介護で心が折れそうなあなたへ|“介護うつ”になる前にできる7つのこと

介護・医療

もしかして今、

  • 「もう無理かもしれない」
  • 「こんな気持ちになる自分はダメだ」
  • 「親に優しくできない自分なんて…」

そんなふうに、自分を責めていませんか?

まず最初に、はっきりお伝えさせてください。

ここまでがんばっているあなたは、もう十分すぎるほどがんばっています。
今つらいと感じているのは、あなたが弱いからではなく、
それだけ大変な毎日を、ずっと続けてきたからです。

このページは、

  • 心も体も、かなり疲れがたまっている
  • 誰かに弱音を吐きたいけど、うまく言えない
  • 「介護なんてやめたい」と一瞬でも思ってしまった自分が怖い

そんなあなたに向けて書いています。

もし今、
「親が認知症かもしれない」「介護が始まりそうで不安」という段階なら、
状況を整理するための別記事も、あとで落ち着いたときにそっと開いてみてください。

ただ、今この瞬間は、
制度や手続きの話よりも、あなた自身の心のことをいちばんに考えてほしいと思っています。

ここに書いてあるのは、
「もっとがんばりましょう」という話ではありません。

  • あなたの今の気持ちを「それでいい」と受け止めること
  • 介護うつになる前に、「ちょっとだけ自分を守る工夫」を一緒に考えること

それが、この文章のいちばん大切な目的です。

よかったら、深呼吸をひとつしてから、ゆっくり読み進めてみてくださいね。

あなたが倒れないことが、いちばんの介護です

いきなり結論からお伝えします。

あなたが倒れないこと。
それが、いちばんの介護であり、いちばんの親孝行です。

そう言われても、すぐにはピンとこないかもしれません。

「親がこんな状態なのに、自分のことなんて…」
「自分ががんばらなきゃ、誰がやるの?」

そう思って、ここまで踏ん張ってきたのですよね。

でも、介護は多くの場合、
「数日」「数週間」で終わるものではなく、

  • 数カ月
  • 長い人だと、何年、十年以上

と続いていく、長い長い道のりです。

その長い道のりを、
全力疾走のまま走り続けてしまうとどうなるかというと――

  • 心か体が先に限界を迎えてしまう
  • 入院や休職など、介護どころではなくなる
  • 親にきつく当たってしまい、そのあと強い自己嫌悪におそわれる

そんな状態になってしまいがちです。

だからこそ、

「親を大切にすること」と「自分を大切にすること」を
セットで考えていい。

むしろ、そのほうが、
結果的に親のためにも、あなたの人生のためにもなります。

この先の内容は、
あなたが「倒れないため」にできることを、一緒に考えていくためのものです。

なぜ、介護はここまで心をすり減らすのか

まず、「しんどいのは当たり前なんだ」と
自分を少しゆるめるために、

そもそも、どうして介護はここまで人の心を追い込むのか?

を整理してみますね。

生活が、突然「24時間体制」になるから

介護が始まると、
それまで当たり前にあった生活のリズムが、大きく変わります。

  • 夜中のトイレ介助や見守りで、ぐっすり眠れない
  • 朝・昼・晩のご飯、薬、お風呂…
    頭の中が常に「次にやること」でいっぱい
  • 自分の予定よりも、親の体調や機嫌で1日が決まってしまう

仕事には「終業時間」がありますが、
介護には「ここで終わり」という線がありません。

いつもどこかで気を張っている状態が続くと、
心も体も、休むタイミングを見失ってしまいます。

がんばっても「ありがとう」が返ってこないことがあるから

介護には、

  • 「こんなにやっているのに、感謝されない」
  • 「当たり前だと思われている気がする」

そんなつらさがあります。

とくに、

  • 親本人から「そんなことしなくていい」と突き放される
  • 認知症が進み、「ありがとう」という言葉が出てこない
    (※そんなときの向き合い方は、認知症の「困った行動」への向き合い方でも、もう少し具体的に書いています)
  • きょうだい・周りから「あなたは時間あるでしょ」と負担が偏る

