親と折り合いが悪い・「毒親」だったときの終活と見送り方

終活の基本

──それでも、あなたの心を守りながら向き合うために

「親のことを考えるだけで気持ちが重くなる」
「正直、感謝より恨みのほうが大きい」
「でも、いざという時に何もしないのも、後で自分がしんどくなりそう…」

この記事を開いてくれたあなたは、
きっと「親の最期」や「これからの付き合い方」を考えなきゃと思いつつ、
モヤモヤや嫌な記憶が一緒に浮かんできて、ぐったりしているかもしれません。

先に、はっきりお伝えしておきたいのは――

  • 親がどんな人であっても、あなたには自分の心と人生を守る権利があること
  • 「親だから全力で尽くさないといけない」という義務はないこと
  • 距離を取りながら、自分なりの「最低限の関わり方」を選んでもいいということ

そのうえで、「いざという時に自分が困らない程度の準備」を
一緒に整えていく、というスタンスで書いていきます。

1. 「毒親を見送る」って、どういうこと?

「許す」かどうかを決める必要はない

まず大事なのは、

「親を許せるかどうか」と
「親の終活・見送りをどうするか」は
別のテーマにしていい

ということです。

  • 過去のことを、今すぐ消化したり許したりしなくていい
  • 心の傷は、急にきれいに片付くものではない
  • だからこそ、「心の問題」と「現実の手続き」は分けて考える

この記事では、主に「現実のほう」――
どこまで関わるか/何を決めておくとあとで自分が少しラクになるか
という視点で整理していきます。

「何もしない」を選んだとしても、あなたはダメじゃない

「もう本当に限界で、親とは一切関わりたくない」という状況の人もいると思います。

その場合、

  • 連絡が来ても対応しない
  • すべてをきょうだいや親戚に任せる
  • 役所や葬儀社のことも、関わらない

という選択も、本当に「あり」です。

ただし、「何もしない」ことを選ぶときも、

  • 戸籍・相続・借金などの影響が、自分に来ないか
  • いざ親が亡くなったとき、自分の心がどう揺れそうか

だけは、できれば少しだけ想像しておくと安心です。

2. まずは「今の距離感」を言葉にしてみる

いきなり制度やお金の話に行く前に、
一度、自分と親の関係をざっくり言葉にしてみるのがおすすめです。

チェックリスト:あなたと親の「今」

紙やスマホのメモに、こんな感じで書き出してみてください。

  • 今の連絡頻度:
    • □ ほとんど連絡を取っていない
    • □ たまに(数カ月に1回)LINEや電話
    • □ 実家には帰るけど、会話は最低限
  • 一緒にいるときの気持ち:
    • □ 常に緊張している/責められている感じがする
    • □ 表面上は普通に話せるが、心から安心はできない
    • □ だいぶマシにはなったが、昔の傷は残っている
  • もし今、「親が倒れた」と連絡が来たら…
    • □ 行かない/対応しない可能性が高い
    • □ 迷いながらも、とりあえず病院には行くと思う
    • □ 行くけれど、長くは付き合えない気がする

ここで大事なのは「正直モード」で書くこと。
「こうあるべき」ではなく、いまの本音をそのまま出して大丈夫です。

心がすり減りやすいパターン

毒親・折り合いの悪い親との関係では、

  • 会えば、昔と同じように責められる/コントロールされる
  • お金や保証人だけ、都合よく頼られる
  • きょうだいの中で、「一番言いやすい人」に負担が集中する

こんな状況になりやすいです。

もし心当たりがあるなら、
このあと出てくる「線引き」の話を、
“自分を守る武器”として使ってもらえたらと思います。

3. 「やること」と「やらないこと」を決めるという考え方

ここから少し現実的な話に入ります。

毒親であっても、「完全にゼロにはしないでおこうかな」と感じているなら、
先に自分の中のルールを決めておくと、あとで迷いにくくなります。

レベル別に「ここまではやる/ここから先はやらない」を決める

イメージしやすくするために、関わり方を3段階に分けてみます。

レベル1:情報だけ受け取る

  • 親の状況の連絡は受け取る(LINE・電話など)
  • 自分からは連絡しない/最低限だけ返信する
  • お金の援助や同居の話は「しない」と決めておく

レベル2:手続きや連絡の“窓口役”まではする

  • 緊急時の連絡先にはなっておく
  • 病院や施設、葬儀社との連絡役・調整役までは引き受ける
  • ただし、実際の介護や同居はしない(サービスや施設を使う方向で考える)

レベル3:一定の介護や見送りを担うが、限度を決める

  • 通院の付き添い・一部の生活サポートはする
  • でも「週○回まで」「月○回まで」と回数に上限を決める
  • 金銭負担も「これ以上は出さない」と上限を決めておく

どれを選んでも構いません。
途中で「やっぱりしんどい」と感じたら、レベルを下げてもいいのです。

4. 親に何かあったときの「最低限ライン」を整える

急な入院・危篤・訃報のとき

親が毒親であっても、
「病院からの電話が来たとき、どうするか」だけは
事前にイメージしておくと、パニックを少し減らせます。

たとえば:

  • 連絡を受けたら、「行く/行かない」をどう判断するか
  • 行く場合、誰と一緒に行くか(配偶者・きょうだい・友人など)
  • 病院で何を確認するか(病名・今後の見通し・今すぐ必要な手続き など)

