか探し……。いざという時に家族が迷わないよう、あなたの考えや“手がかり”をひとつにまとめておくのがエンディングノートです。
こんな場面で役立ちます

ケース1:救急搬送で“医療の希望”をすぐ伝える
- 実例:78歳の母が夜間に救急搬送。救急外来で延命や輸血の同意を家族に確認。
- ノートに書いてあったこと:かかりつけ医/服薬リスト/アレルギー(ペニシリン)/DNAR(心肺蘇生は望まない)/輸血は可/最初に連絡すべき人。
- 助かった点:同意書の判断がスムーズ、誤投薬を回避。医師への情報提供が3分で完了。
ケース2:保険金請求で“証券の在りか”が分かる
- 実例:父の入院中に医療保険の請求が必要に。証券が見当たらない。
- ノートに書いてあったこと:保険会社名とコールセンター番号/証券の保管場所(リビング棚の青いファイル)/実印の場所/代理で電話する際の“本人確認の合言葉”。
- 助かった点:家中の捜索が30分で終了。必要書類をその日に提出できた。
ケース3:支払い・サブスクの“止め忘れ”防止
- 実例:一人暮らしの叔母が長期入院。光熱費やネットの解約・一時停止が必要。
- ノートに書いてあったこと:電気/ガス/水道/携帯/ネット/新聞/有料動画の契約先名と問い合わせ窓口、お客様番号の“手がかり”(番号自体は後日でもOK)。
- 助かった点:解約漏れゼロ。口座からの自動引き落としを早期に止められた。
ケース4:葬儀の“雰囲気”と連絡順で迷わない
- 実例:家族葬か一般葬かで親族の意見が割れた。
- ノートに書いてあったこと:希望する規模(家族葬)/宗派・菩提寺/流したい音楽/使ってほしい写真フォルダの場所/最初に連絡してほしい友人リスト。
- 助かった点:争いなく決定。写真探しも5分で完了。
ケース5:ペットの“お世話”をすぐ引き継げる
- 実例:入院当日、室内猫の世話が必要。
- ノートに書いてあったこと:動物病院/ワクチン時期/餌の量と時間/トイレ砂の置き場。
- 助かった点:ペットホテル不要、猫のストレス軽減。
ケース6:スマホ・PCの“デジタル遺品”対応
- 実例:写真・連絡先・家計アプリのデータが本人のスマホ内に。
- ノートに書いてあったこと:所有端末リスト(iPhone/Windowsノート等)/バックアップ先(iCloud/Googleフォト)/ロック解除の“ヒント”(紙にパスワードは直書きせず、保管場所のヒントを書いておく)/主要クラウドの“入り口”URL。
- 助かった点:写真のバックアップを救出、支払いの確認が早い。
ミニ台本(病院での説明例)
「本人のノートに“心肺蘇生は望まない・輸血は可”とあります。かかりつけは◯◯内科、服薬はA・B・C。アレルギーはペニシリンです。家族連絡の優先は妻→長女→長男です。」
コツ:完璧を目指さない/空欄OK/“更新前提”。一気に仕上げず、まずは埋めやすい欄から。
書けること・書けないこと(遺言との違い)

エンディングノートは“願い・記録”であり、法的効力はありません。一方、相続の取り決めを確実にしたい場合は遺言(特に公正証書遺言)の検討が必要です。両者は役割が補完関係にあります。
| 比較項目 | エンディングノート | 遺言(公正証書 等) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 希望・情報の共有、実務の指針 | 財産分配など法的な指示 |
| 法的効力 | なし(家族への“お願い”) | あり(要件を満たせば有効) |
| 柔軟さ | 自由に書けて随時更新可 | 形式要件あり、変更は手間 |
| 主な内容 | 医療の希望/連絡先/保管場所/葬儀の考え 等 | 相続割合/遺贈/遺言執行者指定 等 |
使い分け:相続内容は遺言で“確実に”。
その上で、日常運用や思いの共有はエンディングノートで“柔らかく”。
まず書くのはこの5項目(15分でOK)
初回は、以下の5つだけで十分。テンプレをそのまま写すだけでも立派な一歩です。
- 基本情報
例:氏名/生年月日/血液型/かかりつけ医・薬局/持病・アレルギー- テンプレ:
- かかりつけ医:____(TEL:____)
- 服用中の薬:____
- テンプレ:
- 医療の希望(骨子)
例:延命治療の考え、DNAR(心肺蘇生を望まない)の希望の有無、臓器提供の意思- テンプレ:
- 延命治療:〔望む/できるだけ控える/医師と家族に一任〕
- 臓器提供:〔可/不可/検討中〕
- テンプレ:
- 連絡先(キーパーソン)
例:家族・親族・親友・ご近所の方・勤務先、各1名ずつでも良い- テンプレ:
- 最初に連絡:____(続いて:____)
- テンプレ:
- 財産の“大枠”
例:金融機関名と“支店だけ”でもOK(口座番号は後日で可)- テンプレ:
- 銀行:____支店/ネット銀行:____
- 保険会社:____(証券はどこに?→下記参照)
- テンプレ:
- 保管場所
例:実印/通帳/マイナンバーカード/保険証券/土地の権利書- テンプレ:
- 実印:____に保管
- 重要書類ファイル:____の引き出し
- テンプレ:
ポイント:細部が空欄でも、“手がかり”があるだけで十分に価値があります。
紙?アプリ?——はじめは紙、必要に応じてアプリ併用

