もしかして今、
- 「もう無理かもしれない」
- 「こんな気持ちになる自分はダメだ」
- 「親に優しくできない自分なんて…」
そんなふうに、自分を責めていませんか?
まず最初に、はっきりお伝えさせてください。
ここまでがんばっているあなたは、もう十分すぎるほどがんばっています。
今つらいと感じているのは、あなたが弱いからではなく、
それだけ大変な毎日を、ずっと続けてきたからです。
このページは、
- 心も体も、かなり疲れがたまっている
- 誰かに弱音を吐きたいけど、うまく言えない
- 「介護なんてやめたい」と一瞬でも思ってしまった自分が怖い
そんなあなたに向けて書いています。
もし今、
「親が認知症かもしれない」「介護が始まりそうで不安」という段階なら、
状況を整理するための別記事も、あとで落ち着いたときにそっと開いてみてください。
- 親の変化が気になり始めたときは
→ 親が認知症かも?と思ったら|今日からできる3つの対処法 - 介護保険や相談先の“全体像”を知っておきたいときは
→ 初めての介護保険・要介護認定の取り方入門
ただ、今この瞬間は、
制度や手続きの話よりも、あなた自身の心のことをいちばんに考えてほしいと思っています。
ここに書いてあるのは、
「もっとがんばりましょう」という話ではありません。
- あなたの今の気持ちを「それでいい」と受け止めること
- 介護うつになる前に、「ちょっとだけ自分を守る工夫」を一緒に考えること
それが、この文章のいちばん大切な目的です。
よかったら、深呼吸をひとつしてから、ゆっくり読み進めてみてくださいね。
あなたが倒れないことが、いちばんの介護です
いきなり結論からお伝えします。
あなたが倒れないこと。
それが、いちばんの介護であり、いちばんの親孝行です。
そう言われても、すぐにはピンとこないかもしれません。
「親がこんな状態なのに、自分のことなんて…」
「自分ががんばらなきゃ、誰がやるの?」
そう思って、ここまで踏ん張ってきたのですよね。
でも、介護は多くの場合、
「数日」「数週間」で終わるものではなく、
- 数カ月
- 長い人だと、何年、十年以上
と続いていく、長い長い道のりです。
その長い道のりを、
全力疾走のまま走り続けてしまうとどうなるかというと――
- 心か体が先に限界を迎えてしまう
- 入院や休職など、介護どころではなくなる
- 親にきつく当たってしまい、そのあと強い自己嫌悪におそわれる
そんな状態になってしまいがちです。
だからこそ、
「親を大切にすること」と「自分を大切にすること」を
セットで考えていい。
むしろ、そのほうが、
結果的に親のためにも、あなたの人生のためにもなります。
この先の内容は、
あなたが「倒れないため」にできることを、一緒に考えていくためのものです。
なぜ、介護はここまで心をすり減らすのか

まず、「しんどいのは当たり前なんだ」と
自分を少しゆるめるために、
そもそも、どうして介護はここまで人の心を追い込むのか?