こういう状況だと、
がんばればがんばるほど、心がすり減ってしまいますよね。

真面目で、優しい人ほど追い詰められやすいから

介護で心が限界に近づく人の多くは、

  • 真面目
  • 優しい
  • 責任感が強い
  • 「迷惑をかけたくない」と思いやすい

そんな人たちです。

だからこそ、

  • つらくても「これくらいで弱音を吐いちゃいけない」と思ってしまう
  • 周りに頼る前に、「自分がなんとかしないと」と抱え込んでしまう
  • イライラした自分を、「最低だ」と責め続けてしまう

こうして、
自分を追い詰めるスピードだけが、どんどん速くなってしまうのです。

もし今、

「自分は弱いから、こんなにしんどいんだ」

と思っていたとしたら、
それは逆です。

ここまでこられるまで、必死で踏ん張ってきたからこそ、
心と体が悲鳴を上げている。

そう考えてもらえたら、少しだけ気持ちが変わるかもしれません。

「介護うつ」の手前かも?今の自分を、そっと確認してみる

ここからは、
「自分の心と体の状態を、少し離れた場所から眺めてみる時間」です。

難しく考えなくて大丈夫です。
チェックテストというより、

「もしかして、だいぶ無理してきたかな?」

と気づいてあげるための目安だと思ってくださいね。

心と体に出てくるサイン

最近、こんなことはありませんか?

  • 夜、布団に入ってもなかなか寝つけない
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 朝起きた瞬間、「ああ、今日も始まってしまった」と感じる
  • ご飯がおいしいと思えない/甘いもの・お酒に頼りがち
  • 好きだったことに手が伸びない
  • ふとしたことで涙が出てくる
  • イライラがおさまらない
  • 頭痛・胃痛・肩こり・めまいなど、体の不調が続いている

ひとつでも当てはまったからといって、
すぐに「うつ」と決まるわけではありません。

ただ、

「心と体が、そろそろ限界に近づいているかも」
というサインかもしれない…と、一度立ち止まってあげてほしいのです。

「危険信号」になりやすい考え方のクセ

心の中で繰り返している言葉にも、ヒントがあります。

  • 「自分ががんばらないと全部ダメになる」
  • 「他のきょうだいはあてにならない」
  • 「親にイライラしてしまう自分なんて最低だ」
  • 「休むなんて、サボりだ」
  • 「助けてと言ったところで、どうせ誰も分かってくれない」

もし、どれかが自分の心の声に近かったら、
その言葉は、あなたを守るどころか、
ゆっくりと追い詰めてしまっているかもしれません。

きょうだいとの温度差やモヤモヤについては、
あとで余裕があるときに
きょうだいで介護とお金を話し合うときの進め方|ケンカを減らす3ステップ
も読んでもらえると、「自分だけの問題じゃなかったんだ」と感じてもらえるかもしれません。

このあとお話しするのは、
そんな「心の声」を、少しずつ優しい方向にゆるめていくための方法です。

今日からできる、7つのやさしいセルフケア

ここからは、
「がんばらなくていいセルフケア」を7つ、ご紹介します。

全部やる必要はまったくありません。
今の自分にとって「これなら、ちょっとやれそう」と思えるものを、
ひとつだけ選んでもらえたら十分です。

① 睡眠と食事を、“完璧”じゃなく“最低ライン”で守る

「ちゃんと寝て、ちゃんと食べましょう」と言われても、
介護中はそれが難しいからつらいですよね。

ここで目指したいのは、

完璧な生活ではなく、“これだけは崩さない最低ライン”を決めること。

たとえば…

  • 夜は、遅くなっても「◯時までには布団に入る」と決める
  • 寝る前1時間だけはスマホやニュースから離れて、目と頭を休める
  • 食欲がなくても、「スープ+卵」だけは口に入れる
  • コンビニのサラダやお惣菜に頼ってもいい、と自分に許可を出す

