親の介護が続くと、「このままで大丈夫かな」「ちょっとしんどくなってきたな」と感じる瞬間が増えてきます。
とはいえ、いざ「デイサービス」や「ショートステイ」という言葉を目にしても、
- まだ早い気がする
- 親に申し訳ない
- どうやって使い始めればいいのか分からない
と、手が止まってしまう人も多いはずです。
でも本当は、限界まで一人で抱え込んでからではなく、
「そろそろしんどいかも」と感じ始めたタイミングで外の手を借りたほうが、親にも、あなた自身にもプラスになることがたくさんあります。
ここでは、デイサービス・ショートステイの基本から、利用の流れ、親が嫌がるときの声かけまで、「家族目線」で整理してみます。
デイサービス・ショートステイって、そもそも何をしてくれる場所?
デイサービス(通所介護)のイメージ
デイサービスは、日中だけ施設に通って、食事や入浴、リハビリ、レクリエーションなどを受けるサービスです。
- 朝〜夕方までの「日帰り」
- 自宅まで送迎してくれるところが多い
- 入浴介助や機能訓練(リハビリ)を受けられる
- 体操やゲームなどのレクリエーションで、体と頭を動かす
家族側から見ると、
「日中の数時間〜1日、安心して任せられる時間ができるサービス」と考えるとイメージしやすいかもしれません。
「そもそも、在宅で続けるのがいいのか、施設にお願いしたほうがいいのか分からない…」という場合は、
在宅介護か施設か迷ったら|後悔しないための考え方
も合わせて読んでおくと、全体の方向性が整理しやすくなります。
ショートステイ(短期入所生活介護など)のイメージ
ショートステイは、数日〜数週間、施設に“お泊まり”で預かってもらうサービスです。
- 1泊2日〜1〜2週間程度まで、期間はさまざま
- 介護する人の出張・旅行・体調不良のときなど、「どうしても家で見られない」場面で使いやすい
- 将来の施設入所を見据えた「お試し入所」として使われることも多い
家族側から見ると、
「泊まりで安心して任せられるから、まとまった休息や用事の時間がとれるサービス」と言えます。
こんな状態になってきたら、そろそろ検討していいサイン

「まだ自分でなんとかできているから…」と頑張ってしまう人はとても多いのですが、
実は早めに検討していいタイミングの目安があります。
介護する側のサイン
- 夜中のトイレや見守りで、睡眠時間が明らかに減ってきた
- 入浴介助や移乗(ベッド⇔車いす)が、体力的にきつくなってきた
- 「この状態であと1年続けるのは無理かも」と、心のどこかで感じ始めている
- イライラして親にきつく当たってしまい、あとから自己嫌悪になることが増えた
親側のサイン
- 日中ほとんど横になっていて、生活リズムが乱れている
- 外に出る機会が減り、人と話す時間も減ってきた
- 認知症の症状が出始め、「一人にしておくのが不安」と感じる場面が増えてきた
こうしたサインが見え始めたら、
「限界になったら考えよう」ではなく、「今のうちから少しずつ準備しておこう」くらいの気持ちで動き始めるのがおすすめです。
家族だけで抱え込むと、どこで無理が出やすいのか
介護は、どうしても「家族だから」という気持ちで頑張りすぎてしまいがちです。
でも、家族だけで抱え込んでいると、こんなことが起きやすくなります。
- 睡眠不足・腰痛・持病の悪化など、身体の負担がじわじわ溜まる
- 仕事との両立が難しくなり、休職・退職を視野に入れざるを得なくなる
- イライラして親にきつく当たり、あとで「なんであんな言い方を…」と自分を責めてしまう
- 「自分がやらなきゃ」と思うあまり、誰にも相談できなくなる
一方で、デイサービスやショートステイを上手に使うと、こんな変化が生まれます。
- 決まった曜日・時間に、自分の心と体を休める“余白”ができる
- 親の状態をプロに見てもらい、変化に気づきやすくなる
- 親にも、家族以外の人と関わる時間ができて、表情や気分が変わることがある
- いざというときに相談できる相手・施設の候補が増える
仕事との両立が特に不安な方は、
仕事と介護の両立が不安なあなたへ|会社への伝え方&介護休業・介護休暇の基本
も一緒に読んでおくと、「働き方」と「制度」のイメージがつきやすくなります。
「全部自分でやる介護」から、
「家族+専門職のチームで支える介護」に切り替えていくイメージを持てると、少し気持ちがラクになるかもしれません。
利用を始めるまでの流れ
