もしかして今、
- 「あのとき、もっと優しくしてあげればよかった」
- 「あの検査を勧めていれば、まだ生きていたかもしれない」
- 「仕事ばかり優先して、そばにいてあげられなかった」
そんな“もしも”が、頭の中で何度も何度もリピートされていませんか。
まず最初に、はっきりお伝えさせてください。
親を亡くしたあとに湧き上がる後悔や罪悪感は、
とても自然な「グリーフ(深い悲しみ)」の一部です。
「そんなふうに思う自分はダメだ」「早く立ち直らなきゃ」と急いでしまいがちですが、
今は、“がんばって前向きになること”よりも、「自分の心を守ること」をいちばんにしてほしいタイミングです。
このページでは、
- 親を見送ったあと、心と体には何が起きているのか
- 後悔や罪悪感と、どう付き合っていけばいいのか
- つらさが長く続くとき、どこに頼っていいのか
- 親を見送った経験を、「自分のこれから」につなげるヒント
を、いっしょに整理していきます。
葬儀や手続きなど、「やることの全体像」を整理したいときは
死亡直後〜49日までの流れをまとめた
訃報から四十九日までの流れ|いま不安でも大丈夫。やることを3つに絞ればOKです
も、あとで落ち着いたときにそっと開いてみてくださいね。
親を見送ったあと、心と体には何が起きているのか

結論から言うと、
今のあなたは「いつも通り」でいられるほうが不自然、というくらい大きな出来事の中にいます。
大切な人との死別は、心と体にとても強いストレスを与える出来事だと言われています。
心にあらわれやすい変化
たとえば、こんな気持ちの揺れが出やすくなります。
- 深い悲しみ・虚しさ(何をしても楽しくない、世界が色あせて見える)
- 後悔・罪悪感(「もっとこうすればよかった」が止まらない)
- 怒り(医師・家族・自分・状況・「運命」への怒り)
- 不安・焦り(これからの生活や仕事、自分の老後への不安)
- 何も感じないような感覚(涙が出ない/実感がない)
「悲しい」という感情がそのまま出る人もいれば、
「怒り」や「何も感じない」という形で出る人もいます。
どれも、“間違った反応”ではありません。
心が現実に追いつこうとしている、途中のプロセスだと考えてもらえたらと思います。
体や生活リズムにも影響が出やすい
心の揺れと一緒に、体にもこんな変化が出やすくなります。
- 食欲がわかない/逆に食べすぎてしまう
- 眠れない/眠っても何度も目が覚める
- 疲れやすい・だるい
- 集中できない・物忘れが増えたように感じる
「気合いが足りない」のではなく、
それだけ大きな出来事に、心と体が全力で対応している最中なんだ…と、少しだけ自分をゆるめてあげてくださいね。
後悔や罪悪感と付き合うための3つの視点
ここからは、特につらくなりやすい
「後悔」「自分を責める気持ち」との付き合い方を、3つの視点から整理してみます。
1. 「あのときの自分」は、そのときの条件の中でベストを尽くしていた
親を見送ったあと、多くの人が思い返してしまうのが、
「あのとき、こうしていれば…」
という“もしも”です。
でも、その「もしも」は、
結果を知っている“今の自分”だから思いつくことでもあります。
- 当時の自分には、今とは違う「限られた情報」しかなかった
- 仕事・家族・お金・時間…いろいろな事情の中で、選べる選択肢も限られていた
- 親自身の意向(治療や延命を望まなかった など)もあった
こうした条件を全部ひっくるめたうえで、
そのときの自分なりに「いちばんましな選択」をしていた可能性は、とても高いのです。
完璧な看取りができた人なんて、ほとんどいません。
もしいるとしても、それは“あとから美化された物語”かもしれません。
「あのときの自分は、あのときなりにがんばっていた」
今はまだそう思えなくても、
この一文だけ、そっと心のすみに置いておいてもらえたらうれしいです。
2. 「できなかったこと」だけでなく、「できたこと」にも光を当てる

後悔が強いとき、心のスポットライトは
どうしても 「やれなかったこと」「足りなかったこと」だけ に向きがちです。
- もっと会いに行けばよかった
- もっと優しい言葉をかければよかった
- あのとき怒鳴らなければよかった
もちろん、そう感じるのは自然なことです。
ただ一度、意識的にライトの向きを変えて、
「自分がやったこと」「一緒に過ごせた時間」にも光を当ててみて もらえたらと思います。
ノートやスマホのメモに、こんな問いかけを書いてみてください。
- 親のために、これまでどんな行動・手続きをしてきたか?
- 介護や通院のなかで、「あれはよくがんばったな」と思えることは?
- 元気なころから、一緒にどんな時間を過ごしてきたか?
それは、すごいエピソードでなくて大丈夫です。
- 病院に付き添った
- 好きそうなおかずを差し入れた
- 会えないときに電話やLINEをした
- 遠くから心配していた
そんな一つひとつを、「できたことリスト」として書き足していくことで、
「自分は何もしてこなかった」という思い込みを、少しずつゆるめていくことができます。
3. ひとりで抱えこまない——感情を外に出す場所を持つ
後悔や罪悪感が重いときほど、
- こんなことで悩んでいる自分が情けない
- 誰かに話したら迷惑かもしれない
と感じて、気持ちを閉じ込めてしまいがちです。
でも、悲しみやつらさを
- 言葉にしてみる
- 誰かに聞いてもらう
- 書き出して外に出す
ことは、心が少しずつ回復していくために、とても大切なプロセスだと言われています。
たとえば、こんな場所があります。
- 家族やきょうだい、信頼できる友人
- 同じ経験をした人同士の「遺族会」「分かち合いの会」
- 心療内科やカウンセリングなどの専門機関
- 自治体の相談窓口や、民間の電話相談 など
「プロに相談なんて大げさかな…」と思うかもしれませんが、
大切な人を見送るというのは、それだけ大きな出来事です。
風邪をひいたら内科に行くように、
心がくたびれたら専門家に相談してもいい。
そのくらいラフな感覚でいても、大丈夫です。
今日からできる、心と体の「セルフケア」
ここからは、
今日からできる、心と体へのちいさなケアをいくつかご紹介します。
全部やる必要はありません。
「これならできそうかも」と思えたものを、ひとつだけ選んでもらえれば十分です。
1. 生活リズムの「土台」を、完璧でなく“最低ライン”で守る
- 朝、同じ時間にカーテンを開けて光を浴びる
- 1日1回、数分でも外に出て歩く
- コンビニ食でもいいので、1日2回は何かを口に入れる
目指したいのは、完璧な生活ではなく「これだけはゼロにしない」ラインです。
「ちゃんとしなきゃ」と自分を追い込むのではなく、
命のガソリンを、細くてもいいから入れ続ける
そんなイメージで、ハードルを思い切り下げてあげてください。
2. 気持ちを「言葉」にして外に出す

