突然の入院。そのあと「どうしたらいいの…?」
平日の夕方、仕事終わりにスマホを見ると、見慣れない番号からの着信履歴。
折り返してみると、病院からで、
「お父さまが倒れて入院されています。今は命に別状はありませんが…」
と聞かされて、頭が真っ白に。
とりあえず病院に駆けつけて、
主治医の話を必死にメモして、家に帰るころにはクタクタ。
少し落ち着いてきた頃、ふと、
- 退院したら、どこで暮らすことになるんだろう?
- 今までどおり一人暮らしで大丈夫なのかな?
- 仕事しながら、どこまで介護できるんだろう…
そんな不安が、じわじわ出てきます。
結論から言うと、
退院後の生活は、「家族だけで何とかしよう」と抱え込まず、病院や地域の専門職と一緒に、少し早めから準備していくのがいちばん安心です。
介護保険や要介護認定のしくみを先にざっくり知っておきたいときは、
退院後の話とセットで読めるようにまとめた
初めての介護保険・要介護認定の取り方入門 も、あとであわせて読んでみてください。
この記事では、
- まず何を確認すると安心か
- 病院で誰に相談すればいいのか
- 在宅か施設か、どう考えていけばいいのか
- 「退院前カンファレンス」って何を話す場なのか
- 退院後に使える相談先・制度
という流れで、親が入院してから退院後の生活を整えるまでを、
一緒に整理していきます。
ステップ1:まずは「病状」と「退院後のざっくりした見通し」を聞いてみる

1-1. 「もう退院のことを考えましょう」と言われて焦ってしまうけれど…
入院から少し時間が経つと、主治医や看護師さんから、
「そろそろ退院の時期を考えましょう」
と言われることがあります。
その瞬間、
- 「え、もう退院なの?」
- 「家で見られるのかなんて、まだ何も考えられてない…」
と、急に現実を突きつけられたような気持ちになる方も多いです。
でも本当は、「退院の方針」だけを先に決める必要はなくて、
- いま病状はどのくらい回復しているのか
- 退院後、どの程度生活に支障が出そうなのか
- どんな介助・見守りが必要になりそうか
こういった「見通し」をきちんと聞かせてもらうことが大事です。
1-2. 主治医に聞いておくと安心なポイント
主治医の説明は、一度で全部は覚えきれません。
スマホでメモを取ったり、家族で一緒に話を聞いたりすると、だいぶ楽になります。
聞いておきたいポイントの例:
- 病名と、今の状態(良くなっているのか、横ばいか、今後も続くのか)
- 退院の目安の時期
- 退院したあとの生活で、
- 一人でトイレに行けそうか
- 食事や着替えはどこまで自分でできるか
- 夜間に見守りが必要になりそうか
- 「自宅に帰る」ことは現実的な選択肢か
- 施設や転院(リハビリ病院など)の可能性もあるのか
一度聞いて分からなくても、
「すみません、さっきの説明でよく分からなかったところがあって、もう一度教えてもらえますか?」
と聞き直して大丈夫です。
ここをあいまいなままにしておくと、
後の「在宅か施設か」「どれくらい介護が必要か」がすべてぼやけてしまい、
家族の不安がずっと残ってしまいます。
ステップ2:早めに「退院支援の担当者」と繋がる
2-1. 医療ソーシャルワーカー・退院調整看護師は“心強い味方”
病院には、たいてい
- 医療ソーシャルワーカー(MSW)
- 退院調整看護師
といった、「退院後の生活」を一緒に考えてくれる専門のスタッフがいます。
例えばこんなときに相談できます。
- 「家で本当に介護できるか自信がない」
- 「きょうだいが遠方で、実質ほぼ一人介護になりそう」
- 「施設の選択肢も含めて相談したい」
- 「介護保険ってどうやって使うの?」
ナースステーションで、
「退院後の生活について相談したくて、相談員の方(ソーシャルワーカーさん)とお話ししたいです」
と伝えれば、面談の場を作ってくれることが多いです。
2-2. “がんばりすぎない前提”で、自分たちの事情も正直に
相談のときは、
- 同居か別居か
- 実家と自分の家の距離
