結論:100点の正解を探すより、「今のベスト」を4つの軸で決める
親の介護が現実味を帯びてきたとき、
ほとんどの人が一度は悩むのが
「在宅でがんばるべきか、施設を考えるべきか」
という選択です。
先に結論から言うと、
- 在宅介護と施設介護に絶対的な正解はない
- 「本人の希望」「家族の体力・時間」「お金」「距離・環境」の
4つの軸で“今のベスト”を決める - 一度決めたあとも、定期的に見直してOK(むしろ見直す前提で考える)
このスタンスで考えた方が、
「もっとこうしておけばよかった…」という後悔を減らしやすくなります。
この記事では、
- 在宅・施設それぞれの特徴
- 後悔しないための4つの軸
- 〇×△で答えられるチェックリスト
- ケース別の考え方の例
- 在宅・施設それぞれを選ぶときのポイント
をお伝えしていきます。
在宅か施設か…「どちらかが間違い」ということはない

まず押さえておきたいのは、
在宅を選んだから「親思い」で、
施設を選んだから「親不孝」というわけではない
ということです。
在宅介護の主なメリット・しんどさ
メリット例
- 長年住み慣れた自宅で過ごせる
- 日々の変化に家族が気付きやすい
- うまくサービスを使えば、費用を抑えられる場合もある
→ 介護保険の仕組みや要介護認定の流れは
「初めての介護保険・要介護認定の取り方入門」で、基本から整理しています。
しんどさの例
- 介護者の「24時間気が抜けない」状態になりやすい
- 介護者の仕事・育児・自分の健康が圧迫されやすい
- 突発的なトラブル(転倒・徘徊・夜間の不安など)に常に備える必要がある
施設介護の主なメリット・しんどさ
メリット例
- 夜間も含め、専門職が見守ってくれる安心感がある
- 入浴・排泄・服薬など、身体介護の負担が減る
- 家族が「介護者」だけでなく「家族」に戻りやすい
しんどさの例
- 本人が「家に帰りたい」とつらい思いをすることもある
- 費用負担が大きくなる場合がある
- 施設の雰囲気や他の入居者との相性もある
どちらを選んでも、メリットとしんどさは必ずセットです。
大切なのは、
- 今の親の状態
- あなたや家族の生活・体力
- 家計の状況
…を踏まえて、その時点でのベストバランスを探すことです。
後悔しないための4つの軸

迷ったときは、次の4つの軸で整理してみてください。
- 本人の希望(どう生きたいか)
- 家族の体力・時間(どこまで現実的に関われるか)
- お金(今後数年を見据えた負担イメージ)
- 距離・環境(病院や家族との距離・地域のサービス)
軸① 本人の希望:どんな最期の数年を望んでいるか
- 「可能なかぎり自宅で暮らしたい」
- 「一人暮らしは不安だから、どこか預けてほしい」
- 「みんなの迷惑になるなら施設でいい」
など、本人の言葉を直接聞けるなら、それが一番大事な軸です。
ただし、ここで気をつけたいのは、
本人の希望を“絶対”とはせず、
「できる範囲で最大限尊重する」というスタンス
にしておくこと。
たとえば、
- まずは在宅で試しつつ、
本人や家族の負担が大きくなったら施設も検討する - 施設を選んだとしても、
こまめに面会に行って「家族との時間」は増やす
など、「選び方+過ごし方」のセットで考えるのがおすすめです。
医療・介護の希望そのものを整理したいときは、
エンディングノートの活用をまとめた
「エンディングノートとは?親と始めるやさしい終活入門」も参考になります。
