親の介護施設の種類と選び方|特養・老健・有料老人ホーム・サ高住を「家族目線」で比較

介護・医療

どの介護施設を選べばいいのか分からないあなたへ

「親の介護が必要かもしれない」と感じたとき、
最初にぶつかる壁のひとつが「どんな介護施設があって、何が違うの?」ということだと思います。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
  • グループホーム…

名前だけ聞いても、違いがよく分からないですよね。

しかも、

  • 仕事との両立はどうなるのか
  • 施設費用を払っていけるのか
  • 本当にここでいいと納得して決められるのか

考えれば考えるほど、不安が増えてしまう方も多いはずです。

結論:施設選びは「4つの軸」と「5つのステップ」で考える

最初に結論をお伝えすると、介護施設選びで大事なのは、

「どの施設が一般的に良いか」よりも、
「親と家族にとって続けられるか」を基準にすること。

そのために、この2つを意識してもらえると、かなり考えやすくなります。

● 施設選びの4つの軸

  1. 本人の希望(どこで・どんなふうに暮らしたいか)
  2. 家族の体力・時間(どこまで自宅で関われるか)
  3. お金(初期費用+月額費用)
  4. 医療・看取り・認知症などへの対応

● 施設を選ぶ5つのステップ

  1. 親の「今の状態」と「今後の見通し」を整理する
  2. 家族で「優先順位トップ3」を決める
  3. エリアと予算で候補施設をしぼる
  4. 実際に見学してチェックする
  5. 家族で振り返り、「ここまで自分たち/ここから施設」の線を引く

この記事では、まず 介護施設の主な種類をざっくり整理したうえで、
この「4つの軸」と「5つのステップ」を、できるだけやさしく解説していきます。

まず知っておきたい介護施設の主な種類

ここでは、代表的な施設を「公的施設」と「民間施設」に分けて、
ざっくりと特徴だけを押さえておきましょう。

※細かい違いを全部覚える必要はありません。
「なんとなくイメージがつかめたらOK」くらいの気持ちで読んでみてくださいね。

公的施設(費用を抑えやすいが、待機が多いことも)

1.特別養護老人ホーム(特養)

  • 対象:主に要介護3以上の方
  • 特徴:医療よりも「生活の場」としての支援が中心
  • メリット:公的な施設のため、月額費用は比較的抑えめ
  • 注意点:人気が高く、地域によっては待機期間が長くなりがち

2.介護老人保健施設(老健)

  • 対象:病院を退院したあと、自宅に戻る前の「中間施設」のような位置づけ
  • 目的:リハビリをしながら、在宅復帰を目指す
  • 特徴:「ずっと住む場所」というよりは、数ヶ月単位で利用することが多い

3.介護医療院 など

  • 対象:医療的なケアが長期的に必要な方
  • 特徴:医療と生活支援がセットになっている
  • イメージ:病院と介護施設の中間のような場所

「病院ではないけれど、医療のサポートがしっかり必要」という場合に候補になります。

民間施設(選択肢が多く、サービスの幅も広い)

1.介護付き有料老人ホーム

  • 特徴:24時間介護職員が常駐し、食事や入浴、排せつなどの介助も受けられる
  • メリット:手厚いサービスを選びやすい
  • 注意点:初期費用や月額費用が高めのことも多い

2.住宅型有料老人ホーム

  • 特徴:生活の場が中心で、介護サービスは外部から個別に契約して利用するスタイル
  • メリット:比較的自由度の高い暮らしがしやすい
  • 注意点:必要な介護サービスを増やしていくと、結果的に費用がふくらむことも

3.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

  • 特徴:バリアフリーの賃貸住宅に、「安否確認」と「生活相談」が付いているイメージ
  • メリット:自立寄り〜軽度の要介護の方が、自由度を保ちながら暮らしやすい
  • 注意点:重度の介護や医療的ケアが必要になってくると、住み替えが必要な場合も

4.グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

  • 対象:認知症の診断があり、少人数での暮らしが向いている方
  • 特徴:家庭的な雰囲気の中で、職員と一緒に家事などもしながら暮らすスタイル
  • メリット:大規模施設が合わない方でも、落ち着きやすいことが多い

「老人ホーム=一度入ったらずっと」ではない

「施設に入れたら、もう二度と自宅には戻れないのでは…」と感じてしまう方も少なくありません。

でも実際には、

  • 一時的に老健でリハビリ → 自宅に戻る
  • サ高住で暮らしていたが、状態が変わり特養や有料老人ホームへ
  • 自宅とショートステイを組み合わせながら、様子を見る

といった「移行」も珍しくありません。

「一度で完璧な最終地点を決める」ではなく、
「今の状態に合うステップを選び、必要に応じて見直す」

くらいのイメージで考えたほうが、現実的で、心の負担も軽くなります。

後悔しないための「4つの軸」

次に、どんな施設でも共通して大事になる「4つの軸」を整理しておきます。

① 本人の希望:どこで・どう暮らしたいか

  • できるだけ自宅に近い場所がいいのか
  • 友人やきょうだいの近くで暮らしたいのか
  • 集団よりも、少人数の落ち着いた環境が合うのか

親が元気なうちなら、
親が元気なうちにしておくべきお金と手続きのこと
も参考にしながら、少しずつ「どこで暮らしたいか」の話をしておけるとベストです。

② 家族の体力・時間:どこまで自宅で関われるか

  • 今の仕事や子育てとの両立は、現実的にどこまでできそうか
  • 夜間の見守りや、毎日の通院付き添いは難しくないか
  • 遠距離の場合、どのくらいの頻度で通えるのか