「手作りしなきゃ」「栄養バランスを完璧に」なんて、今は考えなくて大丈夫です。

“命のガソリン”を、細くてもいいから入れ続ける。

そのくらいの気持ちで、ハードルをんと下げてあげてください。

② 1日15分の「介護をしない時間」を、自分にプレゼントする

1日中、頭のどこかで親のことを考えていると、
心も体も休まりません。

そこでおすすめしたいのが、

「介護のことを一切考えない時間」を、1日15分だけつくること。

たとえば、

  • 好きな飲み物をゆっくり飲む
  • ベランダに出て、空や雲をぼーっと眺める
  • 好きな音楽を1曲だけ聴く
  • 好きな漫画を数ページだけ読む

内容はなんでもかまいません。

大事なのは、

その15分だけは、「介護のことは考えない」と自分に許可を出すこと。

「たった15分?」と思うかもしれませんが、
その15分が、心にとって大きな“酸素補給”になります。

遠距離で月1回しか帰れないような状況なら、
その不安との向き合い方を整理した
遠距離介護の始め方|月1回しか帰れなくても「できること」と「やらなくていいこと」
も、心の負担を軽くするヒントになるかもしれません。

③ 「愚痴を言える相手」を、2種類持っておく

弱音を吐ける相手がいるかどうかは、
心の負担を大きく左右します。

できれば、

  1. 「ただ気持ちを聞いてくれる人」
  2. 「介護のことが分かる人(経験者や専門職など)」

この2種類の相手がいると、とても心強いです。

  • ①には、きれいな言葉にしなくて大丈夫です。
    「もうやってられない」「しんどい」「助けてほしい」
    そんな本音をそのまま出していい相手。
  • ②には、「こんなときどうした?」と現実的な相談をできる相手。

同じ人に全部求める必要はありません。

「聞いてもらう人」と「相談する人」を分ける。

それだけでも、心の整理が少ししやすくなります。

④ 介護サービスは、「親のため」だけじゃなく「あなたの心のため」にも使っていい

デイサービスやショートステイなどの介護サービスを、

「親を預けるなんてかわいそう」
「自分が楽をしているみたいで罪悪感がある」

と感じてしまう方は、とても多いです。

でも本当は、介護サービスにはもうひとつ大切な役割があります。

介護している家族が、ひと息つくためのサービス

でもある、ということです。

  • 半日だけデイサービスを利用して、その間に昼寝や買い物をする
  • ショートステイを使って、月に一度「何もしない日」をつくる
  • 送り出したあと、ひとりでゆっくりお風呂に入る

こうした時間は、
決して「サボり」や「逃げ」ではありません。

むしろ、

また明日から介護を続けていくための、大切な“充電時間”

だと思ってもらえたらうれしいです。

「そもそもどんな制度やサービスがあるのか知りたい」と感じたら、
初めての介護保険・要介護認定の取り方入門 や、
在宅と施設の違いを整理した
在宅介護か施設か迷ったら|後悔しないための考え方
も、あとでゆっくり読んでみてください。
「選択肢がある」と分かるだけでも、心の余裕が少し増えます。

⑤ 家族・きょうだいには、「具体的に」お願いしてみる

「何か手伝うことあったら言ってね」と言われているのに、
結局言えずに一人で抱えてしまう…そんなことはありませんか?

それは、あなたのせいではなく、
「何を頼めばいいか」が、相手にも自分にも見えていないだけかもしれません。

お願いするときは、

  • 「とりあえず何かして」ではなく、
  • 「◯日の通院の付き添いを代わってほしい」
  • 「この書類の確認だけお願いしたい」
  • 「週に1回だけ、買い出しを担当してほしい」

など、具体的に切り分けて伝えると、
相手も動きやすくなります。

もちろん、断られることもあるかもしれません。
そのときはつらいですし、モヤモヤも残ります。

それでも、

一度も頼まずに全部抱え込んでしまうより、
「お願いしてみた」という一歩は、あなたの味方になってくれます。

「どう話を切り出したらいいか分からない…」と感じたら、
きょうだいで介護とお金を話し合うときの進め方|ケンカを減らす3ステップ も、
具体的な言い回しのヒントになると思います。

