「終活って親世代がやるものでしょ?」
「自分にはまだ早い気がする…」
そう感じている40代はとても多いと思います。
ただ、心のどこかで、
- もしものとき、家族に迷惑をかけたくない
- 自分のことを、そろそろ整理しておきたい
と気になり始めているのも、40代ならではの感覚ではないでしょうか。
結論から言うと、40代でやるべきなのは、いわゆる「重たい終活」ではありません。
生活の延長線上でできる、ゆるくて現実的な“ライト終活”で十分です。
この記事では、ムリなく1年で取り組めるライト終活の流れを、3か月ごとのステップに分けてご紹介します。
「終活そのものの全体像も、合わせて知っておきたい」という方は、こちらも参考になります。
→ 自分の終活|今から備える10の準備【チェックリスト付き】
40代で“ライト終活”を始める意味
まだ元気だからこそ、落ち着いて決められる
50代後半〜60代になってくると、
- 親の介護や病気の心配
- 自分自身の体調や持病の不安
が現実味を帯びてきます。
忙しさも増して、「落ち着いて考える時間」が取りづらくなりがちです。
40代は、体力も気力もまだ十分ある時期。
だからこそ、将来について
- どんなふうに暮らしていきたいか
- もしものとき、どうしてほしいか
を、冷静な頭で考えておける“ボーナスタイム”でもあります。
親のことと、自分のことを同時に考えやすい時期
40代になると、
- 親が70代〜80代に入り、介護や病気の不安が見えてくる
- 自分の家庭では、教育費や住宅ローン、老後資金が気になってくる
というように、「家族のお金」と「これからの暮らし」をまとめて考える場面が増えてきます。
自分の終活を少しずつ進めておくと、
- 親に終活の話を振りやすくなる
- 家計や資産の全体像が見えやすくなる
といったメリットも生まれます。
完成させるより、“着手しておく”ことが大事
終活は、一度で完璧に仕上げるものではありません。
仕事・家族・健康状態などが変われば、その都度アップデートしていくものです。
40代の終活で目指したいのは、
- 完成度100%の立派なエンディングノートではなく
- 「たたき台でもいいから、ひとつ形にしておく」こと
です。
この“たたき台”があるかどうかで、
もしものとき、家族の負担は大きく変わります。
1年間で進めるライト終活の全体像
ここからは、1年で無理なく進めるためのイメージをお伝えします。
- 1〜3ヶ月目:頭と情報の整理
- 4〜6ヶ月目:お金と契約の見える化
- 7〜9ヶ月目:デジタル・モノ・人間関係を整える
- 10〜12ヶ月目:まとめて、家族に「存在」を伝える
「毎月必ず何かをやる」というよりも、
3か月ごとにテーマを決めて、できる範囲で手をつけてみるくらいの感覚で大丈夫です。
【1〜3ヶ月目】まずは「頭の中の棚卸し」
最初の3か月は、とにかく書き出してみることが目的です。
紙のノートでも、スマホのメモアプリでも、やりやすい方法を選んでOKです。

自分の基本情報をまとめる
最初のステップは、とてもシンプルです。
- 氏名・生年月日・住所
- 家族構成(配偶者・子ども・親・きょうだい)
- 勤務先名・部署・連絡先
- 持病・通院している病院やクリニック
普段、当たり前だと思っていることですが、
いざというとき家族が「これ、どうなってるんだろう?」と迷いやすい部分でもあります。
完璧に整理しようとせず、
「思いついたことから書いていく」くらいで十分です。
いざというときの連絡先リストを作る
次に、もしものときに連絡してほしい人のリストを作ります。
- 家族・親族(よく連絡を取る人)
- 親しい友人
- 職場の上司・同僚
- かかりつけ医・通院先
- 保険会社・銀行・証券会社など、担当者がいる場合はその人
名前だけでなく、
「どんな関係の人か(例:高校時代の友人/前職の上司など)」も書いておくと、
家族が見たときに分かりやすくなります。
自分の「価値観メモ」を残しておく
終活というと、いきなり
- 延命治療をどうするか
- 葬儀はどうしたいか
といった具体的な内容を決めるイメージがありますが、
40代の段階では、そこまで決めなくても大丈夫です。
まずは、こんなことをメモしておきます。
- これからの人生で大事にしたいこと
- 最期を迎えるとき、どんなふうに過ごしていたいか
- 長い入院や介護が必要になったとき、何を一番優先したいか(痛みをとる/できるだけ自宅で過ごす、など)
ここに書いた内容は、あとからいくらでも書き換えて構いません。
「いまの自分は、こう考えている」というスナップショットを残しておくイメージです。
「1年分の計画は、まだちょっとハードルが高いかも…」と感じる方は、
もっと小さな一歩から始める方法もあります。
→ 終活は何から始める?今日からできる最初の3ステップ
【4〜6ヶ月目】お金と契約を“パッと見える化”
次の3か月は、お金や契約ごとの「ありか」を把握する期間です。
ここも、細かく完璧に書き出す必要はありません。