ここからは、「実際に使うとしたらどう動けばいいの?」という視点で、流れを整理してみます。
1. まずはケアマネージャーに相談

すでに要介護認定があり、ケアマネージャー(ケアマネ)がついている場合は、
「デイサービス(ショートステイ)を検討したい」とそのまま相談するのが一番の近道です。
伝えておくとよいことは、
- 親の状態(身体・認知・気分の様子)
- あなたの状況(仕事・きょうだい・同居か別居か)
- どれくらいの頻度・時間帯なら助かりそうか
例:
「週に2回くらい、日中だけでも通ってもらえたら、仕事と両立しやすくなりそうです」
「月1回、2泊3日でショートステイを利用できたら、休息と用事をまとめてこなせそうです」
ケアマネがいない場合は、
- 地域包括支援センター
- 市区町村の介護保険窓口
に「親の介護でデイサービスを考えている」と相談すると、要介護認定の流れや利用までの道筋を教えてもらえます。
2. 候補の事業所をいくつか挙げてもらう
ケアマネと話しながら、
- 自宅からの距離
- サービス内容(リハビリ重視か、レクリエーションが多いか)
- 認知症の方の受け入れ体制
- 医療的ケアが必要な場合の対応
といった条件を伝え、2〜3か所ほど候補を出してもらうと比較しやすくなります。
「将来的には施設入所も視野に入れている」という場合は、
親の介護施設の種類と選び方|特養・老健・有料老人ホーム・サ高住を「家族目線」で比較
を読んでおくと、ショートステイ先や今後の候補を考えるときの軸が分かりやすくなります。
3. 見学でチェックしたいポイント
見学は、パンフレットだけでは分からない雰囲気や、
「親に合うかどうか」を感じ取る大事な機会です。
見ておきたいところ
- 利用者さんたちの表情
→ 無理に盛り上げている感じではなく、自然な笑顔や落ち着いた様子があるか - スタッフの声かけ
→ 名前を呼びながら話しているか、一方的な指示になっていないか - トイレ・浴室・フロアの清潔感
- 1日の流れ(入浴の時間帯・レクや体操の頻度・休憩時間など)
- 送迎エリア・おおよその送迎時間
聞いておきたい質問例
- 「認知症の方はどのくらい利用されていますか?」
- 「静かに過ごしたいタイプの方には、どんな過ごし方を提案されていますか?」
- 「体調が悪い日や本人が気が進まない日は、どのように対応されますか?」
4. お試し利用から始めて、合うかどうかを一緒に確かめる
いきなり本格利用にするのではなく、1日体験やお試し利用ができるところも多くあります。
- まずは週1回・半日だけなど、ハードルを低くしてスタート
- 親の様子や感想を聞きながら、少しずつ回数や時間を増やしていく
- 合わなければ別の事業所を検討する、という選択肢もある
「合うかどうか分からないからやめておく」ではなく、
「合うかどうか確かめるために、まず1回行ってみる」くらいの気楽さで考えてみるのもひとつです。
親が嫌がるときの声かけの工夫
「デイサービスに行こう」「ショートステイを使おう」と話すと、
「そんなところ行きたくない」「まだ元気だからいらない」と言われてしまうこともあります。
言い方しだいで、受け止められ方は変わる
避けたほうがいい言い方としては、例えばこんなものがあります。
- 「介護が大変だから、行ってくれないと困る」
- 「迷惑かけてるんだから、少しは協力して」
- 「ボケ防止になるから行こうよ」
こうした言い方は、
親が「迷惑をかけている存在」「できない人」と扱われたように感じ、反発が強くなりがちです。
伝え方のポイント

少しだけ視点を変えると、受け止められ方が変わることがあります。
主語を“親”ではなく“自分”にする
- 「私がちょっと疲れてきちゃって…週に1回だけでも通ってくれたら、私もがんばれる気がするんだ」
親にとってのメリットも具体的に伝える
- 「お風呂を安全に手伝ってもらえるから、お母さんも楽だと思うし、私も安心できる」
- 「同年代の人もいるから、昔の話をしたりできるかもよ」
“ずっと”ではなく“1回だけ”から提案する
- 「まず1回だけ、お試しで行ってみて、嫌だったらやめよう」
家族以外の人に説明してもらうという選択肢
どうしても家族の言葉だと聞き入れてもらえない場合は、
- ケアマネージャー
- 主治医や看護師
- 地域包括支援センターの職員
など、第三者から説明してもらうことでスムーズにいくケースもあります。
費用はどのくらいかかる?