軸② 家族の体力・時間:1週間のスケジュールで考える
頭の中だけで考えると、
「がんばれば、なんとか在宅でもいけるかも…?」
と、つい自分にムチを打ってしまいがちです。
そこで一度、自分の1週間の時間割を紙に書き出してみるのがおすすめです。
- 仕事の時間
- 通勤時間
- 家事・育児の時間
- 睡眠時間
- 自分の通院・体調管理の時間
そのうえで、
- 介護に毎日どれくらい時間を使えそうか
- 夜間にどれくらい動ける余力があるか
を、現実的に見積もってみましょう。
もし、
- すでに自分の睡眠が削られている
- 仕事をこれ以上減らすと家計が厳しい
という状況なら、在宅一本で頑張るのはかなりハードです。
軸③ お金:月額いくらなら続けられるか
介護は、数ヶ月ではなく「年単位」の長期戦になることが多いです。
- 在宅介護なら:
介護保険サービスの自己負担+日用品・医療費・交通費など - 施設介護なら:
家賃・食費・管理費など毎月の利用料+医療費・お小遣いなど
を考えたうえで、
「毎月いくらまでなら、数年続けられるか」
という視点でざっくりラインを決めておきましょう。
考えると、イメージがかなり具体的になります。
軸④ 距離・環境:通いやすさと“その人らしさ”
最後に、「距離・環境」です。
- 在宅なら:
病院・デイサービス・スーパーなどへの距離 - 施設なら:
家族が通いやすい立地かどうか
特に施設を検討するときは、
「家族がストレスなく通える距離か?」
は意外と重要です。
いくら良い施設でも、
片道2時間かかる場所だと、面会のハードルがぐっと上がります。
また、
- 長年住んでいた地域からあまり離れない方が安心な人
- 静かな環境が好きな人/人の気配がある方が安心な人
など、その人らしさも一緒に考えてみてください。
在宅か施設か、傾向がわかる10問チェックリスト
ここまでの4つの軸を踏まえて、
〇×△で答えられるチェックリストを用意しました。
ざっくり傾向を見るための目安です。
〇:そう思う/だいたい当てはまる
×:そう思わない/ほとんど当てはまらない
△:どちらとも言えない/状況による
として、直感で答えてみてください。
- 親は「できるだけ自宅で暮らしたい」と話している
- あなた(主な介護者)は、週に3日以上、まとまった介護時間をとれる
- 夜間の対応(トイレの付き添い・不安への対応など)も、ある程度なら対応できそうだ
- 介護をしながらも、自分の睡眠時間は6時間以上確保できそうだ
- 介護サービスをうまく組み合わせれば、在宅でも数年は続けられそうだと感じる
- 施設の月額費用(目安)を調べてみて、「今の家計では厳しい」と感じる
- 親の医療的なケアは比較的少なく、今のところ自宅でも問題なさそうだ
- 家族やきょうだいの中で、介護を分担できる人がいる
- 親の自宅はバリアフリーにしやすい(段差が少ない、手すりが付けられる等)
- あなた自身が「在宅での介護を、一度はやってみたい」という気持ちを持っている
〇が多い → 在宅寄り
×が多い → 施設寄り
△が多い → 在宅+サービス or 施設併用など、両方を柔軟に検討
というイメージです。
もちろん、これはあくまで目安ですが、
家族で話し合うときの“取っかかり”として、
この結果を見ながら話してみる
と、感情論だけでなく「事実ベース」の対話がしやすくなります。
ケース別:こんなとき、どう考える?