- 仕事の状況(残業が多い、夜勤がある、など)
- 子育て中かどうか
- どのくらいの時間なら介護に使えそうか
など、家族側の事情も遠慮せずに話して大丈夫です。
「本当は家に帰してあげたい。でも、現実的にはフルタイムで仕事をしながら、
夜間までずっと付きっきりというのは難しいです」
といった“本音”も、そのまま伝えてOKです。
そのうえで、相談員さんたちが、
- 利用できそうなサービス
- リハビリ病院や施設の選択肢
- 経済的な負担のイメージ
を一緒に整理してくれます。
認知症の心配があって入院につながった場合などは、
「認知症かも…」と感じたときの最初の動き方をまとめた
親が認知症かも?と思ったら|今日からできる3つの対処法
も、退院後の生活を考えるうえであわせて役立ちます。

ステップ3:在宅か施設か──「親の希望」と「家族の現実」を両方見る
3-1. 在宅・施設、それぞれの「いいところ」と「大変なところ」
在宅介護のイメージ
- いいところ
- 親が住み慣れた家で過ごせる
- 家族の顔を見る機会が多い
- 大変なところ
- 家族の負担がどうしても大きくなりやすい
- 夜間の見守りや、急な体調変化への対応が必要なことも
施設・転院のイメージ
- いいところ
- 24時間、専門職が見てくれる安心感
- 医療的ケアが必要な場合でも対応しやすい
- 大変なところ
- 費用がかかる
- 家から遠い施設になる場合も
- 「家に帰りたい」という親の気持ちとの折り合いが必要なことも
どちらを選んでも、「親を大切に思っている」ことに変わりはありません。
大事なのは、「どちらが正しいか」ではなく、
「親の気持ち」と「家族が無理なく続けられる形」のバランス
を一緒に探していくことです。
在宅か施設かで悩み始めたら、
考え方の軸を詳しく整理した
在宅介護か施設か迷ったら|後悔しないための考え方
も、後でじっくり読んでみてください。
3-2. 自分たちの「介護力」をざっくりチェックしてみる
一度、紙に書き出してみると整理しやすいです。
- 日中、家に大人がいる時間はどれくらい?
- 夜間、付き添いや見守りができる人はいる?
- 週に何日くらい、何時間なら介護の時間を取れそう?
- 車いすの押し引きや、ベッド⇔車いすの移乗を、家族がやれるかどうか?
- どのくらい、介護サービスやヘルパーさんに頼る前提にしたい?
例えば、
- 「日中は誰も家にいない」
- 「夜間も見守りが必要になりそう」
という条件が重なると、在宅介護だけで支えるのは相当ハードになります。
そんなとき、
「家で看てあげたい」という気持ちはそのままにしつつ、
ショートステイや施設も選択肢に入れてみる
という考え方も、決して“親不孝”ではありません。
ステップ4:退院前カンファレンスで「退院後の暮らし」を一緒に描く
4-1. 退院前カンファレンスってどんな場?
退院の前に、
- 本人(親)
- 家族
- 主治医
- 看護師
- リハビリの先生
- 医療ソーシャルワーカー など
が集まって、「退院後どう暮らしていくか」を話し合う場を
「退院前カンファレンス」と呼びます。
ここでは、
- 退院のだいたいの時期
- 自宅に戻るのか、転院・施設に行くのか
- 自宅に戻る場合、どんな支援が必要か
- 使えるサービスや福祉用具のこと
などを、ひとつずつ確認していきます。
4-2. 当日あわてないための「質問メモ」
いざカンファレンスの場になると、
緊張したり、時間が限られていたりして、聞きたいことを聞きそびれることも多いです。
事前にメモにしておくと安心です。
質問の例:
- 自宅に帰る場合、どの時間帯の介護が一番大変になりそうか?
- 家族だけでは難しそうな場面はどこか?
- 利用したほうがいい介護サービスの種類(訪問看護・訪問介護・デイサービスなど)と頻度
- ベッド・手すり・車いすなど、福祉用具は必要になるか?
- 住宅改修(手すり・段差解消など)をした方がいいか?
- 施設や転院という選択肢も現実的にあり得るのか?