預貯金・証券・保険の「所在」を書き出す
残高や商品名まで細かく書くのではなく、
- どの金融機関に
- どんな種類の口座や契約があるか
が分かるようにしておきます。
たとえば、
- ○○銀行/普通預金
- △△ネット銀行/普通預金
- □□証券/つみたてNISA
- 生命保険(□□生命/終身保険)
- 医療保険(××生命)
- iDeCo(◇◇証券 経由)
といった具合です。
「昔入った保険があった気がする」「たぶん前の会社の企業型DCが残っている」など、
あいまいなものも、とりあえずメモしておきます。
毎月の固定費を書き出す
次に、毎月かかっている支出をざっくりまとめます。
- 住宅ローン・家賃
- 電気・ガス・水道
- スマホ・インターネット
- 各種サブスク(動画・音楽・クラウド・アプリなど)
- 各種保険料
ここでも、最初からすべてを埋める必要はありません。
- 引き落とし口座の通帳
- クレジットカードの明細
を見ながら、数ヶ月かけて少しずつ追加していくくらいで大丈夫です。
重要書類の「住所」を決める
中身を整理するのは後回しでかまいません。
まずは、家族が探すときに困らないよう、置き場所をまとめておくことが目的です。
- 保険証券 → 引き出しAのファイル
- 住宅ローン関係 → 本棚Bのファイル
- 不動産の権利書・固定資産税の納税通知書 → 金庫 or 収納ボックス
- 年金関連の書類 → ラベル付きファイル
バラバラに散らばっているものを、
ひとつの場所に集めてラベルを貼るだけでも、大きな前進です。
【7〜9ヶ月目】デジタル・モノ・人間関係を少し整える
この3か月は、日々の生活により近い部分を、できる範囲で整えていきます。

デジタル情報をゆるく整理する
40代の終活で欠かせないのが、スマホやPCの中身です。
- スマホのロック解除方法
- よく使うサービス(LINE・SNS・メール・ネット銀行 など)の一覧
- パスワード管理の方法(管理アプリを使っている/ノートに書いている など)
ここで、すべてのID・パスワードを書き残す必要はありません。
大切なのは、
- どの方法で管理しているか
- 何かあったときは、どこを見ればヒントがあるのか
が分かるようにしておくことです。
「絶対に見られたくないもの」「消しておきたいもの」がある場合は、
このタイミングで整理してしまうのも一つの選択です。
モノを“全部捨てる”のではなく、優先ゾーンから
40代で大掛かりな断捨離をする必要はありません。
それよりも、
- 将来、家族が困りそうな場所
- 自分でも「把握しづらいな」と感じている場所
を優先して整えてみましょう。
たとえば、
- 写真:残したいアルバム・データと、そうでもないものをざっくり分ける
- 取扱説明書:1つのファイルにまとめ、もう使っていない家電のものは処分
- 趣味のコレクション:本当に残したいものだけを選び、残りは売却・譲るなども含めて検討
少し手をつけるだけでも、「いつかやらなきゃ…」というモヤモヤが軽くなります。
感謝と「もしものときのお願い」を少しだけ言葉にする
ライト終活の一つのテーマは、人との関係を整えていくことでもあります。
- 普段あまり言えていない「ありがとう」を、改めて伝えてみる
- ふとした会話の中で、「もしものとき、こうしてくれたら嬉しい」という気持ちを少しだけ共有してみる
たとえば、
- 強い延命は望まないと思っている
- できれば自宅で過ごしたい
- 大げさな葬儀より、家族で静かに見送ってもらえたら嬉しい
こうした本音を、少しずつ話せる範囲で伝えていくことで、
家族にとっても心の準備がしやすくなります。
【10〜12ヶ月目】まとめて、家族に「存在」を伝える
最後の3か月は、ここまで書いてきたものをひとつの形にまとめる時間です。
情報を「1冊(1ファイル)」に集約する
ここまでのメモやリストを、
- 市販やオリジナルのエンディングノート
- 自作の「私の情報ファイル」
- デジタルノート(PDFやクラウド)
のいずれかにまとめます。
中身の例は、
- 自分の基本情報
- いざというときの連絡先リスト
- 金融機関・保険・年金の一覧
- 重要書類の保管場所
- デジタル情報の管理方法のメモ
- 自分の価値観や、医療・介護・最期に関する希望メモ
などです。
「エンディングノートそのものについて知りたい」「どこまで書くものなの?」という場合は、こちらも参考になります。
→ エンディングノートとは?目的・書く内容・遺言との違いをやさしく解説
信頼できる人に「そういうノートがある」と伝える

中身をすべて見せる必要はありません。
ただし、存在だけは誰かに伝えておくことをおすすめします。
- 配偶者
- きょうだい
- 信頼できる友人
などに、
「もし私に何かあったら、このノート(ファイル)を見てね。
まだ完璧じゃないけれど、大事なことはここにまとめてあるから。」
と一言だけ伝えておくだけでも、安心感が違ってきます。
ここまで頑張った自分を、ちゃんと認める
終活は、誰かに見せたり、評価されたりするものではありません。
だからこそ、自分で自分をねぎらうことがとても大切です。
- この1年でできたことを書き出してみる
- 「ここは来年以降に整えていこう」と、あえて“保留リスト”を作る
こうして区切りをつけることで、
終活が「終わりのない不安」ではなく、「少しずつ育てていく安心材料」に変わっていきます。
おわりに:40代の終活は「小さな一歩」で十分
40代での終活は、
「死ぬ準備をする」というより、
- 家族が困らないように情報を整理する
- 自分の気持ちを少し言葉にしてみる
そんな、生活に寄り添ったお片づけに近いものです。
今日できることは、難しいことではありません。
- スマホのメモに、連絡してほしい人を2〜3人書いてみる
- 今月届いた明細書を、1枚だけファイルに入れてみる
この程度からでも、立派な「ライト終活の第一歩」です。
「ちゃんとやらなきゃ」と力を入れすぎず、
できることを、できるタイミングで、少しずつ進めていきましょう。


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