ここからは、よくあるパターン別に考え方の例を挙げてみます。
ケース1:一人っ子・フルタイム勤務・親と遠距離の場合
- あなた:一人っ子、フルタイム勤務
- 職場:介護の理解はあるが、頻繁な帰省は難しい
- 親:一人暮らし、高齢で持病あり
この場合、
- 在宅一本でがんばると、
あなたの心身・仕事がつぶれてしまうリスクが高い - 早い段階から、
「施設も選択肢に入れる」前提で情報収集しておく
というのが現実的です。
具体的には、
- 地域包括支援センターに相談して、
在宅サービスと施設の両方の情報をもらう - 短期入所(ショートステイ)を利用してみて、
親の反応や相性を見てみる
など、「いきなり長期入所を決める」のではなく、
段階的に施設との距離を縮めるイメージで進めると、お互いの不安が軽くなります。
ケース2:きょうだいが複数いて、実家の近くに一人が住んでいる場合
- 長男:実家の近くに住んでいる
- 次男・長女:遠方で仕事・子育て中
このパターンでは、
- 近くにいる人に負担が集中しがち
- 遠方組は「申し訳なさ」「把握しきれない不安」が積もりがち
という状況になりやすいです。
この場合は、
- 近くにいる人が「時間での介護」を多めに担当
- 遠方組が「お金」や「手続き」「情報整理」を担当
といった形で、役割を分けてバランスを取るのも1つの方法です。
在宅で行けるところまで行きつつ、
- 近くにいる人の負担が限界に近づいたら
→ 施設入所をより現実的な選択として検討する
という流れも、十分「親思いの選択」です。
在宅を選ぶなら:最初から“ひとりで抱え込まない”前提で
在宅を選ぶ場合、
つまずきやすいのは「がんばりすぎてから相談する」ことです。
在宅介護で意識したいポイント
- 早めに介護保険の申請をしておく
→ 入口の流れは「初めての介護保険・要介護認定の取り方入門」で、具体的なステップを確認できます。 - デイサービス・訪問介護・ショートステイなど、
使えるサービスをケアマネジャーと一緒に考える - 「週◯日は自分の休息・仕事に集中する日」と決め、
その日はサービスや家族の協力を手厚くする
在宅介護は、
家族+サービス+地域の支えを合わせた「チーム戦」
と考えた方が、長く続けやすくなります。
施設を選ぶなら:罪悪感ではなく「安全と生活の質」で考える

施設を検討するとき、
多くの人がつらくなるのが罪悪感です。
- 「自分の手で最後まで…」という思いを叶えられなかった
- 「親がかわいそう」と言われないか不安
など、頭では分かっていても、気持ちが追いつかないこともあります。
それでも施設を選ぶ意味
- 転倒・誤薬・徘徊などの危険から守りやすい
- 専門職が「生活のリズム」を整えてくれる
- 家族は、限られた時間を「介護」ではなく「親子の時間」に使える
あなたが、
- 自分の体力・仕事・家族の生活も守りたい
- そのうえで、親の安全と生活の質も守りたい
と思った結果として施設を選ぶなら、
それは十分に親思いの選択です。
一度決めたあとも、「見直していい」前提で
最後に、ここがとても大切なポイントです。
在宅か施設か、一度決めた選択を
「一生変えてはいけない」と思い込まないこと
- 在宅で頑張ってきたけれど、
介護者の体調が崩れて施設を検討する - 施設で暮らしていたけれど、
状態が安定して在宅に戻る
そんなケースも、実際にはたくさんあります。
見直しのタイミングの目安
- 親の状態が大きく変わったとき(入退院など)
- 介護者が「もう限界かも」と感じ始めたとき
- 家計の状況が変わったとき(退職・転職など)
こうしたタイミングで、
- 家族で状況を共有する
- ケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談する
という「定期点検」をしていきましょう。
まとめ:完璧な正解より、「今できるベスト」を選ぶ
改めて、この記事のポイントをまとめます。
- 在宅か施設かに絶対的な正解はない
- 「本人の希望」「家族の体力・時間」「お金」「距離・環境」の
4つの軸で“今のベスト”を選ぶ - 10問チェックリストで、在宅寄りか施設寄りかのざっくり傾向を見る
- ケースごとに、在宅+サービス、施設+こまめな面会など、
組み合わせて考えることもできる - 一度決めたあとも、状態の変化に応じて見直してOK
介護の選択は、どれだけ考えても
「本当にこれでよかったのかな」と揺れるものです。
それでも、
その時その時の状況で、
家族みんなで一番良いと思える選択をしていくこと
が、親にとっても、あなた自身にとっても、
一番ていねいな向き合い方だと私は思います。


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