- 紙のメリット:取り回しが簡単/心理的ハードルが低い/家族と並んで書きやすい。
- 紙の注意点:紛失・劣化リスク。保管場所と“所在を家族に軽く知らせる”工夫を。
- アプリのメリット:バックアップ・共有・検索がしやすい/更新履歴が残る。
- アプリの注意点:サービス仕様の変更やログイン忘れ。紙で“要点”を持ち、アプリで補完が安心。
おすすめは 「紙で7割」+「アプリで共有とバックアップ」。ご家庭に合う形でハイブリッド運用に。
・詳しくは:紙のエンディングノートおすすめ比較
・比較ページ:エンディングノートアプリ比較(家族共有・バックアップ)
親と一緒に始める進め方

関連記事:親に終活の話を切り出すタイミングと伝え方のコツ
はじめの一歩は“言い方”で決まります。重くならない、前向きな声かけを用意しておきましょう。
例:きっかけの言葉
- 「もしもの連絡先、私が分かるようにメモしておこうと思って」
- 「病院やお薬のこと、私にも共有しておくと安心だよね」
- 「まずは“保管場所のメモ”だけ一緒に作らない?」
進め方のコツ
- テーマを絞る:はじめは“連絡先だけ”“保管場所だけ”。
- 作業を小分け:10〜15分で切り上げる。続きはまた今度。
- 書けない部分は空欄で良い:後日、通院帰りや書類整理ついでに埋める。
保管・更新のコツ(なくさない仕組み)
- 保管は二重化:原本は自宅の定位置+コピーを家族のファイルに。
- “所在メモ”を家族に:場所・連絡手順だけを簡易メモで渡す(中身は見せなくてもOK)。
- 更新日は目立つ位置に:最終更新日を表紙や1ページ目に。
- 更新リズム:
- 通院日の前後/誕生日/年末の書類整理のタイミングなどに“見直し5分”。
よくある質問(FAQ)
Q. 法的に効力はありますか?
A. ありません。相続等を確実にしたい場合は遺言の作成を検討しましょう。ノートは“願い・記録”として役立ちます。
Q. 子どもに全部見せるべき?
A. 何をどこまで共有するかは家庭ごとに調整でOK。最初は連絡先と保管場所の共有がおすすめ。
Q. 何歳から必要?
A. 年齢は関係ありません。持病や単身赴任、単身世帯など“連絡や判断の負担が偏りやすい状況”では特に有効です。
Q. 途中でやめても大丈夫?
A. 大丈夫です。空欄があっても“手がかり”は残ります。気が向いた時に続きを。
次の一歩
- 初めての1冊選び:紙のエンディングノートおすすめ比較|最初の一冊を迷わず選ぶ
- アプリ併用派に:エンディングノートアプリ比較|家族共有とバックアップで“迷子ゼロ”
- 書き方の基本:エンディングノートを始めよう(書き方と続け方)
合わせて読む:親に終活の話を切り出すタイミングと伝え方のコツ
まとめ
- エンディングノートは家族の迷いを減らすための連絡帳。
- 5項目から15分で着手し、空欄OK・更新前提で“育てる”。
- 紙+アプリのハイブリッドで、なくさず・共有しやすい形に。