親が亡くなったあと、あるいは施設に入ったあとに残る「実家」。
片付け・相続・売却・空き家対策…と、やることが一気に押し寄せてきて、
「どこから手を付ければいいのか分からない」
「片付けているだけで心がしんどくなる」
と感じている人は多いと思います。
結論から言うと、実家じまいは
「感情」「お金」「手続き(実務)」を分けて、段階的に進めるのがいちばんラクです。
- いきなり家中を片付けようとしない
- まずは家族で「実家じまいの方向性」を話し合う
- そのうえで、片付け・相続・不動産・空き家対策へと進んでいく
終活全体の「ざっくりした地図」を先に持っておきたい場合は、
まずは「終活は何から始める?今日からできる最初の3ステップ」 を読んでから、この実家じまいの記事に戻ってくるのもおすすめです。
この記事では、実家じまいの全体像と、
それぞれのステップで「何を決めて、何をしなくていいのか」を整理していきます。
実家じまいの流れをざっくり5ステップで整理する
実家じまいの流れを、分かりやすく5つに分けるとこうなります。
- 家族で“実家じまい会議”をする(方向性の共有)
- 親の家の片付け・遺品整理を進める
- 家と土地の名義・相続を整理する
- 実家を「住む・貸す・売る・解体」から選ぶ
- 空き家対策と今後の管理方法を決める
順番に見ていきましょう。
ステップ1 実家じまいの話し合い(家族会議)を開く

関わる人を最初に洗い出す
実家じまいは、ひとりで背負い込むほどしんどくなります。
まずは、誰が実家じまいに関わるのかを整理するところから始めます。
- きょうだい(兄弟姉妹)
- 親(まだ健在なら)
- 自分のパートナー
- 場合によっては、親の再婚相手や親族 など
ここで大事なのは、
「全員が同じ意見になること」よりも、それぞれの希望や事情を出し合うことです。
ざっくりとしたゴールを決める
この段階では、細かい条件まで詰める必要はありません。
まずは、次のような「方向性レベル」で十分です。
- A案:誰かが実家に住み続ける(親/きょうだい/自分)
- B案:しばらくは空き家として維持し、様子を見ながら決める
- C案:片付けて売却を視野に入れる
- D案:解体して更地にする/別の活用を考える
「いまの気持ちベース」で構わないので、
どの案に近いのかを共有しておくことが、その後の実家じまいの土台になります。
決められないことは「保留リスト」にする
実家じまいでは、
- 思い出が多すぎて、手放す決心がつかない
- 親がまだ生きているうちに売るのは気が引ける
- きょうだいの人生設計も絡んでくる
など、すぐには決断できないことがたくさん出てきます。
そうしたものは、無理に結論を出そうとせず、
「いまは決めなくていいことリスト」を紙やメモに書き出しておくのがおすすめです。
「いまは決められないけれど、考えるべきテーマ」として整理するだけでも、
気持ちが少しラクになります。
ステップ2 親の家の片付け・遺品整理を進めるコツ

感情が動きにくい「生活用品」から始める
実家の片付けというと、
ついアルバムや写真、思い出の品から手に取ってしまいがちです。
ですが、最初に思い出の品に手をつけると、ほぼ間違いなく手が止まります。
おすすめの順番は、
- 日用品・食器・タオル・収納されている消耗品など
- 家電・家具などの大きなもの
- アルバム・手紙・コレクションなどの思い出の品
感情があまり動かないものから片付けていき、
「捨てる・残す」の判断に慣れてから、思い出の品に進むとスムーズです。
自分たちでやる部分と、業者に任せる部分を分ける
実家の片付けは、「時間」か「お金」かのどちらかを必ず使う作業です。
自分たちでやるほうがいい部分
- 通帳や権利証などの重要書類のピックアップ
- 親や自分にとって大事な思い出の品の選別
- 取っておきたい家具・家電の確認
業者に任せたほうがラクな部分
- 大量の不用品の搬出・処分
- 遠方で何度も通えない場合の片付け
- 一軒家丸ごと・団地一室の整理など、物量が多いケース
「全部自分でやらなきゃ」と考えず、
“自分たちにしかできない作業”と“プロに任せられる作業”を切り分けるのがコツです。
遺品整理・不用品回収業者を選ぶときのポイント
遺品整理業者や不用品回収業者に依頼する場合は、
可能であれば2〜3社から見積もりを取って比較しましょう。
チェックしたいポイント
- 見積もりの内訳が分かりやすいか(作業費・処分費・オプションなど)
- 買取できる品物があるか(家具・家電・ブランド品など)
- 遠方で立ち会えない場合の対応(鍵を預けての作業可否)
- 遺品整理士などの資格や、口コミ・実績
「一番安いところ」だけで選ぶと、
雑な作業や近所トラブル、不法投棄などのリスクもゼロではありません。
「説明が丁寧か」「信頼できそうか」といった感覚も大事にして選んでいきましょう。
ステップ3 家と土地の名義・相続を整理する