を整理してみますね。
生活が、突然「24時間体制」になるから
介護が始まると、
それまで当たり前にあった生活のリズムが、大きく変わります。
- 夜中のトイレ介助や見守りで、ぐっすり眠れない
- 朝・昼・晩のご飯、薬、お風呂…
頭の中が常に「次にやること」でいっぱい - 自分の予定よりも、親の体調や機嫌で1日が決まってしまう
仕事には「終業時間」がありますが、
介護には「ここで終わり」という線がありません。
いつもどこかで気を張っている状態が続くと、
心も体も、休むタイミングを見失ってしまいます。
がんばっても「ありがとう」が返ってこないことがあるから
介護には、
- 「こんなにやっているのに、感謝されない」
- 「当たり前だと思われている気がする」
そんなつらさがあります。
とくに、
- 親本人から「そんなことしなくていい」と突き放される
- 認知症が進み、「ありがとう」という言葉が出てこない
(※そんなときの向き合い方は、認知症の「困った行動」への向き合い方でも、もう少し具体的に書いています) - きょうだい・周りから「あなたは時間あるでしょ」と負担が偏る
こういう状況だと、
がんばればがんばるほど、心がすり減ってしまいますよね。
真面目で、優しい人ほど追い詰められやすいから
介護で心が限界に近づく人の多くは、
- 真面目
- 優しい
- 責任感が強い
- 「迷惑をかけたくない」と思いやすい
そんな人たちです。
だからこそ、
- つらくても「これくらいで弱音を吐いちゃいけない」と思ってしまう
- 周りに頼る前に、「自分がなんとかしないと」と抱え込んでしまう
- イライラした自分を、「最低だ」と責め続けてしまう
こうして、
自分を追い詰めるスピードだけが、どんどん速くなってしまうのです。
もし今、
「自分は弱いから、こんなにしんどいんだ」
と思っていたとしたら、
それは逆です。
ここまでこられるまで、必死で踏ん張ってきたからこそ、
心と体が悲鳴を上げている。
そう考えてもらえたら、少しだけ気持ちが変わるかもしれません。
「介護うつ」の手前かも?今の自分を、そっと確認してみる
ここからは、
「自分の心と体の状態を、少し離れた場所から眺めてみる時間」です。
難しく考えなくて大丈夫です。
チェックテストというより、
「もしかして、だいぶ無理してきたかな?」
と気づいてあげるための目安だと思ってくださいね。
心と体に出てくるサイン
最近、こんなことはありませんか?
- 夜、布団に入ってもなかなか寝つけない
- 夜中に何度も目が覚める
- 朝起きた瞬間、「ああ、今日も始まってしまった」と感じる
- ご飯がおいしいと思えない/甘いもの・お酒に頼りがち
- 好きだったことに手が伸びない
- ふとしたことで涙が出てくる
- イライラがおさまらない
- 頭痛・胃痛・肩こり・めまいなど、体の不調が続いている
ひとつでも当てはまったからといって、
すぐに「うつ」と決まるわけではありません。
ただ、
「心と体が、そろそろ限界に近づいているかも」
というサインかもしれない…と、一度立ち止まってあげてほしいのです。
「危険信号」になりやすい考え方のクセ
心の中で繰り返している言葉にも、ヒントがあります。
- 「自分ががんばらないと全部ダメになる」
- 「他のきょうだいはあてにならない」
- 「親にイライラしてしまう自分なんて最低だ」
- 「休むなんて、サボりだ」
- 「助けてと言ったところで、どうせ誰も分かってくれない」
もし、どれかが自分の心の声に近かったら、
その言葉は、あなたを守るどころか、
ゆっくりと追い詰めてしまっているかもしれません。
きょうだいとの温度差やモヤモヤについては、
あとで余裕があるときに
きょうだいで介護とお金を話し合うときの進め方|ケンカを減らす3ステップ
も読んでもらえると、「自分だけの問題じゃなかったんだ」と感じてもらえるかもしれません。
このあとお話しするのは、
そんな「心の声」を、少しずつ優しい方向にゆるめていくための方法です。
今日からできる、7つのやさしいセルフケア
ここからは、