⑥ 「できない自分」を責めすぎないための、3つの視点

介護をしていると、

  • イライラしてしまった自分
  • 手を抜きたくなった自分
  • もうやめたいと思ってしまった自分

を、強く責めてしまうことがあると思います。

そんなときに、心の片隅に置いておいてほしい視点が3つあります。

  1. 「理想の介護」と「現実の介護」は違って当たり前
  2. 100点満点より、“60〜70点で続けられる介護”のほうが、親のためになる
  3. 「嫌だ」と感じるのは、親を大切に思っていないからではなく、それだけ疲れているから

「こんなことを思う自分は、親不孝だ」と
自分を責めてしまいそうになったとき、

「それだけ今、疲れているんだね」と、
自分に声をかけてあげる。

そんなふうに、自分の心に寄り添ってあげてほしいのです。

⑦ 「もう一人では抱えきれないかも」と感じたら、それは“助けを呼んでいいサイン”

ここまで読んでも、

  • どうしても気持ちが沈んだまま上がってこない
  • 何週間も「消えてしまいたい」と思い続けている
  • 仕事も家事も、手につかないほどしんどい

そんな状態が続いている場合は、
一人で抱え込むには、あまりにも重い負担になっているのかもしれません。

そのときは、どうか、

「もうダメな自分」ではなく
「助けを呼んでいい段階まで、本当によくがんばってきた自分」

と受け止めてあげてください。

相談先の例としては、

  • 心療内科・精神科
  • かかりつけ医
  • 自治体の相談窓口
  • 地域包括支援センター
  • 介護者家族の会・電話相談

などがあります。

「こんなことで相談していいのかな」と思う内容でも、大丈夫です。

つらいと感じている、その気持ちそのものが、
相談していい理由になります。

「もう無理かも」と思ったときに、自分に許してほしいこと

介護を続けていると、
どうしても限界に近づいてしまう瞬間があります。

そんなときに、
自分に許してあげてほしいことが2つあります。

「やめる」「距離をとる」も、選んでいい選択肢

  • 施設への入所を検討する
  • 負担を少しずつ、他の家族やサービスに移していく
  • 自分の生活を守るために、介護の関わり方を変える

こうした選択は、
一見「逃げ」や「親不孝」に感じてしまうかもしれません。

でも、もしあなたが本当に倒れてしまったら――
親もあなたも、もっと苦しい状況になってしまうかもしれません。

あなたの心と体を守るために、
関わり方を変えること。
それも立派な、“介護の選択”のひとつです。

あなたの人生を大切にすることは、親を見捨てることではない

介護は、あなたの人生の中でとても大きな出来事です。
でも、あなたの人生のすべてではありません。

  • 友だちと笑い合う時間
  • 仕事や趣味に没頭する時間
  • ひとりで、何もしないで過ごす時間

それらを大切にすることは、
決して「親を見捨てること」ではありません。

むしろ、

自分の人生をきちんと生きることは、
親が本来望んでいる姿でもあるのかもしれません。

介護の先にある「お金や手続き」の不安が頭をよぎるようなら、

なども、タイミングの合うときに少しずつ触れてみてください。
「今すぐ全部やらなきゃ」ではなく、
「いつか、心が落ち着いてきたときのための、置き場所」くらいのつもりで大丈夫です。

さいごに:今のあなたに、そっと伝えたいこと

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
きっと、読むだけでも少ししんどかったところがあったと思います。

それでも画面を閉じずに、ここまでたどり着いたあなたは、
やっぱり、とても優しくて、がんばり屋さんです。

どうか、覚えておいてください。

  • 介護がつらいと感じるのは、あなたが弱いからではありません。
  • 「しんどい」「もう無理かも」と思うのは、自然な反応です。
  • あなたが倒れないことが、いちばんの介護であり、いちばんの親孝行です。

このページの中から、
ひとつでも「やってみようかな」と思えることが見つかったなら、
それは、とても大きな一歩です。

これからも、
あなたが少しでもラクに、
そして、あなた自身の人生も大切にしながら、
介護と向き合っていけますように。

そのお手伝いを、このサイトで続けていけたらうれしいです。

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