「聞きたいことをメモにしてきました。ひとつずつ教えてください」
と言って、順番に確認していけば大丈夫です。
ステップ5:介護保険と地域包括支援センターを早めに味方につける
5-1. 介護保険の申請は「退院前から」動ける
退院後に、訪問介護やデイサービスなどを使うには、
介護保険の「要介護認定」が必要になります。
流れは大まかにこんな感じです。
- 市区町村の窓口に申請(本人・家族・病院の職員が代行してくれることも)
- 認定調査(自宅や入院先で、できること・できないことを確認)
- 主治医意見書
- 審査・判定 → 要支援/要介護などの結果が届く
ここで大事なのは、
退院直前ではなく、「退院が見えてきたタイミング」で動き始める
ことです。
そうすることで、
- 退院してすぐにサービスをスタートしやすい
- 「サービスが整うまでの空白期間」を減らせる
というメリットがあります。
介護保険の全体像をあらかじめ押さえておきたいときは、
先ほども紹介した 初めての介護保険・要介護認定の取り方入門 を
「制度の地図」として横に置いておくと、理解しやすくなります。
5-2. 地域包括支援センターは「退院後の伴走役」
自宅に戻る場合は、
自宅近くの地域包括支援センターも、とても心強い存在になります。
こんなことを相談できます。
- 介護保険の申請・更新のこと
- ケアマネジャーの紹介
- デイサービスや訪問介護など、サービス選びのお手伝い
- 認知症の心配ごと
- 介護する家族の不安・ストレス
退院前からでも、
「親が退院して自宅で暮らすことになりそうなので、今のうちに相談しておきたくて」
と連絡しておくと、
退院後のサポートをスムーズにつなげやすくなります。
遠距離での関わりが中心になる場合は、
遠距離介護の始め方|月1回しか帰れなくても「できること」と「やらなくていいこと」 も、
「現地の味方を増やす」という視点でヒントが多いはずです。

よくあるつまずきと、そのときの考え方
最後に、実際によくある“つまずきポイント”と、
そのときの考え方をいくつか挙げておきます。
「とりあえず家で見ます」と勢いで言ってしまう
親の前で、
「大丈夫、家で見てあげるから」
と言いたくなる気持ちは、とてもよく分かります。
ただ、その一言が、のちのち家族を追い詰めてしまうこともあります。
気持ちは大切にしつつ、「どうすれば無理なく続けられるか」を一緒に考えるスタンスで
主治医や相談員と話してみましょう。
在宅か施設かで迷い続けてしんどくなってきたら、
在宅介護か施設か迷ったら|後悔しないための考え方 を読みながら、
「100点の正解」ではなく「今のベスト」を一緒に探してみてください。
相談しないまま退院の話が進んでしまう
「忙しくて、ソーシャルワーカーさんに相談する時間が取れなかった…」
というケースもよくあります。
その場合でも、
「退院後の生活がまだイメージできていなくて不安なので、
相談の時間を作ってもらえますか?」
と、途中からでも声をあげて大丈夫です。
「自分だけが頑張っている」と感じたとき
きょうだいが遠方で、実質ほぼ一人で通っている。
仕事も休みづらい。
そんな中で「もっとやらなきゃ」と自分を追い込みすぎると、
心も体も持たなくなってしまいます。
きょうだい間のモヤモヤが増えてきたら、
話し合い方のコツをまとめた
きょうだいで介護とお金を話し合うときの進め方|ケンカを減らす3ステップ
も、一度読んでみてください。
「家族だけで抱え込まず、制度とサービスをフル活用する」
それは決して「手を抜くこと」ではなく、
長く親を支えていくための、現実的で大事な選択です。
おわりに:一人で決めなくていい
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
親の入院や退院の話は、
ただでさえ心がザワザワしている中で、
難しい言葉や決断をたくさん迫られる、とてもハードな出来事です。
もう一度だけ、この記事のポイントをまとめると──
- 病状と退院後の見通しを、主治医からしっかり聞いてみる
- 病院の医療ソーシャルワーカー・退院調整看護師に早めに相談する
- 「在宅か施設か」は、
親の希望 × 家族の介護力 × 経済状況で一緒に考える - 退院前カンファレンスで、疑問や不安をメモにして持っていく
- 介護保険・地域包括支援センター・遠距離介護のノウハウなど、
サイト内の記事や制度を味方につける
退院後の暮らしを決めるのは、「あなた一人」ではありません。
病院のスタッフも、地域の相談窓口も、
「どうすればこの人が安心して暮らせるか」を一緒に考えてくれる仲間です。
この記事と、ここで紹介した他の記事が、
その一歩を踏み出すときの“地図”になればうれしいです。


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