「がんばらなくていいセルフケア」を7つ、ご紹介します。
全部やる必要はまったくありません。
今の自分にとって「これなら、ちょっとやれそう」と思えるものを、
ひとつだけ選んでもらえたら十分です。
① 睡眠と食事を、“完璧”じゃなく“最低ライン”で守る
「ちゃんと寝て、ちゃんと食べましょう」と言われても、
介護中はそれが難しいからつらいですよね。
ここで目指したいのは、
完璧な生活ではなく、“これだけは崩さない最低ライン”を決めること。
たとえば…
- 夜は、遅くなっても「◯時までには布団に入る」と決める
- 寝る前1時間だけはスマホやニュースから離れて、目と頭を休める
- 食欲がなくても、「スープ+卵」だけは口に入れる
- コンビニのサラダやお惣菜に頼ってもいい、と自分に許可を出す
「手作りしなきゃ」「栄養バランスを完璧に」なんて、今は考えなくて大丈夫です。
“命のガソリン”を、細くてもいいから入れ続ける。
そのくらいの気持ちで、ハードルをんと下げてあげてください。
② 1日15分の「介護をしない時間」を、自分にプレゼントする

1日中、頭のどこかで親のことを考えていると、
心も体も休まりません。
そこでおすすめしたいのが、
「介護のことを一切考えない時間」を、1日15分だけつくること。
たとえば、
- 好きな飲み物をゆっくり飲む
- ベランダに出て、空や雲をぼーっと眺める
- 好きな音楽を1曲だけ聴く
- 好きな漫画を数ページだけ読む
内容はなんでもかまいません。
大事なのは、
その15分だけは、「介護のことは考えない」と自分に許可を出すこと。
「たった15分?」と思うかもしれませんが、
その15分が、心にとって大きな“酸素補給”になります。
遠距離で月1回しか帰れないような状況なら、
その不安との向き合い方を整理した
遠距離介護の始め方|月1回しか帰れなくても「できること」と「やらなくていいこと」
も、心の負担を軽くするヒントになるかもしれません。
③ 「愚痴を言える相手」を、2種類持っておく
弱音を吐ける相手がいるかどうかは、
心の負担を大きく左右します。
できれば、
- 「ただ気持ちを聞いてくれる人」
- 「介護のことが分かる人(経験者や専門職など)」
この2種類の相手がいると、とても心強いです。
- ①には、きれいな言葉にしなくて大丈夫です。
「もうやってられない」「しんどい」「助けてほしい」
そんな本音をそのまま出していい相手。 - ②には、「こんなときどうした?」と現実的な相談をできる相手。
同じ人に全部求める必要はありません。
「聞いてもらう人」と「相談する人」を分ける。
それだけでも、心の整理が少ししやすくなります。
④ 介護サービスは、「親のため」だけじゃなく「あなたの心のため」にも使っていい

デイサービスやショートステイなどの介護サービスを、
「親を預けるなんてかわいそう」
「自分が楽をしているみたいで罪悪感がある」
と感じてしまう方は、とても多いです。
でも本当は、介護サービスにはもうひとつ大切な役割があります。
介護している家族が、ひと息つくためのサービス
でもある、ということです。
- 半日だけデイサービスを利用して、その間に昼寝や買い物をする
- ショートステイを使って、月に一度「何もしない日」をつくる
- 送り出したあと、ひとりでゆっくりお風呂に入る
こうした時間は、
決して「サボり」や「逃げ」ではありません。
むしろ、
また明日から介護を続けていくための、大切な“充電時間”
だと思ってもらえたらうれしいです。
「そもそもどんな制度やサービスがあるのか知りたい」と感じたら、
初めての介護保険・要介護認定の取り方入門 や、
在宅と施設の違いを整理した
在宅介護か施設か迷ったら|後悔しないための考え方
も、あとでゆっくり読んでみてください。
「選択肢がある」と分かるだけでも、心の余裕が少し増えます。
⑤ 家族・きょうだいには、「具体的に」お願いしてみる
「何か手伝うことあったら言ってね」と言われているのに、
結局言えずに一人で抱えてしまう…そんなことはありませんか?