権利証・固定資産税の書類を探す
片付けを進めながら、家と土地の「持ち主」が誰なのかを確認しておきます。
探しておきたい書類の例
- 不動産の権利証(登記識別情報通知)
- 固定資産税の納税通知書
- 住宅ローンの契約書や返済予定表(残っていれば)
もし見つからなくても、
市区町村の窓口や法務局で確認できることが多いので、
「書類がない=何もできない」というわけではありません。
親が存命かどうかで手順が変わる
- 親がまだ存命の場合
→ 親の希望も聞きながら、「生前に実家をどう扱うか」を一緒に考えていくことになります。
生前贈与や家族信託など、専門家と相談しながら選べる方法もあります。 - 親がすでに亡くなっている場合
→ 「誰が相続人になるのか」「遺言書があるかどうか」によって、
実家の名義をどうするか、きょうだいでどう分けるかが変わってきます。
親が元気なうちから“お金と手続き”の話をしておく
実家じまいは、どうしても「親が亡くなった後」に話題になりがちです。
ただ、本当は親がまだ元気なうちから、最低限のお金と手続きのことを聞いておくほうが、
あとからの負担がぐっと軽くなります。
- どこの銀行に口座があるか
- 年金・保険・証券口座の有無
- 公共料金やサブスクの支払い方法
など、ざっくり把握しておくだけでも違います。
相続の基本だけでも押さえておくとラクになる
細かい相続税の計算や登記の手続きは、
税理士・司法書士・弁護士などの専門家に任せるとしても、
- 相続人になりそうな人は誰か
- 実家以外にどんな財産がありそうか
- 相続税がかかる可能性が高いのかどうか(ざっくりでOK)
といった「全体のイメージ」だけでも把握しておくと、
実家を売る・貸す判断がずっと楽になります。
なお、実際に親が亡くなったあとの具体的な手続きの流れは、
[親が亡くなったらする手続き一覧と期限|死亡後1年間のチェックリスト] を見ながら進めると、抜け漏れを防ぎやすくなります。
ステップ4 実家を「住む・貸す・売る・解体」から選ぶ