「本当はこうしてあげたい」と
「現実的にできる範囲」の間にギャップがあるのは、ある意味当たり前です。

仕事との両立が不安なときは、
仕事と介護の両立が不安なあなたへ|会社への伝え方&介護休業・介護休暇の基本
もあわせて読んでみてください。
退職一択ではない選択肢を知っておくと、施設選びの幅も広がります。

遠距離の場合には、
遠距離介護の始め方|月1回しか帰れなくても「できること」と「やらなくていいこと」
が、「どこまで自分で背負うか」の線引きを考えるヒントになります。

③ お金:初期費用と月額費用を分けて考える

介護施設を考えるとき、多くの方がいちばん不安なのが「お金」だと思います。

  • 入居金や敷金などの【初期費用】
  • 毎月の家賃・管理費・食費・介護サービス費などの【月額費用】

この2つを分けて考えるだけでも、だいぶ整理しやすくなります。

④ 医療・看取り・認知症への対応

  • 持病や医療的ケア(胃ろう、酸素、インスリン注射など)はあるか
  • 認知症の診断や、夜間の徘徊・暴言などの症状はあるか
  • 将来的に「看取り」までお願いしたいのか

こうしたポイントによって、向いている施設は変わってきます。

たとえば、認知症の症状が目立ってきて不安なときは、
親が認知症かも?と思ったら|今日からできる3つの対処法
の内容も参考にしながら、
グループホームなど少人数の環境も候補に入れてみると良いかもしれません。

介護施設の選び方|5つのステップ

ここからは、実際に施設を選ぶときの流れを、5つのステップで整理します。

ステップ1:親の「今」と「これから」を整理する

まずは、

  • 要介護度(または、今後申請予定かどうか)
  • できていること/難しくなっていること
  • 医師から言われている今後の見通し

を、ざっくりでいいので整理します。

要介護認定の流れ自体がよく分からないときは、
初めての介護保険・要介護認定の取り方入門
を読みながら、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみてください。

ステップ2:家族で「優先順位トップ3」を決める

次に、家族で話し合いながら、

  • 通いやすさ(自宅・子ども世帯からの距離)
  • 費用(初期費用/月額、どちらを優先するか)
  • 医療対応(夜間の看護師常駐が必要か)
  • 認知症への理解や、雰囲気の穏やかさ

などの中から、「特に大事にしたい条件」を3つにしぼります。

兄弟姉妹の間で意見が分かれやすいテーマでもあるので、
モヤモヤが大きいときは、
きょうだいで介護とお金を話し合うときの進め方|ケンカを減らす3ステップ
も参考にしながら、「誰がどこまで関わるか」を一度見える化しておくと、話し合いが楽になります。

ステップ3:エリアと予算で候補施設をしぼる

優先順位が見えてきたら、

  1. 親または家族の生活圏(自宅・子ども宅・よく行く病院など)のエリアを決める
  2. 初期費用・月額費用の上限をざっくり決める
  3. 公的施設+民間施設を、偏りなく候補に入れてみる

という流れで、まずは3〜5ヶ所程度にしぼってみましょう。

「在宅でがんばるべきか、施設がいいのか」というところで迷っている場合は、
在宅介護か施設か迷ったら|後悔しないための考え方
もあわせて読んでおくと、「そもそも在宅か施設か」という一歩手前の整理がしやすくなります。

ステップ4:実際に見学してチェックする

パンフレットやホームページだけでは分からないことも多いため、
気になる施設はできるだけ見学や体験入居をしてみるのがおすすめです。

チェックしておきたいポイントの例:

  • 玄関やロビーの雰囲気(におい・明るさ・行き交う職員さんの表情)
  • 食堂や居室の様子(騒がしすぎないか、暗すぎないか)
  • 夜間の体制(夜勤スタッフの人数、ナースコールの対応など)
  • 医療機関との連携(かかりつけ医との共有や、急変時の対応)
  • 看取りまで対応してくれるかどうか

見学のときに、
「親をここにお願いしたときの自分たちの暮らし」を頭の中でシミュレーションしてみると、

  • 通える頻度
  • 面会のしやすさ
  • 仕事との両立イメージ

も、よりリアルに見えてきます。

ステップ5:家族で振り返り、「ここまで自分たち/ここから施設」を決める

見学が終わったら、家族で一度時間をとって、

  • 良かった点・不安な点
  • 親本人の感想(可能な範囲で)
  • 費用と通いやすさのバランス

を整理しながら、

「どこまでを自分たちで担い、
どこからを施設にお願いするのか」

という線を決めていきます。

それでも迷うときは…一度立ち止まっていい

ここまで読んでも、

  • 本当にこれでいいのか不安
  • 親に申し訳ない気がする
  • 自分だけ楽をしようとしているみたいで罪悪感がある

そんな気持ちが出てくるかもしれません。

でも、

「自分の生活や心を守りながら、親の暮らしを一緒に考えること」

は、決して「親不孝」ではありません。
むしろ、長い目で見れば、親にとってもあなたにとっても大切な選択です。

介護そのものがつらくなってきていると感じたら、
介護で心が折れそうなあなたへ|“介護うつ”になる前にできる7つのこと
もぜひ覗いてみてください。
施設選びの前に、自分の心のケアを整えることも、立派な「介護の一部」です。

さいごに:完璧な正解より、「今のベスト」を選んでいい

介護施設選びは、一度で「100点満点の正解」を見つけるのが難しいテーマです。

  • 親の状態も
  • 家族の状況も
  • お金の事情も

時間とともに少しずつ変わっていきます。

だからこそ、

「今の状況と、今の自分たちにとってのベストは何か」
を、その都度選び直していく

くらいのスタンスでいて大丈夫です。

この記事が、
あなたとご家族にとっての「施設選びの地図」のような役割を少しでも果たせたら、うれしく思います。

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