それは、あなたのせいではなく、
「何を頼めばいいか」が、相手にも自分にも見えていないだけかもしれません。
お願いするときは、
- 「とりあえず何かして」ではなく、
- 「◯日の通院の付き添いを代わってほしい」
- 「この書類の確認だけお願いしたい」
- 「週に1回だけ、買い出しを担当してほしい」
など、具体的に切り分けて伝えると、
相手も動きやすくなります。
もちろん、断られることもあるかもしれません。
そのときはつらいですし、モヤモヤも残ります。
それでも、
一度も頼まずに全部抱え込んでしまうより、
「お願いしてみた」という一歩は、あなたの味方になってくれます。
「どう話を切り出したらいいか分からない…」と感じたら、
きょうだいで介護とお金を話し合うときの進め方|ケンカを減らす3ステップ も、
具体的な言い回しのヒントになると思います。

⑥ 「できない自分」を責めすぎないための、3つの視点
介護をしていると、
- イライラしてしまった自分
- 手を抜きたくなった自分
- もうやめたいと思ってしまった自分
を、強く責めてしまうことがあると思います。
そんなときに、心の片隅に置いておいてほしい視点が3つあります。
- 「理想の介護」と「現実の介護」は違って当たり前
- 100点満点より、“60〜70点で続けられる介護”のほうが、親のためになる
- 「嫌だ」と感じるのは、親を大切に思っていないからではなく、それだけ疲れているから
「こんなことを思う自分は、親不孝だ」と
自分を責めてしまいそうになったとき、
「それだけ今、疲れているんだね」と、
自分に声をかけてあげる。
そんなふうに、自分の心に寄り添ってあげてほしいのです。
⑦ 「もう一人では抱えきれないかも」と感じたら、それは“助けを呼んでいいサイン”
ここまで読んでも、
- どうしても気持ちが沈んだまま上がってこない
- 何週間も「消えてしまいたい」と思い続けている
- 仕事も家事も、手につかないほどしんどい
そんな状態が続いている場合は、
一人で抱え込むには、あまりにも重い負担になっているのかもしれません。
そのときは、どうか、
「もうダメな自分」ではなく
「助けを呼んでいい段階まで、本当によくがんばってきた自分」
と受け止めてあげてください。
相談先の例としては、
- 心療内科・精神科
- かかりつけ医
- 自治体の相談窓口
- 地域包括支援センター
- 介護者家族の会・電話相談
などがあります。
「こんなことで相談していいのかな」と思う内容でも、大丈夫です。
つらいと感じている、その気持ちそのものが、
相談していい理由になります。
「もう無理かも」と思ったときに、自分に許してほしいこと
介護を続けていると、
どうしても限界に近づいてしまう瞬間があります。
そんなときに、
自分に許してあげてほしいことが2つあります。
「やめる」「距離をとる」も、選んでいい選択肢
- 施設への入所を検討する
- 負担を少しずつ、他の家族やサービスに移していく
- 自分の生活を守るために、介護の関わり方を変える
こうした選択は、
一見「逃げ」や「親不孝」に感じてしまうかもしれません。
でも、もしあなたが本当に倒れてしまったら――
親もあなたも、もっと苦しい状況になってしまうかもしれません。
あなたの心と体を守るために、
関わり方を変えること。
それも立派な、“介護の選択”のひとつです。
あなたの人生を大切にすることは、親を見捨てることではない
介護は、あなたの人生の中でとても大きな出来事です。
でも、あなたの人生のすべてではありません。
- 友だちと笑い合う時間
- 仕事や趣味に没頭する時間
- ひとりで、何もしないで過ごす時間
それらを大切にすることは、
決して「親を見捨てること」ではありません。
むしろ、
自分の人生をきちんと生きることは、
親が本来望んでいる姿でもあるのかもしれません。
介護の先にある「お金や手続き」の不安が頭をよぎるようなら、
- 親が元気なうちにできる準備をまとめた
親が元気なうちにしておくべきお金と手続きのこと - 思いや希望を書き留めるための
エンディングノートとは?親と始めるやさしい終活入門
なども、タイミングの合うときに少しずつ触れてみてください。
「今すぐ全部やらなきゃ」ではなく、
「いつか、心が落ち着いてきたときのための、置き場所」くらいのつもりで大丈夫です。
さいごに:今のあなたに、そっと伝えたいこと
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
きっと、読むだけでも少ししんどかったところがあったと思います。
それでも画面を閉じずに、ここまでたどり着いたあなたは、
やっぱり、とても優しくて、がんばり屋さんです。
どうか、覚えておいてください。
- 介護がつらいと感じるのは、あなたが弱いからではありません。
- 「しんどい」「もう無理かも」と思うのは、自然な反応です。
- あなたが倒れないことが、いちばんの介護であり、いちばんの親孝行です。
このページの中から、
ひとつでも「やってみようかな」と思えることが見つかったなら、
それは、とても大きな一歩です。
これからも、
あなたが少しでもラクに、
そして、あなた自身の人生も大切にしながら、
介護と向き合っていけますように。
そのお手伝いを、このサイトで続けていけたらうれしいです。


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