ここが、実家じまいの大きな分岐点になります。
実家じまいの4つの選択肢
- 誰かが住み続ける(親/きょうだい/自分)
- 空き家としてしばらく維持する(様子を見ながら後で決める)
- 賃貸に出す(貸す)
- 売却する/解体する
それぞれにメリット・デメリットがあるため、
「どれが正解」というより、家族の事情に合う選択肢を選ぶイメージです。
「住む」「貸す」「売る」「解体」のざっくり比較
- 住む
- メリット:親の家を残せる/家賃が浮く可能性
- デメリット:通勤や生活環境の変化/リフォーム費用がかかることも
- 空き家として維持する
- メリット:今すぐ決断しなくていい/親が戻る可能性がある場合にも対応しやすい
- デメリット:固定資産税や管理の負担/老朽化・防犯のリスク
- 貸す(賃貸)
- メリット:家賃収入で固定資産税などをカバーできる可能性
- デメリット:リフォームや原状回復費用/入居者対応や管理の手間
- 売る
- メリット:お金に変えて相続人で分けやすい/管理から解放される
- デメリット:思い出とのお別れ/エリアによっては売れにくいことも
- 解体(+更地活用)
- メリット:倒壊や近隣トラブルのリスクを減らせる
- デメリット:解体費用がかかる/更地にすると固定資産税が上がる場合も
「損をしない選択」だけを追い求めると、
いつまでも決められなくなってしまいます。
- どれくらい手間をかけられるか
- どれくらいの期間、実家を維持してもいいと思っているか
- きょうだいそれぞれの生活(距離・仕事・家族)
こういった要素も含めて、「わが家にとっての最適解」を考えていきます。
不動産会社に相談するときのコツ
実家を売る・貸す方向で考えるなら、
複数の不動産会社に相談・査定を依頼するのがおすすめです。
- 地元密着の不動産会社か、広いエリアをカバーする会社か
- 相続や空き家の相談に慣れているか(親身に話を聞いてくれるか)
- 売却だけでなく「賃貸」「買取」「管理サービス」など、提案の幅があるか
「とりあえず最初に声をかけた1社だけで決める」のではなく、
2〜3社と話してみて、説明が分かりやすい&信頼できそうな担当者を選ぶと安心です。
ステップ5 空き家対策と今後の管理方法を決める
今すぐ決められないときは「暫定プラン」を決める
実家じまいは、必ずしも一気に完了させる必要はありません。
- 親が施設に入ったばかりで、気持ちの整理がついていない
- 相続の話し合いが落ち着くまで、売却は保留したい
- 子ども世代(自分たち)のライフプランがまだ変わりそう
こうした場合は、「〇年くらいは様子を見て、その間は空き家として維持する」という
暫定プランを取ることもあります。
その際は、
- いつまでに最終的な方針を決めるか(目安の期限)
- それまでの間、誰がどのように管理するか
- 固定資産税や光熱費、管理費をどう負担するか
を家族で話し合い、紙に書き出しておくと、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
自分たちで管理するか、管理サービスを使うか
空き家の管理方法には、次のようなものがあります。
自分たちで管理する場合
- 定期的に帰省して、換気・通水・掃除をする
- 草むしりや植木の剪定を行う
- 郵便物やポストの確認
管理サービスや不動産会社に依頼する場合
- 月1回〜数カ月に1回の「見回りサービス」
- 換気・通水・外観チェック・簡易清掃
- 必要に応じて修繕の手配・近隣対応
一番避けたいのは、「誰も見ていない空き家」が放置されることです。
最小限でも、「この家は誰が責任を持って管理しているのか」が分かる状態にしておきましょう。
具体例:よくある50代の実家じまいケース
最後に、実際によくあるケースを例に、流れをイメージしてみます。
Aさん(50代・首都圏在住)
実家:地方都市の一戸建て
状況:父は他界、母は施設入所中。きょうだい1人は遠方在住。
- オンラインで「実家じまい会議」
- きょうだいとビデオ通話で
「母が亡くなるまでは空き家として維持し、のちに売却を検討する」
という大まかな方針を共有。
- きょうだいとビデオ通話で
- 半年〜1年かけて片付けと遺品整理
- 月1回の帰省+遺品整理業者を併用。
- 自分たちは重要書類と思い出の品を中心に整理し、
大量の家具・家電・ゴミの処分は業者に依頼。
- 名義・相続の確認
- 権利証・固定資産税の書類から、家と土地が母名義であることを確認。
- 母の死後に、きょうだい2人で相続する方向で情報を整理。
- 母の逝去後、不動産会社2〜3社に査定を依頼
- 売却・賃貸・買取などの提案を聞き、
最終的には売却+最低限のリフォームを選択。
- 売却・賃貸・買取などの提案を聞き、
- 売却までの数カ月は、地元不動産会社の空き家管理サービスを利用
- 月1回の換気・草むしり・ポスト確認などを依頼し、
遠方でも安心して売却活動を進められた。
- 月1回の換気・草むしり・ポスト確認などを依頼し、
このように、最初から完璧な計画を立てる必要はありません。
「まずは方向性を決める → 片付けと名義の整理 → 情報が揃ってから最終決定」
という流れで、少しずつ進めていくのが現実的です。
まとめ:実家じまいは「一気に終わらせない」「一人で抱え込まない」
実家じまいは、親の人生や家族の歴史と向き合う作業でもあり、
モノの整理以上に、心の負担が大きいテーマです。
だからこそ、
- 感情・お金・手続きを分けて考える
- 5つのステップ(家族会議 → 片付け → 名義・相続 → 活用方法 → 管理方法)で進める
- 「いま決められないこと」は保留リストにしてもいい
- 自分たちにしかできない部分に集中し、他はプロにも頼る
このあたりを意識してもらえると、
実家じまいのハードルが少し下がるのではないかと思います。
あわせて、自分自身のこれからを整える一歩として、
[自分の終活|今から備える10の準備【チェックリスト付き】] も読んでおくと、
「親のこれから」と「自分のこれから」を一緒に考えやすくなります。
この記事が、あなたの「実家じまいの全体マップ」として
少しでも役に立てばうれしいです。


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