「最初の24時間で何をすればいいか」は、
別記事のこちらで、かなり具体的に整理しています。

👉 親が危篤・訃報の連絡を受けたときにまず読む記事|最初の24時間ガイド

「親のことは複雑だけど、最低限の流れだけは知っておきたい」
というときに、地図代わりに使ってもらえると思います。

お金のことは「感情」と切り離して考える

毒親との関係で、とくにしんどくなりやすいのが「お金」の話です。

  • 「こっちは散々な目にあったのに、お金まで…?」
  • 「きょうだいは何もせず、私だけに頼ってくる」

そんな気持ちが湧くのは、当然です。

だからこそ、お金の話は一度「感情」と切り離して、

  • 親の年金・貯金でどこまでまかなえるか
  • 不足分を、誰が・どのくらい負担できそうか
  • そもそも、今の生活レベルを維持する必要があるのか

現実的に考える場を別に持つのが大事です。

「感情は一旦横に置いて、“数字だけ”見る時間」を持つことで、
少しだけ冷静に判断しやすくなります。

亡くなったあとの手続きは「1年かけて」でOK

もし親が亡くなったあと、
葬儀や役所の手続きをあなたがある程度担うことになった場合も、

「全部すぐにやらなきゃ」と思わなくて大丈夫

です。

死亡後1年間の手続きは、
期限ごとに「この時期にこれだけやればOK」と割り振ることができます。

詳しい流れは、こちらで整理しています。

👉 親が亡くなったらする手続き一覧と期限|死亡後1年間のチェックリスト

「今はここまでやれば十分」
「これは数カ月後でいい」と分かるだけでも、
心の負担はかなり変わるはずです。

5. 介護・終活にどこまで関わるかを決める

介護は「家族だけで抱えない」が大前提

毒親であっても、「最低限の介護には関わろう」と決めたとき、
絶対に覚えておいてほしいのは、

介護は、家族だけで完結させなくていい

ということです。

  • 介護保険サービスを使う
  • ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する
  • 施設入所という選択肢も、早めに視野に入れておく

こうした「外の力」を使うことは、
決して「親不孝」ではありません。

介護保険のしくみや、要介護認定の流れは、
次の記事で図つきで整理しています。

👉 初めての介護保険・要介護認定の取り方入門

「制度の全体像だけでも知っておく」と、
毒親ゆえの複雑な感情に、すこし“現実的な選択肢”を混ぜられるようになります。

遠距離の場合は「できること」と「やらなくていいこと」を分ける

実家が遠く、簡単には帰れない人も多いと思います。

「親は嫌いだけど、放置するのも後味が悪い」
「でも、物理的にそんなに頻繁には動けない」

そんなときは、遠距離介護ならではの線引きを知っておくとラクです。

👉 遠距離介護の始め方|月1回しか帰れなくても「できること」と「やらなくていいこと」

この記事では、

  • 親の「今」を見える化する方法
  • 現地の味方(地域包括支援センター・ケアマネなど)を増やす考え方
  • 自分の「できる/できない」に線を引くコツ

が整理されています。

「月1回しか帰れないけど、その範囲でできることをやる」

こういうスタンスは、毒親に限らず、
どんな親子関係でも“自分を守る大事なルール”になります。

仕事との両立が不安なとき

毒親のことに心をすり減らしながら、
仕事も続けないといけない…となると、
心身の負担は一気に大きくなります。

「職場にどこまで話していいのか分からない」
「介護休暇とか制度のことを考える余裕もない」

そんなときは、
仕事と介護の両立にしぼったこちらの記事も、
使えるところだけ拾い読みしてみてください。

👉 仕事と介護の両立が不安なあなたへ|会社への伝え方&介護休業・介護休暇の基本

「どんな制度があるのか」
「上司には、どんな順番で話すといいのか」が分かると、
“全部自分一人で抱え込んでいる感覚”が少しやわらぎます。

6. 心のケア:怒り・罪悪感・空虚さとどう付き合うか

毒親との終活・見送りで、
いちばん厄介なのは、やっぱり感情の揺れです。

「どんな気持ちになってもOK」と先に許しておく

親の病気や死を前にしても、

  • 涙が出ない/悲しいより「ほっとした」が先に来る
  • 周りから「親なんだから」と言われ、余計につらくなる
  • 落ち込むというより、ただただ空虚な感じがする

どんな感情が出てきても、それはあなたが悪いわけではありません。

「こう感じてしまう自分がおかしいんじゃないか」

と自分を責めるより、

「あの親との関係を考えたら、こう感じても不思議じゃないよな」

と、自分の味方側に立つ言葉を、
そっと心の中でかけてあげてほしいなと思います。

一人で抱えない工夫を、意識的に持つ

毒親の話は、とてもプライベートで、
リアルでは話しにくいことも多いですよね。

可能であれば、

  • 信頼できる友人に、「愚痴だけ聞いて」と前置きして話す
  • カウンセリング・心理相談を利用する
  • ノートやスマホに、感情をそのまま書き出してみる

といった“外に出す窓口”を、1つでもいいので持っておくと、
心が少しずつほぐれていきます。

7. まとめ|「親のため」より「これからの自分のため」に決めていい

最後に、この記事のポイントをもう一度、
ぎゅっとまとめます。

「親のため」というより、
「これからの自分が少しでもラクになるため」に、どうするかを決めていい。

この記事が、
「全部はできないけれど、今日これだけ決めておこうかな」
と感じるための、小さな足がかりになればうれしいです。

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