- ノートに、浮かんできた気持ちをそのまま書く
(「悔しい」「さみしい」「腹が立つ」など、きれいな言葉でなくてOK) - 誰かに話す代わりに、「親への手紙」を書いてみる
- スマホのメモに、出てきた言葉を短くメモする
大事なのは、
正しい言葉・前向きな言葉にしようとしないこと。
心の中にあるものを、そのまま出してあげるだけで十分です。
3. 思い出や遺品との距離感は、「自分のペース」で決めていい
- すぐには片づけられなくてもいい
- 写真を見られない時期があってもいい
- 逆に、写真や思い出話が心の支えになる人もいる
近づきすぎるのも、遠ざけすぎるのもつらいものです。
周りと比べず、「今の自分がいちばん楽な距離感」を少しずつ探していければ大丈夫です。
手続きや片づけについては、
「何から手をつければいいのか」を一覧にした
親が亡くなったらする手続き一覧と期限|死亡後1年間のチェックリスト
を見ながら、「今日はこの1つだけ」と決めて進めていく方法もあります。
4. 「小さな楽しみ」を、自分に許してあげる
- 好きなコーヒーやお茶を、一杯だけ丁寧に淹れる
- 好きなドラマを、1話だけ見る
- 散歩のついでに、好きな景色を見に行く
悲しみの中で笑ったり、ほっとする瞬間があっても、
それは「親を忘れてしまった」ということではありません。
むしろ親は、
あなたがこれからの人生で、時々はちゃんと笑って過ごせることを願っていたのではないでしょうか。
「長くつらい」「日常生活が成り立たない」と感じたら
悲しみがどのくらい続くか・どう揺れていくかには、大きな個人差があります。
ただ、
- 何ヶ月も、ほとんど眠れない・食べられない
- 仕事や家事が、ほとんど手につかない
- 「消えてしまいたい」「いなくなりたい」といった考えが頭から離れない
こうした状態が続いているときは、
ひとりだけで抱え続けずに、専門家の力も借りてほしいサインです。
相談できる場所の例:
- 心療内科・精神科・メンタルクリニック
- グリーフケア外来・悲嘆外来
- 自治体のこころの相談窓口
- グリーフケアの民間団体や遺族会 など
「そこまで重症じゃないのに、行っていいのかな?」と思うかもしれませんが、
“今の自分にとってしんどい”と感じているなら、相談していい と考えてもらえたらと思います。
親を見送った経験を、「自分のこれから」を整える力に変えていく

今はまだ想像しづらいかもしれませんが、
親を見送った経験は、時間をかけて少しずつ、
「自分はこれからどう生きていきたいか」
を考えるきっかけにもなっていきます。
- 自分は、どんな最期を迎えたいか
- 子どもや周りの人に、どんな負担をかけたくないか
- お金や住まい、仕事を、どう整えていきたいか
後悔や罪悪感が、今よりほんの少しだけ落ち着いてきたら、
そのタイミングで、自分自身の「これから」を整える時間を取ってみるのもひとつです。
そんなときは、
自分の終活の全体像をまとめた
自分の終活|今から備える10の準備【チェックリスト付き】
も、参考になるかもしれません。
親のことを考えた経験を、自分の人生を整える力に少しずつ変えていく。
それもまた、ひとつの“供養”の形だと、私は思っています。
さいごに:今のあなたに、そっと伝えたいこと & 今日の一歩
ここまで読んでくださったあなたは、
きっと今、とても疲れていて、でも真面目に向き合おうとしている人だと思います。
改めて、このページのポイントをぎゅっとまとめると——
- 親を見送ったあとの後悔や罪悪感は、とても自然な反応
- 「あのときの自分」も、そのときの条件の中でベストを尽くしていた可能性が高い
- 「できなかったこと」だけでなく、「できたこと」にも目を向けてあげる
- つらさは、ひとりで抱え込まずに、言葉にして誰かと分かち合っていい
- 日常生活が大きく崩れているなら、専門家に頼っていいサイン
そして、今日の一歩として、こんなことをおすすめさせてください。
ノートやスマホのメモに
「あのときの自分は、あのときなりにがんばっていた」
と、一行だけ書いてみること。
たった一行ですが、
その言葉を自分に向けてあげることが、
後悔と罪悪感から、ほんの少しだけ距離を取るきっかけになるはずです。


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