ここでは、細かい金額ではなく「感覚の目安」だけ押さえておきます。
デイサービスの自己負担のイメージ
- 要介護度や利用時間、加算などで変動はありますが、
介護保険適用後の自己負担は、1回あたり数百〜数千円程度になることが多いです。 - これに、食事代やおやつ代などが別途かかるイメージです。
ショートステイの自己負担のイメージ
- 宿泊費・食費・日常生活費なども加わるため、
1泊あたりで見るとデイサービスより高くなることが一般的です。
正確な金額は、
- ケアマネに「月○回利用した場合の自己負担額」を確認する
- 事業所からもらう料金表で、1回あたり・1か月あたりの目安を見せてもらう
といった方法で、具体的なイメージを持つことができます。
仕事と介護の両立を支える「デイ+ショート」の組み合わせ例
実際には、デイサービスだけ、ショートステイだけというよりも、
組み合わせて使うことで、暮らし全体のバランスを取りやすくなります。
例1:フルタイム勤務 × 在宅介護
- 平日:週2〜3回デイサービスを利用(送迎あり)
- 月1回:金曜〜日曜でショートステイ(2泊3日)
このパターンだと、
- 平日に仕事へ行く間はデイサービスに任せられる
- 月に一度、まとまった休息・自分の通院・家のことを片づける時間を確保できる
例2:パート勤務 × ひとりで介護を担っている
- 勤務日のみデイサービスを利用して、働いている間の見守りを任せる
- 長期連休や盆・正月の前後にショートステイを入れて、体力と気力をリセット
「フルタイムだから」「短時間勤務だから」と決めつけるのではなく、
自分の働き方と体力に合わせて、デイとショートの組み合わせを考えるイメージが近いかもしれません。
預けることに罪悪感を覚えたときに、思い出してほしいこと
デイサービスやショートステイを使うことに、
- 親がかわいそう
- 自分が楽をしているように感じる
- 冷たい子どもだと思われないか不安
といった気持ちを抱くのは、とても自然なことだと思います。
そんなとき、少しだけ視点を変えてみると、心が軽くなる場合があります。
- あなたが倒れてしまうほうが、親にとってはもっとつらい
- 一時的に預けることで、あなたの笑顔や優しさを取り戻せるなら、それも立派な親孝行
- 専門職に任せたほうが、身体的なケアの質が上がる場面もある
「親のためだけ」ではなく、「自分と家族のためにも利用する」と考えると、
ショートステイやデイサービスは決して後ろめたいものではなく、
むしろ「長くやさしく関わるための現実的な選択肢」と言えるかもしれません。
おわりに:一人で全部抱え込まなくていい
デイサービスやショートステイは、
決して「もう家では見られないから預ける場所」だけではありません。
- 介護する人が、心と体を立て直すための時間をつくる
- 親が、家族以外の人とも関わりながら暮らすきっかけをつくる
- 将来の選択肢(在宅か施設か)を、落ち着いて考える余裕をつくる
そんな役割も持っています。
「まだ早いかな」「親に悪いかな」と感じていたとしても、
もし少しでもしんどさを感じ始めているなら、
一人で全部抱え込まなくてもいいのかもしれない、と考えてみてください。
今日できることは、たったひとつで構いません。
- ケアマネに「デイサービスやショートステイのことを聞きたい」と連絡してみる
- 地域包括支援センターに電話して、「親の介護が不安で…」と話してみる
その一歩が、あなたと親のこれからを、少しだけ楽にしてくれるかもしれません。


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